表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

177/607

こうビブラートで……いや、コブシを効かせて……

 翌朝、アイシャたちが目を覚ますと洞窟の中には陽の光が射していて、昨夜に満月が覗いていた天井の穴の先には青空が見えていた。


「じゃあ、いこっかルミちゃん」

「そうね、“ママ”」

「ところでその“ママ”呼びはどうにかならないの?」


 アイシャがここに来たのは偶然で、そんな魔力で咲く花なんてのももちろん知らない。ましてや今にも死ぬって人が現れて花の精霊に産まれ変わっても、そこにアイシャの意思は介在していない。未婚の母になるにしても子どもは普通がいいとか思ってしまう。


「まあ、“アイシャちゃん”でもいいんだけど、“ママ”の方が便宜上いいと思うのよ」

「便宜上?」


 ルミが話すところには、魔族が人間族の世界で当たり前に存在することは難しいかも知れないけれど、広く存在の認められている無害な“精霊”であればその限りではない。


「野良の精霊だと捕まってオークションなんてのが横行してるみたいだけど、すでに特定の人と繋がりがあると分かれば離れずに済むと思うのよ」

「だから“ママ”なんだね」


 それでも精霊の“ママ”になることは普通では無いはずなのだが、アイシャにそんなところの違いなんて分からない。


「分かったよ。じゃあそれで行こっか」

『待ちなさい』

「え? 今のルミちゃん?」

「この身体からあんな野太い声が出ると思う? あ、あー、待ちなさい。無理よ」

「今のモノマネ? へったくそだねー。う、うんっ! あー、あーっ……待ちなさい」

「変わんないし。私の方がまだマシよね」

「えぇー。じゃあもう一回」




『静かになるまで10分かかりました』

「「ごめんなさい」」

「それで、話してるのって……岩大トカゲじゃないもんね?」

『我は──』

(でた、一人称“我”。もうお腹いっぱいだよ、私は)


 頭の中でまたかとため息をつくアイシャの足元が揺れて立っていられなくなり地面にへばりつく。


「なっ、なっなに⁉︎」


 洞窟内が揺れ、天井からは光るミミズや岩のカケラが降ってくる。当たりそうなものは手当たり次第にストレージにドボンする。やがてアイシャの足元に亀裂が入り、大きな(天井のミミズ比)光るミミズが這い出してきた。


『我はアースドラゴン。この山脈の地下に生きる地龍である』

「小さくね?」

「う、うん」


 アイシャの足元にはスコップの先端を刺した程度の亀裂とフェレットくらいのサイズのアースドラゴン、というかミミズが立ち上がり威張っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ