銀ぎつねのパジャマ
「なにこれかーわいー!」
銀ぎつね着ぐるみパジャマに着替えたアイシャは興奮したサヤにもみくちゃにされている。
「なにこの素材。ツヤツヤしてなめらかぁ。それにこのデザイン。狐? こんなにファンシーだっけ? うふふ。ここもこんなに盛り上がって……」
「ちょっ、ちょサヤちゃん。そこはデザインじゃなくって私の……」
ハッと我に返ったサヤは一気に顔を真っ赤にして離れてしまう。
アイシャもさっきから胸のドキドキが止まらない。まさか女の子に生まれ変わって揉まれる最初が女の子だなんて、と。
12歳を迎えたふたりの体型は徐々に女の子のそれに近づいている。触るほうも触られるほうもドキドキが止まらない。
「そんなに良いならあげようか? サヤちゃんと私ならサイズも変わらないだろうし」
150cmほどの身長の2人は太ってもいないしそれなりに引き締まっている。
剣士適性で毎日鍛えているサヤとお昼寝ばかりのアイシャがそうであるのはサヤにとっては少しばかり謎ではあるが。
「さすがにそれは悪いよ。見せてもらえて満足だよ」
「あんなに揉みしだいた上で言ってるとは思えないね」
言われて真っ赤、言って真っ赤のふたりは、またしても別々に悶えていた。
「まあ、あげるっていうのは“作ってあげる”ってことだよ」
「作る?」
この3年ほど、休みの日は例の森で狐を狩ってせっせとスキルポイントを貯めているアイシャはそのストレージ(サヤはアイテムボックスと言っていたが)にこのパジャマの素材であるところの魔物の銀ぎつねをそれなりの量でストックしている。
そしてアイシャは隣でサヤが見守る中でお昼寝士の“パジャマ作成”の技能で銀ぎつね着ぐるみパジャマを作成してみせる。
小さなストレージの穴からキラキラとした光とともに銀ぎつねの艶やかな毛皮と布が中空に現れて徐々にその形を着ぐるみへと変えていく。
毛皮は獣臭くなどなく、むしろ爽やかな森を思わせる香りを漂わせながら布と混ざり合い、柔らかな生地と短く揃えられた毛並みは艶やかな仕上がりのものである。
針と糸はひとりでに動いて作られたパーツをつなげていく。形つくられたそれは動物そのものといっても過言ではないほどに縫い目など目に見えず、かといってリアルな造形とはほど遠いファンシーなシルエット。
最後に、寝るために必要とは思えないフッサフサのしっぽとデフォルメされた顔のフードが出来上がれば完成だ。
「はい、サヤちゃんのね」
そう言ってサヤに手渡されたパジャマはアイシャのものとお揃いで、その手触りも同じ。顔の表情がより笑っている風な気もするが、そんな細かな事より目の前で行われたこと自体がサヤの理解を超えていて固まっている。
「サヤちゃんも着てみる?」
作った手前、試着を勧めるのは自然で仕方のないことだ。アイシャにはそれ以外の思惑などもない普通の発言。
しばらくは手にしたパジャマを見つめたまま放心していたサヤだったが、はっと我に返ったサヤは受け取ったパジャマで顔を半分隠すようにして、上目遣いに、
「……先にお風呂に入ってからにする」
そう、今日はお泊まりだったのだ。試着して終わりじゃない。アイシャは可愛すぎるサヤに身悶えた。
どこからだっけと見返した今。そうこの辺りからでしたね。サヤちゃんの目覚めが表に出てきたのって。