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2人は共に

「理由を聞いてもいい?」


 影は「別に想定外ではないけど確認をしたい」とアイシャに尋ねた。


「あの時に私が助けようとしなければ彼女は終われたんだ。私のエゴのせいだね。そう思うとこのアミュレット……“偽りの正義”だっけ? 皮肉だよねその名前」


 影は答えない。


「それに引きこもりたいならそれもいいんじゃない? 私は私で今を楽しんでいるし、それを見て感じた彼女も楽しんでいるなら、何も悪くない。だからいいんだよ」

「彼女に対する罪悪感? 同情?」

「いや、共感だよ。私はお昼寝が好き。何故かこの世界では前よりももっと好きになってるんだけど。だから私よりちょっとだけ奥に引っ込みたい彼女の気持ちは分かるんだ。ここが彼女にとって居心地いいならそれでいいよね」


 フッと影は笑い応える。


「分かったよ。ついでにお昼寝が好きなのは元々の男子の君もそうだし、1人になれるお昼寝を彼女も生前から好きだったのが合わさっている。そしてお互いのその性質が“お昼寝士”として現れているんだ」

「なにそれ、いいことづくめだったんじゃない」

「もし分かれていれば、君は“お昼寝士”ではなく“拳闘士”にでもなっていただろうね」

「絶対いやだ。私は絶対に彼女と別れない」

「付き合ってんのかよ」


 枕を抱きしめ首を振るアイシャに影はこれ以上ふたりの関係をどうこうするつもりはない。


(ふたつの魂がそこにあって混ざり合うわけでもなく傷つけ合うわけでもなく生きてこれたんだから、この結果も当然といえば当然なんだろうね)


 影が気にかけた女の子はこうして無事に生きている。少し変な子になっているのが不安ではあるが。





「未知の“お昼寝士”だけど、それで金儲けなんてのも出来る。けれど闘うには足りないだろうからお守りのもう一つのチカラを使ってね」

「あの裸になるやつ?」


 アイシャの中で彼女が赤面して悶えて、アイシャも顔が赤くなる。あの現象でできる事など痴女育成くらいのもので、戦闘に生かすとすれば不意を突いて油断を誘い首の骨をぽっきりさせるくらいだろう。実践するかは別としてイメージトレーニングの相手はきっとクレールとアルスである。


「そっちじゃない方。“ディルア”って唱えるといい。それはこの世界でも強力な武器となり防具となって君を助けてくれる。その気で振るえば実体の無いものにだって通じる。“アーリン”はその鎧を解除するのに使うんだよ」


 そう言って影は「先に“アーリン”を唱えると服が弾けるのはバグかも知れないけどね」と笑い出した。


 明らかに悪戯が成功したことと上手くハメられたことで喜びを覚えたであろう癇に障る笑いにアイシャは静かに立ち上がり口を開く。


「“ディルア”」


 アイシャが唱えると腕と脚にそれぞれガントレットとグリーブが現れ装着される。アイシャがわかるほどに、そこからとても強い何かも感じられた。


 軽快に床を鳴らしてステップを踏んでもズレたり捻れたりもしない。これもこの世界の不思議要素のひとつなのだと、あつらえたかと思うほどにしっくりくる装着感を確かめたのち、素早い半歩の踏み込みに腰から回されたアイシャの脚が影を捉える。


「そういうことは先に言えーーっ!」


 実体の無いものにも通じる蹴りは偽りなく影を切り裂き霧散させた。影はそうして部屋から姿を消してしまったがもともと存在しているのか怪しい相手を仕留めることは出来なかったらしい。


「それは彼女に言ってよね。分かっててドキドキしながらかぶりつきで観てた彼女に。あとお昼寝士がふたりの合わさった結果とも言ったけど、前世で男子だった君と女子なのに女の子が好きだった彼女。合わさって今世は……楽しみだね」


 声だけになった影はそれだけ言うと満足したのかもう何も聞こえなくなった。


「それも普通じゃないんだろうけど、案外私もイヤじゃないんだよ」


 サヤとのお泊まりは賑やかで楽しい。どっぷりハマるのは良くない気もするけれど。自覚の足りない嗜好の芽生えに、アイシャの中の彼女も期待に心躍らせている。


校舎の屋上から落ちた2人は1人になってしまいました。

片方は奥の奥のほうに引きこもりで、もう片方も起きているのか寝ているのか。気ままなアイシャのお昼寝ライフはまだまだ続きます。


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