UVオフですかあっ⁉︎
「アイシャちゃん」
「お待たせサヤちゃん」
お昼はサヤと過ごすことにしているアイシャ。
「なんや、ワシもええんか?」
「アイシャちゃん、この人は?」
「武器職人適性のオプロ。いま剣を作るのを見せてもらってるの」
「そうなんだ……」
(男の人と2人きりで、かな)
サヤは少し戸惑いながらアイシャの連れてきた知人を邪険にするわけにもいかず仕方なく昼食を共にする。
「……まあ、オプロは彼女がいるらしいから」
「なら安心ねっ!」
「何の話や」
幼馴染の心配するところなどはこのところ嫌と言うほどにわかっている。サヤも悪くなりかけた機嫌を直して剣についての話でこの昼食は盛り上がり、その様子は遠巻きに眺めるルッツたちに悔し涙を流させる結果になった。
「さて、ほんなら続きをやるかね」
「巻きでお願いします」
「……は?」
「巻きでお願いします」
ずずいっとオプロに迫るアイシャ。
「いや、無理やて。おまぁこっからどんだけ掛かると思うとるんか」
当たり前の反論である。だけどこのアホの子は譲らない。
「だって私も作りたいんだもん」
「──だもんとか言っても無理なもんは無理や。大量スキルポイントでツリーの乱獲しても中身はさっぱりなんやな。今日のとこはおとなしゅう見とき」
「むー」
突っぱねられ金槌を振るいはじめたオプロにはすでにアイシャの姿は映っていない。
日も暮れ始めたころにようやく完成を見たのは一本の包丁である。
「武器じゃないじゃん」
「まあな。けんど、街で売るなら剣や槍よりもよく売れてだな……んなっ?」
やっと終えて意識が帰ってきたオプロは隣でずっと見てたアイシャを見て仰天する。
「おまっ! なんて色しとんねん」
「ずっと炎の前だったから……」
オプロを驚かせたアイシャの肌はその色をこんがりとした茶色に変えている。
「あほか。太陽じゃあるまいに、そんな日焼けするかっ」
「えっ? そうなの? ルミちゃん、話が違うよ」
振り返り問いかけるアイシャにつられオプロもルミを目にするが、その精霊はどうもおかしな様子をしている。
「ルミちゃん? てその精霊か……その手に持っとんのは何や」
「……てへ?」
手にハケとバケツを持った花の精霊。もちろんバケツには茶色の粘性の液体が入っていてハケにもついている。誰が見ても犯人であると分かる恰好。
「イタズラ精霊に名前を変えた方がいいかもしれんの」
この親にしてこの子あり。心底呆れるオプロだが最後には退屈しなかったと笑って送り出してくれた。
「んーっ! 職人たちも大変なんだねえ」
「技能ワンアクションで作れちゃうママがおかしいのよ。そうそう、それなのに何で見学なんて?」
カチュワに盾を作った時にはその異常さに気づいていたアイシャ。スキルツリーから技能を取得すれば出来るものをわざわざ1日かけて見学した理由。
「私って色々ズレてるから。今度の課外授業で冒険者ギルドを避けるにしてもその辺は認識を改めとかないと、ね」
「なるほど〜。まあ、それもいい経験なのね」
珍しく先手を打ったアイシャにルミは思うところはあるが良いことだと肯定する。2人はサヤの待つ門までを話しながら歩く。
「ところでルミちゃん、この塗料ってちゃんと落ちるのよね。なんかカピカピで動きにくいけど油性じゃないよね?」
「ん? ちゃんと落ちるよぉ、もちろん。あ、サヤちゃんだ」
「あー、ちょっと待たせちゃったかな」
早足になるアイシャ。追いかけるルミ。気づくサヤ。そして仕上げにアイシャの頭にリボンをつけてルミの悪戯は完成する。
「アイシャちゃん、どうしたの? お昼寝し過ぎたとか?」
こんがり焼けたようなアイシャの姿もおかしいが、この幼馴染も大概ひどいことを言う。
「それがね、実は──」
「ママがサヤちゃんにプレゼントだって。全身にチョコレートを塗って私を食べて(ハート)だって」
「んなあっ⁉︎」
「え、アイシャちゃん、それは……」
(ルミちゃんはなんてことをっ、これじゃただの危ないヤツじゃないのさっ。さすがにサヤちゃんも引くよぉ)
アイシャの心の叫びは声にならずサヤとの友情に亀裂が入る音を幻聴のように鳴り響かせたが。
「お家で、いただきます……(ハート)」
この幼馴染に対しては全く要らぬ心配で、連れ帰った幼馴染は食事も後にするほどに──たいそう喜んだそうな。