生き残るために
「アイシャちゃん⁉︎」
「だめだ! お前まで落ちてどうする!」
落下する2人を追いかけようとしたサヤをお姉さんが止める。しかし力比べで近接戦闘職に敵うはずもない。
ズルズル引き摺られていくお姉さん。
「ああっ!」
すでに間に合わないというのにそれでも追おうとするサヤ。
「サヤ、落ち着く」
サヤの前に手を広げ通せんぼするマイムはこの状況で落ち着いている。
「マイムちゃんどいてっ。私は行かないと!」
「サヤ。落ち着いて。アイシャが付いて行ったの」
「だからよ! アイシャは私のっ──」
「危なげだったが無事に切り抜けたと思うよ」
フレッチャもサヤの前に立ちはだかり止めに来る。
「無事に……?」
「ああ、あれならきっと無事だろうね」
「フェルパちゃんっ」
「アイシャちゃんっどうして?」
アイシャはフェルパを抱えたまま地面と向き合う。
前方へ勢いのついた2人は確実に森の木々に落ちてしまうだろう。
それで勢いが殺されて無事なんてこともあるかもしれないけど、何もしない訳にはいかない。今度は出来る事があるはずなんだから。
アイシャは空中でフェルパのお腹に円を描きストレージの穴を作る。迷わずフェルパのお腹に手を突っ込んだ(フェルパ目線)アイシャはそこからジンベエザメボートを取り出して空中で展開して乗る。
けれどホバリングやグライダーみたいな機能は付いていない。ただのエアーベッドの1つだ。
「“パージ”!」
唱えればプールの時のようにジンベエザメボートから空気が噴出して前方、森の中の方へと飛んでいく。
(パージは要らなかったわ!)
アホの子アイシャはプールの時のイメージが強くてついやってしまったがこれでは加速して余計に大惨事になりかねない。
パージしたボートはすでにストレージの中。また出してもいいがその場合は膨らますのが間に合わないだろう。
アイシャは1番硬くて大きなもの──いつものお昼寝用ベッドをストレージから出して今度はそれに乗る。
さながら盾のようなベッドでスケボーのように、とは行かずに派手に木の幹に激突した。
「なんかすっごい音がしたけど、大丈夫なのかな」
硬いもの同士が激しく衝突するような音に、フレッチャも少し不安になったがここで自分まで取り乱せばサヤが飛び込んでしまうだろう。
「無事だよ、あの子。こんな事でどうにかなるなら私がとっくにシメてるよ」
こういう時は大人が頼もしい。なんの根拠もないのに確かにアイシャならどうとでもしてそうな気になる。
「それにまだ焼きそばを食べてないからねぇ」