魔術士ギルドとエルフの闘い
お姉さんは3度、エルフたちに同じ文言で忠告をした。
「まさかそれで終わったりは……」
「さすがにこれだけでは終われないよね」
お姉さんも苦笑いだ。
「私たちは野蛮な生き物じゃないよ、って。ちゃんと忠告したからねってアピールしただけさ」
「それにアイシャちゃん、今のはすごいんだよ」
マイムもそういえば目をキラキラさせていた。
「普通に叫んでも届くわけない声を届けたんだよ。それも私たちには普通に聞こえるのに。それをするのにどれほどの制御がいるか。あれほどの指向性を持たせるなんてさすがよね」
「そうなんだ。じゃあ凄い」
「うん」
「あ、なんか聞こえたね」
「うん。でもあんまりよく分かんない」
アイシャとサヤがエルフの方から声が聞こえた気がすると言う。
「私たちにはよく聞こえるのさ。まあ、お互いに魔力に干渉させるのがこの拡声の魔術だからね。魔術士適性の低い人にはあまり聞こえんのさ」
「ちなみになんて?」
「うっせーブスって聞こえた」
アイシャの質問にはマイムが答えた。
「それだけじゃないよ、うっせーバーカってのもね。マイムもまだまだこれからね」
なんだか魔術士ギルドの師弟みたいな感じだけど、内容が酷すぎた。
「じゃあ次は?」
今度はお姉さんじゃなく他のメンバーがその両手を上にあげて真上に火を飛ばした。
「おお? これはなんかの攻撃⁉︎」
上がった火は上空で弾けて花を咲かせた。
「これ……花火?」
「おや? アイシャちゃんは知ってるのかい? なかなかの腕前だろ?」
打ち上げた面々も「へへ……」っと鼻をかいて自慢げだ。
するとエルフの方も同様に花火をあげる。
「あいつら、あんな高くっ⁉︎ ……なかなかやるな……ごくり」
「何がさ」
「もっとだ! もっと我々の力を見せつけてやれ!」
打ち上がる花火。こちらと向こうのどちらが高く大きいか。
「たーまやー、かーぎやー」
「アイシャちゃん何それ」
「花火合戦の声援」
「そうなんだ。じゃあみんなでやろうか」
どちらが玉屋で鍵屋かも分からないまま、どちらともを応援するような声援がつづく。
「おのれ、さすがはエルフ。ではこちらも本領を発揮するよ」
お姉さんたちはひと所に集まって、火の玉をいくつも出して正面に展開させてぐるぐると回す。
「おお、これこそ攻撃魔術でしょ。びゅーんって飛んでいって」
「はあ、はあ……。これでどうだ」
ひとしきりぐるぐる回した火の玉はやっぱり空に順番に打ち上がって弾けて消えた。
「エルフ、ちょっと悔しがってる。またブス、バカって言ってる」
「ふふん、負け惜しみとは見苦しい」
「いや、私にはこの争いは高度すぎるかな……」
アイシャはもはや理解出来ないとばかりにぬいぐるみを出してフェルパと遊び始めてしまった。