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無事だったのはフェルパだけ

「アイシャちゃああああん!」

「おぐっふぅっ」


 日が昇って動き出した捜索隊はサヤの「あっちからアイシャちゃんの匂いがする」という言葉に連れられてというよりは独走するサヤが遭難するという事態を避けるためについて来たら本当に出会う事が出来た。


 サヤの事もあるが、ずっとたなびいている煙がアイシャによるものだという想定もしたうえでだが。


「んごふぅっ」

「アイシャちゃん、アイシャちゃん、無事で良かったよお」

「アイシャちゃんさっきまで元気だったのに」


 サヤと絡まってゴロゴロと転がったアイシャは目を回している。


「フェルパも、無事だったんだな」

「うん。アイシャちゃんに守ってもらっちゃった」

「何で顔を赤らめて内股でぬいぐるみを鯖折りするんだ」


 誰も彼もが2人の無事を喜ぶなか、魔術士お姉さんの声が響く。


「おのれ! このエルフめっ! いたいけな少女とおかしな少女に何をしようとしていた⁉︎」


 今にもショブージを攻撃しそうなお姉さんの剣幕に、和やかなムードは一変してあたりは緊張に包まれる。


「ねえ、フェルパちゃん」

「なあに? マイムちゃん」

「何であのエルフ内股なの?」

「なんかずっとああだよ」


 マイムたちが初めて目の前にしたエルフは少し様子がおかしい。


「ひはふ、ひはふんは、ひひへふへ」

「おのれぇっ、変な顔して変な声で馬鹿にしているのか!」


 お姉さんは杖を向けて怒りに震えている。


 ショブージは端正な顔を歪めて泣きながら首を振っている。変顔でおちょくっているようにも見えるが、サヤたちの登場に慌てて立ち上がって股間の痛みが再発したせいだ。


「ちぃっ、これだから魔族は! ええい! 死にさらせっ」

「待ってよ、そんなことしたらせっかくまとまったものもダメになっちゃうよ」


 火の玉を杖の先に構えたお姉さんとエルフの間に割って入ったのはアイシャ。


「このエルフは──」

「ごめんっ──アイシャ」


 お姉さんの発動させた魔術は止まらず、アイシャのお腹に火球が炸裂した。




「あり得ない……味方を撃つなんて」


 おーいおいおいとワザとらしく泣くアイシャ。


「だから、謝ってるじゃない? ね、ねえ? ほら、もう泣き止んでよ。ていうかなんで無傷なのよ。私が泣きたいよ」


 お姉さんはアホの子に火球をぶつけたのは悪いと謝ってはいたが、焦げ跡ひとつ残らなかった事に魔術士としてのプライドがズタズタで、ついに泣き始めてしまった。


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