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時間停止の可能性

「ちなみにワシはアイシャと同じで今年度で卒業の年や」

「あれ、同級生だったの?」

「そうや。まあ関わりのない連中なんて知らへん方が多いわな」


 アイシャの年は85名が入ってきており、そのほとんどが物理、魔法含めた戦闘職で、その他にオプロたちやフェルパたち生産職などがいる。


「そうだよね。よほど知名度でもないと──」

「まあ知名度でいえばアイシャがダントツやでな」

「げっ? なにそれ。もしかしてファンクラブがあるとか?」

「んなわけ。世にも珍しい“お昼寝士”はあの丘の上──ってな」


 今はそこに精霊まで住んでいる。


「まあ知名度では敵わんけど、ワシは──」


 オプロは金床にハンマーをカチカチ鳴らして少し自慢げに言う。


「この年1番の武器職人適性よ」




 オプロは上級までのスキルを全て取得してあり、卒業してギルドに登録されればギルドの認定を受けたのちに職業としての武器職人を上級のものに進めることが出来るらしい。


「上級職に変わるのにギルドの認定がいるなんて知らなかった」

「まあな。ツリーのスキルを全部取得してからカードに“更新”の文字が浮かぶらしいから。知らへん人は知らへんよな」


 今回の無知はアイシャだけのことでは無さそうでホッとする。


(けど上級職、か。お昼寝士にもあるのかな)


 アイシャはやはり下からスキルもステータスアップ系も順番に取るタイプのためにまだ残っているものがある。それらを取得すればおそらくは同様に表示されるのだろうが、その時にはギルド職員を混乱の渦に陥れることになるかもしれない。




 熱い炎がアイシャの肌を灼く。このままでは褐色美少女になってしまうと危惧するアイシャは、それでも玉のような汗と煤にまみれながら鉄の塊を延ばして形にしていくオプロの槌さばきを眺めている。


「大体形になってきたな。午前はこれで中断やな」

「このままで止めて大丈夫なものなの?」


 なんとなく作り始めたら休憩もなく仕上げるものと思ってるアイシャ。


「まあ大丈夫やけどワシはこの状態を維持したいからな。“中断”」

「今の、技能?」

「中級で取れる。良いところでトイレとかメシとかの時に使えば解除するまではこのまんまや」


 燃えるような真っ赤な鉄はその色の揺らぎすら止めてしまっている。


「まるで炎の剣ね。これで戦えば強いんじゃない?」

「アホぬかせ。そんなドロドロの鉄なんて思いっきり振ったらぐにゃぐにゃになって使いもんにならん。それに、な」

「あっ」


 話しながらオプロは真っ赤な鉄を鷲掴みにして平気な顔をしている。


「なんでかは知らんが触っても熱くないんや」


 止まっているから。変化が、か時間がかは別として止まっているから“熱の移動”もないのだとアイシャは気づく。


「なるほど、それじゃあ戦いには使えないね」


 きっとオプロは試してもないのだろう。いま握っても熱くないのと同様に、柔らかいはずの鉄は振ったところでその形を変えることはない。ただの赤色の棒なのだ。そっと元に戻して2人はサヤの待つ食堂へと向かった。


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