狂言
レビュー執筆日:2022/8/3
●「インパクトがある」と捉えるか、「ダサい」と捉えるか、それはリスナー次第。
【収録曲】
1.レディメイド
2.踊
3.ドメスティックでバイオレンス
4.FREEDOM
5.花火
6.会いたくて
7.ラッキー・ブルート
8.ギラギラ
9.阿修羅ちゃん
10.心という名の不可解
11.うっせぇわ
12.マザーランド
13.過学習
14.夜のピエロ
「うっせぇうっせぇうっせぇわ」という歌詞が頭から離れなくなった方は少なくないでしょう。そんなフレーズがサビに飛び出してくる『うっせぇわ』等のヒットにより音楽シーンの中心に一気に躍り出たボーカリスト・Adoの1stアルバム。スウィングジャズやロック、バラードにシティポップと様々なジャンルの楽曲が取り揃えられていますが、全体的にメロディの歌謡性は強めで、自身の「怒り」をストレートにぶつけるような迫力のある歌声もかなり特徴的。様々なミュージシャンが提供した楽曲を集めた作品でありながらも、アルバムを通してのトーンは統一されているように感じられました。
多くの方は『うっせぇわ』で彼女のことを知ったと思われますが、それ以外にも、「ねえ花火が上がった ねえ花火が上がった」(花火)や「感情の判断はどうしたらいい?」(心という名の不可解)、「楽園じゃない ここは楽園じゃない」(マザーランド)等といった「うっせぇうっせぇうっせぇわ」に負けないくらいキャッチーなフレーズが多い印象も受けました。また、『踊』という曲に関しては「特定のフレーズが分かりやすい」というよりも抑揚の付いたエレクトロサウンドで曲全体がインパクトの塊になっている印象があり、かなり爽快感のある出来になっているのではないでしょうか。
ただ、「インパクトがある」というよりも「ダサい」といった印象を与えるような曲もチラホラ。『ドメスティックでバイオレンス』や『ギラギラ』はタイトルからしてそんな雰囲気ですし、『FREEDOM』はコテコテなガールズロックといった感じ。『会いたくて』はベタで変に仰々しいバラードという感想を抱いてしまいました。とはいえ、これは私個人の感覚といった点が強く、人によってはそういう要素を「良い意味でのインパクト」と捉えるであろう点は否定しませんが(まあ、その反対に、『うっせぇわ』等に対しても人によっては「ダサい」と捉えるであろう点も否定しませんが)。
このように色々と書きましたが、地味で印象に残り辛い曲は皆無といった感じで、「分かりやすい」楽曲が詰め込まれた作品であることには違いないでしょう。そういう意味では、彼女がここまでブレイクできたのも納得できるアルバムでした。
評価:★★★★