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黄色い断面よりはオレンジ色が好み

「君は──ショブージというエルフを知ってるね」

「まあ。でももう私の手を離れた案件です」

「ふぅ……君は私が誰なのか分かってないようだな」

「そうですね。知らないもの。戻っていいかな? まだやることがあるし」

「やること?」

「焦げるのよ焼き芋、私の分がまだ入ったままなの」




「子どもに権力など分かれと言っても無駄だな」


 バラダーは秘書のひとりに焼き芋を確保するように向かわせてとりあえずアイシャを留めることには成功した。


「君に用件を持って来たのは他でもない。マンティコアとの意思疎通が誰にもできんからだ」

「ママママ、マンティコアっ⁉︎」


 バラダーの言葉にアイシャではなく教師がひとりで派手なリアクションを取っている。


((この人めんどくさいな))


 なんだかアイシャとバラダーは通じ合った気がしたが気のせいとした。


「マンティコアって言えばあの人面犬よね。ちゃんとお願いしてるから大丈夫。話すことなんてないと思う」

「我々は確証が欲しいのだ。当のエルフたちもショブージもその現場を知らぬと言っている」

「それでも。私からしたらもう明け渡した船ですから。今さら乗るつもりもないですし、好きにして欲しいよ」

「明け渡した船、か。ふむ」


 バラダーはノートを取り出しメモを取る。


「何してんの」

「いや、な。私も忙しい身だ。どうにか仕事を押し付けたいのだが毎回言い訳を考えるのが大変でな。使わせてもらおうと……」


 アイシャについ語ったバラダー。通じるものがあったのかもしれない。お互いの視線が激しく交差する。


「はわわわわぁっ」

((教師がうざい))




「まあ、どうしても無理だと言うのならもう1人の……フェルパだったか? そちらでも構わんのだが」

「ふぅ、分かったよ。私が行く」

「そうか、それは助かる」

(フェルパちゃんに聞かれたらマンティコアの子どもの話まで出て来そうだし、それはさらに面倒くさいもの)


 さらに言えばアイシャとて教師が連れてきたこの人物が只者ではないくらい分かっている。だからこそ、この件をフェルパに回すわけにはいかないとも。


「しかしマンティコアと会話をしたのか?」

「んん? それを聞いて来たんでしょ?」

「半信半疑ではある。奴らは縄張り意識の塊のような魔物だ。人語を解するといってもそれは一方的な警告と宣言だけだ。こちらを蹂躙するときの、な」

「ふぅん。少なくとも私には話の分かるやつだったよ」


 アイシャは届けられた焼き芋を2つに割って中身を確認して湯気を見て匂いを嗅ぐ。


「聞いたところで信じられはせん。どちらにせよ現地で確認するより、ふがっ⁉︎」


 アイシャはバラダーが話してる途中なのに口に焼き芋を突っ込んだ。


「ぐふっ、何をする」

「その芋と同じよ。人が持って来ても割ってみなけりゃ焼き加減なんて分からない。どう? よく火が通って甘いでしょ?」


 バラダーは口の中に残る甘さを確かめて焼き芋の断面を見る。


「割ってみろ、と。そしてそこには期待通りのものがある。そう言いたいんだな」


 アイシャは意味深に笑う。


(期待していたものと違って蜜が足りないなと、なら一本丸々はしんどいなぁと突っ込んで押し付けただけとは言えない)


 2人の視線は激突しているようですれ違っていたみたいだ。


「ひええええええ」

((まじうぜぇ))


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