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サメさん

「なにこれ?」


 アイシャのストレージの穴から飛び出した布と、例の銀色の毛を木の実の青色で染め上げたものが混ざり合い出来たのは、よく分からないクシャクシャの塊。


「フェルパちゃんにもプールを楽しんでもらいたくて、ね」


 クラフト系のフェルパにとってはあまりにも衝撃的な光景。手で触れる必要さえなく、技能を発動させただけでフルオートで物が出来る様子をまじまじと見て驚くフェルパにアイシャは親指を立ててニッと笑う。




「ねえ、あの屋台の子。今度は何したの」

「さあ……? けれど楽しそうではあるよね」


 最近は水を入れ替えたり温度を保ったりするのに加えてかき混ぜて客を楽しませている魔術士お姉さんたちは、そのプールに浮かぶ青い物体が何なのかと話している。


 お姉さんたちはアイシャとフェルパがプールサイドに何かを持ってやってきたところから注目していた。またよからぬことをするのでは、と。


「これはね、お昼寝士の技能で作った“どこでも持ち運びベッド”でね、こうしてここをひねると」


 お姉さんたちの疑惑の視線などしりもしないでプールサイドまできたアイシャは、先ほど出来上がったクシャクシャのそれについたツマミをカチッと回す。


 すると中に空気を取り込んだそれは一気に膨らんで、青くて丸くて平べったいジンベエザメを模したボートになった。


「私はどこでも寝る。その想いが! このこを水に浮かせるの!」


 アイシャが水面に投下したボートは沈むことなく浮かび、フェルパを抱えて飛び移れば水上に浮かぶベッドにふたりきりの空間が出来る。


 強力な撥水防水加工が施されたボートはプールの流れに沿って流れていく。





 水着を着ていながら水に濡れることなくフェルパとアイシャは人々の間をボードで流れていく。座ったまま注目を集めてしまったフェルパは、恥ずかしいながらも何かしなければと、周りの人たちに控えめに手を振った。


「皇族か」


 アイシャは前世のテレビ中継でみたあの光景を思い出してつっこむ。


「アイシャちゃんのこれはなんで膨らんだの? なんで水に浮いてるの? ねえ? ねえ?」


 漂うフェルパの唯一の救いはそばにアイシャがいることだが、そのアホの子は同時にフェルパをこんな場所に連れてきて見せ物にした下手人でもある。だが見た目には布製のそれが沈まずに浮く原理はアイシャにも謎だ。


 お昼寝士の技能としてそれがあって、水上でも寝られるためとしか説明しようがない。けど


「これがお昼寝士の魔術なのよ」


 色々と見せすぎてしまったかもしれない。手芸が本職となるフェルパだからこそ、追求の手は緩められる様子もない。困ったアイシャは、笑顔でそう嘘をついた。


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