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不穏なレェーヴの森

「なんだって? 魔物を狩りたい?」


 ひさびさの筋肉モヒカンのベイルは、肩パッド半裸アーマーの上にチェーンが増えていて世紀末感がアップしていた。


「種もみは持ってないので諦めてください」

「なんだそりゃ?」




「あー、あの銀狐な。嬢ちゃんは──普通の格好してるしなんだか乗り気じゃ無さそうだぞ?」


 ベイルはアイシャの戦闘服がパジャマだと思っている。それはそれで不満ではあるが、アイシャにとっては救いの言葉でもあった。


「また、囮なのかと思うと……」

「ア、アイシャちゃん」


 ここまでノリノリでやってきたサヤとフレッチャだが、以前に囮だけの狩りをして、その時にアイシャが悲しそうに嘆いていたのをやっと思い出したみたいだ。


「まあ、あの銀狐は美味しい獲物だが、親友を囮にするのはいただけねえなぁ」


 アイシャにはこの世紀末モヒカンが救世主のように見えてきた。


「そのチェーンかっこいいね!」

「だろう? こいつが結構役に立つんだ。そのまま振り回してよし、斧を取り付けてよし、縛り上げてよしときた」

「マケリを縛るの?」

「やめろ、身内を出すのは生々しい」

「ごめん」




「まあ、それもそうなんだが今あの森は立ち入り禁止なんだ。というより北門からは出られねえ」

「何かあったんですか?」


 モヒカンを持ち上げるアイシャのメンタルが心配になって話しかけるサヤに代わってフレッチャが聞く。


「澱みが発生している。今は国家治安維持局によって封鎖されて俺たちでさえ出入りできねえ」

「澱み?」

「ああ、あまり知られてはいないか。魔物を狩ればその魔力は拡散されて世界に還る。その残りかすが俺たちのスキルポイントに変換されもするのだが、大半は世界に拡散される。そしてそのうちのいくらかが土地に根付いて発生するとされている。短期間のうちに沢山の魔物が狩られると起きやすい現象だとか」

「そんな事があるんですね。それで澱みが出来るとなんで立ち入り禁止なんですか?」


 アイシャも当てが外れたサヤもそこが気になる。


「澱みは魔力溜まりとも言われてな、濃すぎる魔力は凶悪な魔物を生み出す」


 声は別の方からきこえてアイシャの肩に手が置かれて振り返れば治安維持局局長のバラダーがアイシャを見下ろしている。


「おじさんもロリコンに目覚めたの? 私は安くないよ?」

「目覚めて、など、ない、から、安心、しろ」

「か、肩がもげるぅ」


 不敵な笑みを浮かべる相手にすぐ青筋を立てさせる。ついその手に力も入ると言うものだ。




「嬢ちゃんは局長と知り合いなのか?」

「いや、あんな暴力的なひと知らない」


 バラダーは別に用事があるらしくそのまま部屋の奥に消えていった。


「はあ。ま、そういうわけでだ。あの森には立ち入れん。どうしても魔物狩りというなら、ここの若手をつけるから南の洞窟にでも行け」

「洞窟?」

「普段は東門は遠いからお前たちは行ったこともないだろうが、あそこは南側の山がすぐそばでな。そこにはギルドの管理下の洞窟があるんだ。比較的安全ではあるから今若手を放り込んでいる。そいつを紹介したいんだが──ああ、いたな。おい、こっちだ」


 ベイルがアイシャたちにつけるというまだ1年目のその男は、ベイルの呼ぶ声に誘われ堂々とした足取りで来て開口一番に片ひざをついてアイシャの手を取り


「結婚してくれ」

「いやだきもい」


 いつかのような綺麗な一本背負いはまたしても安全などという概念はどこかに捨ててきたようで、男を部屋の奥の壁に叩きつけた。


「ちょ、アイシャちゃん⁉︎」

「あいつを投げられるたぁどうなってやがんだ?」


 そこには昨年度末に聖堂教育を主席で卒業し、いまや冒険者ギルドの若手No1ホープと持て囃されるクレール先輩が背中から壁にぶつかって首で着地したままに気を失っていた。


アイシャの卒業を待たずして再会したクレール。

いよいよ男女の仲が深まる……


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ショタじゃないのはちょっと。。。 可愛いモノ至上主義なんで。
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