扉は開かれた
「つまり、そのマンティコアが現れてこの森にエルフが住む事を許可したと」
泣き止んだお姉さんと、嘘泣きに疲れたアイシャで話がすすむ。
「そう。『魔物に人間族や魔族の領土問題なんて関係ない、お主たちの誰も住まぬこの森を統べているのは我である』って」
ここにきて自分たちがそうそう手出し出来ないレベルの魔物の存在が出てきてどうしたものかと魔術士お姉さんはギルドメンバーと話し合っている。
「女神様、何故そのような嘘を」
「嘘じゃないよ。ショブージくんも見たでしょ? あの人面犬」
「ええ、たしかに。でも目が覚めた時には居ませんでした。それは女神様が退治してくれたからではないのですか?」
「あんな化け物無理だよ。それに気付いてるんでしょ? 私とフェルパが人間なのは」
ショブージはアイシャの顔を見て、フェルパを見て目が合うとフェルパは可愛く手を振ってくれた。
途端にキョドるエルフ。フェルパは分からず笑顔で小首を傾げてそれがまた可愛いとショブージはだらしない顔になる。
「いつまでも──あると思うな竿と玉」
「ひゅっ……」
アイシャの呟きに息を呑んでガタガタ震えだすショブージ。
しかし股を押さえて震える割に欲しがりな顔をしている気もする。
「話には合わせなさい。マンティコアは確かに認めた。私が取り持つと約束したしエルフ連中も受け入れた。あとはあなたが人間族と話をつける番なのよ」
珍しく真面目なアイシャの言葉に真面目な顔に戻った内股エルフ。
「アイシャ。この話は砦に戻ってからね。そこのエルフもそれでいいかしら」
コクリと頷くエルフ。皆についていくその後ろ姿はもうすでに失った人のようである。
「アイシャ、決まったわ。私たちは国にエルフを迎え入れる提案をする」
お姉さんはギルドと砦守護につく国の役人との会議での決定事項を伝える。
この場にはアイシャたち5人とショブージが揃ってお姉さんを待っていた。
「ショブージ、だったかしら。あなたたちエルフの意向は確かに伝えるわ。出来れば共存したいというのがこの場での私たちの統一した想いよ」
「ありがとうございます」
「でも聞かせて。なぜ危険を冒してまであなたはここに?」
「それは私たちの住むところが──」
「いえ、そうね聞きたいのは一度は他のメンバーに止められたのに、どうして押し切ってこられたのか、よ」
ショブージはまたアイシャを見て顔を赤くし、フェルパを見て表情が緩む。
「それは女神様への信仰がそうさせたのです! 私はお二人の敬虔なる信徒となるべくここに来たのです!」
「はあ?」
「女神様?」
お姉さんとフレッチャが訳が分からないと声をあげる。
「アイシャちゃんは本当に女神なんだよっ! わたしのっ!」
フェルパのフォローはもはや“アイシャは自分のもの宣言”でしかない。
「いえ、フェルパ……ちゃんも、女神です! 好きです!」
もはや信仰というよりはファンになりかわったショブージ。
「ショブージ、あなたそういえば歳は幾つなの?」
「53ですが⁉︎ けれど年齢など些細なことです!」
「アイシャ、あなた何をしてこのとんでもないロリコンをつくりあげたのよ」
「私は悪くない」
「そうです! アイシャ……ちゃん……は悪くありません! 女神が! 私の女神が! アイシャちゃん、フェルパちゃん! あぁ……」
「こんのぉっ! フェルパちゃんに色目を使うなっ!」
「あぁおっ! おうっ! も、もう一回!プリーズ! カモンっ!」
アイシャがたまらず尻を蹴り上げるとますます興奮するエルフ。フェルパはマイムに後ろから目隠しされてもう何も見えない。
「アイシャ、ロリコンなうえにマゾなんだけど、何したの?」
「私は何も悪くない。何も……そう、きっと最初からだよ」
全てを放棄し、アイシャは枕を抱えてスリープモードに入ってしまった。
人間族の脅威である魔族のうちのエルフとは一部ではあれど手を取り合う事が出来たようです。
その犠牲は1人の青年の性癖というものでしたが。
すみません、バイオレンスな展開はなかったですね。
それでも良かったよって方は感想や5つほどの星など遠慮なくください!泣いて喜びます!