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よりよい睡眠

 ゴブリンから逃げて、リコたちを助けて、大鬼はやっつけて、マンティコアを呼びつけてなにもかもが有耶無耶になって、とアイシャの中ではなんだか久々の穏やかな時間の到来を感じている。


 リコは既にベイルたちに拉致されて向こうで改めて本当にシャハルに行くのかとか聞かれているはずだ。


「こんなに天気がいいならすることなんて、ひとつでしょうよ」


 みんな外で遊んだり弓の練習してたり食べていたりと出払っていったこの部屋には今アイシャひとりである。


「まずはストレージからベッドだね」


 床に大きな円を描けばそこから天蓋付きベッドがせりだしてきて、そこにはすでにいつもの布団は敷かれていて枕もぬいぐるみもセットになっている。


「着替えも完璧。あとは──」


 既に銀ぎつね着ぐるみパジャマ姿のアイシャは、せっかくだからとお昼寝アイテムの充実を図ろうと考える。


「“深き眠りへの誘い”、オルゴール作成」


 ストレージから木材と金属片が現れては勝手に割られて削られ磨かれ組み立てられる。


「マイムちゃんの言う通りに魔術なのかも知れない。適性職種の技能って括るのは簡単だけどこの光景は魔術とか魔法とかいうやつでしょうよ」


 出来上がったオルゴールは机の上に置いておく。


「“安らぎと慈しみの友”、抱き枕作成」


 コカトリスの羽毛に普通の布、森で採取してあった香草から優しい香りのものがピックアップされてアイシャ大の抱き枕が出来上がる。布にはアイシャがあまり見たことのない花の模様が描かれている。


「『彼女』の欲しがった抱き枕とは違うけど、これで我慢してもらおう。そうでないと私はもう後戻り出来なくなっちゃうよ」


 頭に“おやすみ三角帽子”をかぶり、さあ寝るぞっと言うところで扉をノックする音がした。


「はいはーい、どちらさま?」


 アイシャはこの部屋にくるのはいつものメンバーかベイルたちあたりだろうと返事を待たずに扉をガチャリと開けて相手を迎える。


「ごきげんよう、アイシャちゃん」

「ご、ごきげんよー?」

「少しお話がありまして……入ってもよろしいかしら?」

「どうぞ」

「ありがとう」


 まさかリコがこの部屋にまで来るとは思ってなかったアイシャ。断る理由もないので部屋に入ってもらい椅子を用意する。


 ガチャ。


(なぜ鍵を閉めた)


 客であるリコの手によってこの部屋は密室となってしまった。机と椅子を2脚、並べて2人は向かい合って座る。


「わたくし実は──」

「リコさんは! ちゃんと男の人とお付き合いした方がいいと思うの! 私たちみたいなただれた関係になっちゃダメなんだよ!」

「──は?」


 アイシャは心の中でワクテカする『彼女』を抑えつつ、リコを牽制したつもりだったが、どうやら先走ったみたいだ。



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