仲良しな朝
「あ、アイシャちゃん、本当にこれで出なきゃダメ?」
そんな5人の元にコテージから知らない声が聞こえてきた。
「だって他に持ってないんだから、仕方ないよ。早く来てよ」
男子ズがアイシャに欲情しながらも誰だ? と首を傾げていると開いたコテージの扉から1人の女性が降りてくるのが見えた。
「やっぱり恥ずかしいんだけど──」
「何言ってんの、似合ってるよほんと」
その声の主はアイシャよりずっと高い身長の175cm。黒髪はアップに纏められていて切り揃えられた前髪と長いもみあげがキュートな美女。
「うわぁお、セクシー。男子たちもこれは──ってどこに行った?」
アイシャが急拵えした銀ぎつね着ぐるみパジャマは下着姿の彼女のボディラインをうっすらと浮かび上がらせており、丸見えのそれよりも別の魅力を四方八方に振り撒いている。
やがてまた1人2人と戻ってきて美女含めて6人が揃ったところでアイシャが紹介する。
「昨夜近くにお散歩して知り合ったミドリちゃんでーす」
「あ、あのミドリです……やっぱりこれは何か恥ずかしい」
そう言ってアイシャにしがみつくミドリがアイシャは面白く男子ズはアイシャの腕がめり込む場所に腰が引けてしまう。とても直立は出来ない。
「ミドリちゃんはこれから街に帰るそうだから一緒にどうかなって。護衛任務みたいで楽しそうでしょ」
アイシャの提案に男子ズから異論は出ない。真っ赤にして震える美女を守るのが紳士!
「ミドリちゃん、だからもう──やっ⁉︎」
しがみつくミドリを宥めようと引き剥がそうとしたアイシャをミドリが引き寄せたものだからアイシャは勢い余ってミドリを押し倒してしまった。
「大丈夫か、アイシャ──」
「ふわあ、なにこれ柔らか。ミドリちゃんやっぱり良いものをお持ちで」
押し倒したアイシャはミドリの柔らかい谷間に顔を埋めてミドリはそれでもアイシャを離さない。仕方ないから揉みしだくアイシャに男子ズはまたも離席を余儀なくされた。
「ドロフォノスさん、私のお願いなんだけど。それは当然今回のことの殆どを秘密にしてくれると約束して欲しいの。具体的には報告の内容を私に任せて欲しいわ。あとはそうね素顔と本名が知りたいかな」
『なるほどのぅ、あくまでその人間を信じる、かの』
「そうよ。記憶を、なんて物騒なことはやめてよね。ねえ、ドロフォノスさん、どうしたい? デカ狐に任せる? それとも──」
この状況でそんな選択肢は無いようなものだし、何気にお願いはひとつではなかったが、優しい提案の方を呑むことにした。
「ちょ、中身こんな美女とかズルくないっ⁉︎」
それでもアイシャにはなんとなく女性だろうとはバレていた。アイシャの嗅覚が女を見抜いていたのだが、コテージに連れ込んで「よいではないか、よいではないか」と半ば無理矢理にひん剥いた黒装束の下は想定外なほどの美女。美女と美少女のいいとこ取りのような美女に嫉妬よりヨダレが出てきたのはきっと皐月のせい。
「す、素顔は恥ずかしくって──誰も、バラダーさんでさえ知らないのに」
「なんでなんでなんでーっ。それにこのスタイル。ズルい羨ましいっ!」
「ママ、ズルいはおかしいよ」
「関係ないわっ! ええいっ、ミドリちゃん!」
「は、はいぃっ⁉︎」
「寝るわよっ!」
「え? でもベッドはひとつしか」
「女の子にはベッドなんてひとつあればいいのよっ!」
「そ、そうなのっ⁉︎」
「そうなのっ! んじゃ、はいおやすみぃ」
「あれ? は、おやすみな、さ……」
「ふふっ。私、ミドリちゃんとは仲良くやれそうな気がするのよね」
ミドリの頭に“おやすみ三角帽子”を乗せてベッドにダイブしたアイシャはそのまま絡まるようにして寝ていたのだ。それなのに朝食を始める前からそうして倒れ込んで揉んで揉まれての2人にお茶を淹れるルミは、(もうしっかり仲良ししたくせに)などと思うが楽しかったので良しとした。
「わ、私も……その、よろしくね」
「今夜もってことね。楽しみにしててねっ!」
「え? そういうことじゃ、ああみんな戻ってくるから、ちゃんと、ちゃんとしないと」
普段から姿をひた隠しにして声も話し方も無理してやっとどうにか働けているミドリにとってなかなかにツライ状況ではある。
いそいそと座り直す2人だが、男子ズは並ぶ大小のティータイムを見て帰ってきた順にまた脱落していき、出発した時には10時を回っていた。