魔術か否か
人間族の砦にはこの一帯の見張りをするギルド員たちが常駐していて、こうしてやってきた魔術士ギルドの面々に状況の説明を含めた会議をしている。
そこには見学者は参加できず、砦内を散策することになったアイシャたち。
「あ、地図があるよ」
壁に貼られた地図を見て自分たちの現在地を確認する。
「街がここでレェーヴの森がここ。地這鳥のいたのがこの辺で、ずっーと移動してきてスィムバの森を西に見るここが私たちのいる砦なんだな」
フレッチャが街から指でなぞって確認した。
「あたしたちの住む街は人間族の領土の西端。南側こそ山が間にあるけど平地続きの周りはきっかけがあればいつだって侵攻されかねないなんて言われている」
「マイムちゃん詳しいのね」
「サヤちゃんもいずれ聞かされる。その最前線に行く事になるのは前衛職なんだから」
「そうね……今日はせめてその現状だけでも見て帰りたいね」
そんな3人をよそにアイシャとフェルパは個人的なお話の最中。
「アイシャちゃん、わ、わたしのは……うさぎがいいなって思うの」
「うんうん。なるほどね。じゃあ、これでやってみますか」
アイシャは“ぬいぐるみ作成”の技能のひとつを駆使して一体のうさぎのぬいぐるみ(大)を作成してみせた。
白を基調とした生地には小さなうさぎの模様がところどころに描かれたデザイン。目に使っている石は綺麗に磨かれているが、いつもの森で拾うキラキラした石だ。
「ふわぁぁ。とってもかわいいよぉ」
「フェルパちゃんにちょうどいいくらいの大きさだと思うのよね」
うさぎを受け取ったフェルパからやっと呪い人形カーズくんを取り戻したアイシャはさっさとストレージにしまった。
「なにあれ。魔術?」
「あー、マイムちゃんは見たことないのね。あれはお昼寝士の技能みたいよ」
「技能で勝手にぬいぐるみが出来るの? それはもはや魔術じゃない」
サヤの説明にお昼寝士のそれは魔術だろうと言うマイム。
「けれどクラフト系にああいうのがあるとも聞くわよ。まあお昼寝士が魔術士ではないと思いたい私の意見でもあるけど」
会議を終えたお姉さんが補足してくれる。
「魔術士ではないと思いたいってのは?」
マイムはその発言に違和感を感じる。未知のものが魔術であればそれを受け入れて解明していくことで魔術士ギルドは発展してもきたから。マイムはそういった探究心というのが人よりも強い。
「だってアレが間違って魔術士ギルドにでも来た日にはどんな面倒事が起きるか……」
「あー……」
そばで聞いていたサヤもフレッチャもお姉さんの気持ちが分からない事もないと納得してしまった。