女神の生殺し ※イラストあり
「フェルパちゃん、起きて、起きて」
「うーん? アイシャちゃん? きつね?」
「起きたね。エルフは解散したけど、1人だけここに残してるからまだこのままね。息苦しくない? 大丈夫?」
「うん。わたし頑張る」
頑張らないといけないのは大丈夫じゃない気もするがアイシャはとりあえずショブージをどうしようかとそこにカチコチに固まっているエルフを見る。
若い。見た目は前世のアイシャ──少し身長が高めの男子高校生くらいか。全体的に優男といった感じだが、尖った耳と長い金髪が特徴的である。
アイシャはこの遊びすぎた空間を順番に片付けていくことにした。
バラバラの牛は跡形なく消えて、なんだか物騒なコカトリスの肉も収納。ベッドも収納したいところだけどあまりにも無惨な状態で諦めた。
「あ、あの」
「うん?」
「え?」
ベッドが粉々で物思いに耽っている時に声を掛けられてアイシャはつい地声で返事してしまった。
「あー、えっと」
「……」
『何かな?」
しばらくはにらめっこが続いた2人だが、アイシャもそろそろ疲れたので神様ごっこはやめることにした。
「ふぅ、もう仕方ないね」
言ってアイシャはフードを開けて素顔を晒す。
「もういいの? じゃあわたしも」
フェルパもフードを脱げばそこには着ぐるみをきた女の子が2人。
「狐……女神様?」
「あなた最高ね」
焚き火は相変わらずの勢いを保っている。
ショブージも含めた3人で焚き火を囲んでアイシャとフェルパは楽しくおしゃべりしてショブージはそれを離れたところから見ると言った具合だ。
「あ、あの女神様っ。俺は、私はこれからどうなるのでしょう⁉︎」
素顔を晒して話し易くなったようで、ショブージは意を決してアイシャたちに尋ねる。
「んー。私たちもここから砦に帰れないとなんとも。でもとりあえず私があなたを連れて行くから、そこで話してみてよ」
「は、はあ……」
「あの、女神様? これは一体」
ショブージは今大きなくまのぬいぐるみを抱えている。もちろん呪い人形のカーズくんだ。
「砦に帰るにしても朝にならないと動けないからね。見張りよろしくっ」
「なるほど。分かりました」
「ちゃんとテキトーな時間に起きるからね」
パチパチと鳴る焚き火が3人を照らす。
くまのぬいぐるみを抱いたショブージは目を見開いて辺りを警戒していたのだが、今はその視線が一点に集中している。本人ですら今までにこれほどの集中力を発揮したことはないほどに目を見開きその網膜に焼き付けようとしている。
ジンベエザメボートの上で寝苦しいのかだんだんと着ぐるみがはだけていく2人の寝姿は、互いに絡み合うその姿勢と相まって、それまで年上にしか興味のなかったショブージの好みを変えてしまうほどの光景だった。
このころにはもはや狐の神様と思ってたのが服を着た人間だとか気付いていたがショブージにはどうでもよかった。
目の前の肩まではだけてるのに見えそうで見えない健康的な肌をみて、重なる身体、太もも。この真夜中の炎がなおさらに扇情的に演出する。
ほとんど着ぐるみなのに若さが想像力を掻き立てて、見張りの交代はすると言ったアイシャが一向に起きなくても文句もない。
(むしろ寝ててくれ、あわよくば日が昇って視界が明るくなってよく見える時間までっ!)
かっこいいエルフ?アイシャに関わればもうダメなエルフですよ。
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