砦の夜の襲撃者
その日は崖の下を眺めて「ふわぁ、目が回りそうです」とフェルパがふらついたところで、疲れを取ってと言うお姉さんの労いの言葉を合図に砦まで引き返した。
女3人集まれば姦しいなどというが5人集まればただただやかましいだけで、共同の浴場に入れば怒られ、見学者用の寝所でも怒られ、アイシャたちはそれでもお泊まり会だと怒られてひそひそと過ごす事さえも楽しんでいた。
「ん、んんー」
寝苦しさに身体をよじるアイシャの布団には足の辺りに妙な膨らみがある。
その膨らみは高さを無くしていく代わりに、アイシャに沿うように伸びていく。
「んん? え? なんで」
寝返りをした先に布団以外の物があってアイシャが目を覚ますと、鼻が触れ合うほどの距離に目を閉じたフェルパがいた。
すやすやと眠るその姿は、同級生ながら妹のようで他の3人の時のようにアイシャが身の危険を感じることもない。
何たる平穏。何たる至福。
思わずアイシャはフェルパを軽く抱き寄せ頭を撫でて、そのまま眠りについた。
翌朝まだ日の昇らない時間に目が覚めたアイシャは抱きかかえているのがフェルパではないことに気づく。
右を向いてフェルパを抱えていたのが、今は左を向いている。そしてフェルパだと思って撫でていた頭には少しパーマのセミロングの髪の毛があって紫色をしていることも月明かりに目で見てわかる。
そこまではいい。けどまたしてもこの子は何も着ていない。たしかおやすみと言った時はパジャマだったはず。
そして、あの時のようにアイシャもおそらく“脱がされて”いる。
「んっ……」
マイムがあごをあげて声を漏らせば、その唇がアイシャの唇に触れる。
(この調子で何回のキスをしたのだろう。というかこれ絶対寝てる間にいいようにされている)
アイシャは少なくとも何もはいっていないことだけは感覚として分かっているが、それ以外はもはや測りようもない。
アイシャの太ももの間にあるマイムの脚が柔らかくて気持ちいいとか、手を回した背中がすべすべだとか。
右の天使と違いこちらの天使はまだ早い。何がとは言わない。
一応すべすべの肌を記憶したのち、寝返りで右を向こうとしたアイシャにマイムが合わせて動き、そのまま乗り上げるような格好になった。
柔らかな感触が肌の上で圧縮される感触。
「……マイムちゃん、起きてるよね」
「…………ばれた?」
「はぁ……え?」
マイムの狸寝入りにため息するアイシャに反対側からも乗り掛かる重さを感じる。
「なにしてんのふたりとも」
服を着た方の天使に気付かれた。小声で配慮はされているけど、ふたりともと言った辺り状況はバレている。
「あー、えっと」
「フェルパちゃん。一緒に寝るなら裸の方がいい。あったかい」
「そうなの?」
「ちょっ、えー⁉︎」
今度は純粋なフェルパまでもが服をスパパーンと脱いでアイシャの右半身を占領する。
「ふふ、本当。アイシャちゃん大好き」
両側を挟んで身体にしがみつく2人。
「あたしも、アイシャちゃん大好き」
両側から絡めてくる脚にもはや抵抗する術なく、アイシャは日の出までには言い訳を考えなきゃと寝たくても寝れない至福の時間を過ごした。