【番外編】アイシャのレシピ 前編
お昼寝士のスキルポイントを貯めるための銀狐狩りは順調である。マケリたちとの職業体験のときに弱い者の前にしか現れないと聞かされて試した囮行動でいよいよ自分が弱者であると客観的に示されたアイシャはそれからも銀狐を狩り続けた。
狩りたいわけではなくて、この森での休日の鍛錬にこいつらが現れなくなったらその弱者をとりあえずは脱することが出来たことにはなるだろうと思っての事だ。
そのためにはトレーニングあるのみでまずはギルドカードのステータスオールEに変化が訪れるのを期待する。
そうする中でスキルポイントはじわじわと溜まっていくのだから効率を考えても、まあ悪くない。アイシャは枯れ木のような姿のままのスキルツリーに実がついたところから取っていく。
各種ステータスアップなどは無視して幹を上がってメインであるところの技能を取得していけばより上に飛んでいけるということは知らない。
(指でスクロールすればツリーの全体が見れるんだなぁ。なんだかスマホみたい)
そういうことは気づくも律儀に下から全部取っていく。STR+ や INT+ というのも何かわからずに取っていく。
「“ふかふかお布団作成”?」
それはアイシャが新しく取ったスキルだが、実行するには“清潔な布”というのが足りないらしい。わざわざ“清潔な”と書いているあたり店で売っている新品だろうと、お小遣い稼ぎに石を売りに行った。
森でたまに拾う石はなぜかお店のおじさんが買い取ってくれる。それも結構いい値段で「ありがとうな」とまで言われるのだ。もしかしたら宝石の原石かなにかだろうかと考えたりもしたものだが、そもそも興味もないし加工技術もないのだから、目的のために売ってお金に換えた方がよいと結論づける。
布を買って技能を使えば確かにお布団が出来た。部屋のベッドの布団を入れ替えて寝転がるととても気持ちいいが、パジャマやらのときは材料などは気にしていなかったのに、とそれぞれの説明を開いてみる。
改めて確認するとパジャマは銀狐の毛と有り合わせの材料だけで作れて、枕とベッドは布の指定がないあたりどうもストレージ内にあるものを使われていたみたいだ。枕にはアイシャの着替えが、ベッドの木材などはこれも拾っていたやつを使われている。
銀狐はまだまだアイシャを恐れることなく現れる。手にしたスキルポイントはアイシャのスキルツリーからいくつかの技能を取得して消えていく。そのうちの“おやすみ三角帽子”というものが気になるアイシャ。これを被れば寝たいときに眠れるようになる魅力的なアイテム。職業体験のときにアイシャが被っていたのは市販の普通の帽子。
どこでも寝れるアイシャではあるけれど、気になることやストレス、自分を取り囲む人が多いところなどではさすがにパタンとはいかない。これでさらに快適なお昼寝ライフが捗ること間違いなしだとアイシャのモチベーションは高まるばかりであった。
ここまでが前提というか、はしょってきた物の材料のお話。つまるところ都合のいいアイテムってこうして作ってましたーっていう言い訳。
後編が呪い人形カーズくんのお話です。