表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/606

寝る前にはさっぱりとね

「お風呂? それならお父さんがお出かけしてる今のうちにさっさと入っておきなさい」


 母親はしっかりしている。確かに近所の子で小さい頃から知ってるとは言え、年頃の女の子を泊めているのだ。


 アイシャとサヤが言い出すよりも早く、すでにお小遣いを渡された父親は外でサヤの父親と酒を飲んでいる。そこでもきっと自分たちの娘らの仲の良さを酒の肴にしていることだろう。


 しかしこの場合その気遣いはどうなんだろうか。


「昔から一緒に入ってるじゃない。お父さんももういつ帰ってくるか分からないから一緒に済ませてしまいなさい」


 食事が済んですぐに放り出された父親もそろそろ帰ってきてもおかしくない。アイシャたちがパジャマではしゃいでいるうちにそんなに時間が経っていたのだ。





 アイシャとサヤのふたりでお風呂。確かにアイシャは女の子に生まれ変わっているし、幼馴染のサヤとも見慣れた光景ではある。たしか6歳くらいまでのことだが。


 互いに無言で背中を向けて服を脱ぎ、アイシャが先に入れば続けてサヤも入ってくる。


「からだ洗おっか」

「うん」


 湯船に浸かるのは体を洗ってから。そう教えられたふたりは、しかしあの頃は充分だったスペースも今はそんなに広くはないことに気づく。


「こ、これは……どうしよっか」


 サヤにはある答えが浮かんでいるがとりあえずは尋ねてみるのが正解だと思われた。


「そうだね……私たちも大きくなったんだねぇ」


 アイシャにもひとつの答えが浮かんではいるが、過去に意識を飛ばして現実逃避した。


「アイシャちゃん、トリップしても解決しないよ」


 サヤは覚悟を決めたらしくアイシャもそれに応えるように頷く。


「「洗いあいっこしよう」」


 泡立つ石けん。体を這う指先。手にしたタオルが辿る曲線はその後に白い泡を残していく。


 まだ幼さの残る身体はそれでも女の子らしい柔らかさをしていて、自分の身体はこんなだっけとお互いに思うほどだ。


 繋いだ手はさっきの帰り道と同じで、違うのは泡をお互い擦り合わせるところか。その手は足の指の股まで丁寧に洗う。


 何となくテキトーに終わらせると「この幼馴染は普段からあんまり綺麗じゃないのかな」なんて思われそうでふたりとも丹念に相手の身体を洗っていく。


 耳の裏も首の下もうなじも脇も内腿も臀部も。


 サヤが背中に回って手を取り足を取り、気づけば密着したふたりの手にはタオルもなく、ふざけて押し倒せば無言で見つめ合うシチュエーションにもなったが、その先は知識にも記憶にもない。


 笑い合い、恥ずかしがりながらも「昔は──」と盛り上がる。


 そうしてふたりの楽しいひと時は過ぎていった。




「ずいぶん長風呂だったわね、そんなにのぼせそうな顔して……本当に仲いいわねー。お父さんが帰ってくる前に上がってくれてよかったわ」


 童心に帰るにしても、まだ大人にもなっていないふたりのバスタイムは、ドアの外から聞こえるふたりの父親の話し声から察するにアイシャの母親の鉄壁によって守られたようである。微笑ましい娘たちの時間を守り「うふふ」笑う母親にアイシャとサヤはおやすみなさいと挨拶して部屋に引きこもった。



小さな頃は2人でも3人でも。

大きくなると物理的には出来てもパーソナルスペースってやつですかね。え?単純に恥ずかしいだけ?それもそうですねー。

良かったらブックマークや評価をお願いします!

感想が余りなくて寂しいので、そちらもくださると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ