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【番外編】少女たちの会議

「これよりチーム“ララバイ(仮)”緊急会議を始めますっ!」


 アイシャの号令の下、メンバーの全員がリコの仮住まいに集合している。


「はい! リーダー!」

「はいっ、リコさんっ。なんでしょうか」

「なんでわたくしの家なのですか?」

「それはこの寒くて仕方ない日にみんなで集まれる広さのチームメンバーの家がリコさんのところだけだったからです!」

「えぇ……わたくしもチームに入ってましたの?」


 まだ情勢の落ち着いていないギラヘリーの街へと帰っていないリコの仮住まいは、街長の娘らしく広めの一軒家があてがわれている。これは街同士の決め事で有事の際の対応マニュアルに沿ったもので、子どもがひとり暮らしするにはかなり贅沢な調度品で揃えられている。


 そんな広い家のリビングでソファに座り始められる会議の議題、それは一体なんなのか。


「アイシャちゃん、言われた通りネギは持ってきたけどこれは?」

「サヤもか。私は白菜だ」

「カチュワはしらたきなのです」

「あたしは水菜」

「わ、わたしは椎茸ですぅ」

「私は豆腐よ! リコさん、アレを!」

「え、ああそうですね。ちょっと待っていてもらえますか?」


 リコはリビングから出ていき、その間にアイシャが準備に取り掛かる。


「この間からおでんをしていると、やっぱり鍋はしなきゃなって思ってね」


 アイシャの呟きにみんなソファから立ち上がりその場にあったテーブルとソファはすでにストレージに収まって消えている。サヤがさも分からないと言った風に初めてみんなも乗っかったが、それはこのあとをすんなりと進めるためのカモフラージュ。


「鍋といえば調理器具のことだとばかり思っていたが料理の名前でもあるんだな」

「アイシャちゃんしか知らない料理をそう言っていいものかは分からないけどね」




「みなさん、お待たせしました。これがアイシャちゃんからのリクエストの……」


 具材を手にリビングに戻ってきたリコは見たことのない団らんの光景に固まってしまう。


「あ、あの、これは?」

「うん? こたつだよ!」


 長方形のテーブルは脚が短く、みな地べたに直接座っている。ご丁寧に靴を揃えて脱いでいるが普段は土足で歩く床である。そしてこたつと呼ばれたテーブルには何やら布団らしき布が囲んであってみんなその中に脚を入れているのだ。


「ああ、大丈夫。カーペットも私の持ち込みだから綺麗だよ」

「そ、そうですの? じゃあとりあえずこれがアイシャちゃんのご要望にあったお肉……そのお鍋はなぜぐつぐつしているのですか?」


 テーブル直置きの土鍋には具材が切って入れられてお湯が沸騰している。ここにはお水も火もないはずなのに!


「ありがとう! おおうふぅー! なにこのお肉、街長待遇凄すぎない? ああ、出汁も持ってきてたからね! 沸いているのはこのコタツの魔石がテーブルの中だけでなく天板にも嵌められているからだよ。ちゃんとそっちは沸かせられるくらいの出力があるんだよ」


 おでん屋台で既に実証済みの性能だ。焼きそばや焼き鳥の時は直火や炭火を使ったが手間がかからずに運用の利便さは比較にならない。


「さあ、鍋パーティーの始まりだよ」


 リコも恐る恐るアイシャの隣に座りその心地よさに思わずコタツの中を覗いたりする。


「みんな最初はそうなのです。カチュワも初めて入った時は驚きましたのです」

「そ、そうなんですね。じゃあここで初めてなのはわたくしだけなんですね」

「リコちゃん、大丈夫だよ。アイシャちゃんのこの“お鍋”っていうのはみんな初めてだから」


 そしてアイシャのレクチャーによりみんなが牛肉をしゃぶしゃぶして食べ進めていくうち、リコはふと我にかえり


「ところで会議っていうのは……」

「ん? 鍋パーティーのこと? 気に入ってもらえた?」


 みんなで集まって鍋パを、と思ってリコの家を当てにしたが、街の管理であるこの家の使用にあたり、そのまま言って管理者の了承が貰えるか分からなかったためにそういう口実にしたのだとアイシャは打ち明けリコは面食らったが、そういうのも良いものだとその後は楽しく友好を深めた。



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そんなこともあったねと笑い合える青春の一ページがまたこうして刻まれていくのです
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