お昼寝館での決闘
プールでもはっちゃけて職業体験でもはっちゃけてアイシャは今はもうお昼寝を頑張る気しかしない。
もちろんそんな日々ばかりではなかったから大体は寝てるのだが。
そしてここしばらくは誰の訪問もなくアイシャはこの午後の1番に焚き火をしている。
季節は秋。お昼寝館の周辺には赤や茶色の落ち葉がたくさんある。そして人も来ないとなればすることなど1つとばかりに焚き火である。もちろんその中を枝でつついてたりする。
そしてそろそろ頃合いである。
「──彼女の適性は少々特殊でしてね、普段はこちらで自由に伸ばしてもらっています」
1人の教師が聖堂共通棟の職員室からお昼寝館へ向けて案内をしている。
「しかし彼女が本当にそんなことを?」
教師はその者たちの来訪が何かの間違いではないかと今も思っている。
「ああ、かのエルフたちがその人でないと最終の締結に至れないと言うものでな」
白髪をオールバックにして顎髭を生やした50過ぎのダンディなおじ様とその連れは教師の案内でお昼寝館へと続く生垣の階段をのぼっていく。
『やい!お昼寝士!今日こそ俺と勝負しろっ』
「ん? この声は?」
「さ、さあ。この先は今の時間は彼女だけのはずなのですが」
『んな! なんだそれ! おい、やめ、やめえっ』
「なんだか尋常じゃない様子だな」
「ええ、済みません急ぎます」
教師と男たちが駆け上がった先には歳下の男の子にマウントポジションを取る女の子がいた。もちろんアイシャである。
「あちっ! あっついんだよ! やめ! うまっ」
「どう? あんたなんて焼き芋1つでこのザマなんだから。いい加減に諦めなさい」
「ふぁい」
好きな女の子に馬乗りにされて焼きたての芋を口に入れられるという攻めはどういった層に受けるのだろうか。
少なくともにいちゃんの件という賞味期限などとうに切れたネタでアイシャに絡んでいくアルスには、どストライクのようだ。
「アイシャさん、一体これは?」
「戦闘実習です!」(キリッ)
「今、口で効果音つけました?」
「気のせいですよ」(キリッ)
「はあ……」
「初めまして、私は国家治安維持局局長のバラダーと言う」
「はあ、初めまして」
「単刀直入に言う。我々について来てエルフとの交渉に立ち合いなさい」
「いやです」
応接室の温度が下がった気がして教師はブルッと震える。