容赦なき仕打ち
「ダガーを手にしてこれが自分の得物だと認識する。この瞬間に私の職業は剣士見習いになる」
フレッチャ
力 C
体力 D
器用 C
俊敏 D
知力 D
精神 D
適性 弓術士
職業 剣士見習い
技能 弓術初級
弓術中級
短剣術初級
「けれど適性は変わらないうえに技能は初級止まり。スキルツリーから取ることも出来るけど、適性なしの場合はコストが5倍になる。だから最低限の動きというのは出来るけど、それゆえにわざわざ育てる人というのはいないんだ」
アイシャに説明するフレッチャがダガーをしまって弓を持つと、ギルドカードに表示される職業も弓術士見習いに戻った。
「だからアイシャ、あまりアテにされると困るんだ。だからその……私の背中から降りてくれないか」
魔物が出てこなくて飽きたアイシャは「ダガーが使えるなんてすごいね、フレッチャちゃん最高だよ」とだけ言って勝手におぶさり眠りにつこうとしたのだ。
「背負われたいのなら俺の背中が!」
「いやだ、臭そう」
「ノオオオオ」
「あ、あれって岩トカゲじゃないですか?」
こんな訳の分からない状況でも目的を見失わないサヤはさすがである。
「よし、この距離なら私の弓で」
「チェストオオッ」
気合いの叫びとともにクレールが飛び掛かれば、あとには真っ二つになり損ねて潰れた岩トカゲの残骸が壁にへばりついている。
「みたか、アイシャ。これがグラディエーターの闘いだ」
男は背中で語るもの。親の教えを忠実に守った演出はここにいる女の子たちには届かなかった。
「フレッチャちゃん、残念だったね」
「いや、私が遅かったのが悪いんだ」
「そんなことないよ。空気読んでアイツが譲るところだったのに」
うな垂れるフレッチャを慰めクレールを悪者にする女子たち。
「す、すまなかった、次は、次からは譲るよ……」
そのあとはたまに見つかる岩トカゲをフレッチャとサヤが交代で狩り、アイシャは壁を削って「珍しい石だ」と言って採取したりしながら奥へと進んでいた。
「折り返すにはこの辺りだろう。ペースは悪くない」
「そりゃ魔物少ないからね」
「アイシャちゃん……」
「その少ない魔物さえ狩ってないのがアイシャだけどな」
アイシャたちはさすがに洞窟内で泊まってまで狩り続けるつもりはない。少しとはいえすでにいくらかのスキルポイントは手に入っている。あとは一度戻ってから考えてみればいい。長く潜り続けてまで本当にポイント稼ぎがしたいかを。
「さて、帰るか」というクレールの言葉を合図に立ち上がった4人は自分達が歩いてきた方向、出口のある方に妙なものを見つけた。
「あれって、火?」
「何だろうな。魔術士たちの花火合戦に似ていないこともないな」
暗闇に浮かぶ火。火の玉。それが高速で近づいてくるような気配。バタバタという音。足音のようではある、しかし。
「構えろ、3人とも。まともなものと考えてはいけない」
グラディウスを構えて息を整えるクレール。
ブロードソードを正面に構えるサヤ、ダガーを逆手に持ち体勢を低くするフレッチャに枕を抱えて転がるアイシャ。
「アイシャは俺が守る!」
「わあい、たのもしいー」