【番外編】アイシャとサヤ 14歳 開きかけのつぼみ
(私の背中にくっついているのは──?)
外では今カチュワが見張りの番だったはず。アイシャたち女の子組だけで固められたテントの中、カチュワが出て行く気配と入れ替わりで入ってきたこの子は暗闇の中、アイシャの隣にきてアイシャを抱き枕にしだした。
肩を、腿を、胸を這い絡める手指と脚。
その手つきにアイシャは記憶からこんな事をしてきそうな子は──と絞っていく。
(というかカチュワちゃん以外全員だった)
全然絞れていない。それでもアイシャはその体格や匂いなんかを頼りにして、誰だろうかと考える。
ぎゅうっと抱きしめられ感じられる息づかい、伝わる体温、背中に感じるサイズ。
(この山はサヤちゃん)
妙な特技を身につけてしまったアイシャはやはりカチュワ以外のそれを全部知っていて上から下までの曲線はまるで3Dで再現したかのように頭にインプットされている。
「アイシャちゃんのことは私が守るの……私がアイシャちゃんを1番好きなの……」
誰に言うでもないサヤの寝言は、アイシャに小さな頃からずっと一緒の幼馴染である事を改めて想い起こさせた。サヤの心の奥の決意とともに。
アイシャは自然な感じで寝返りをうち、サヤを抱きしめる。
明かりが入れば目の前にはサヤの顔があるだろう。
「ありがとう、サヤちゃん」
アイシャもサヤに想いを伝えて安らかな眠りに入った。
「アイシャちゃん、交代だよ」
フェルパに起こされアイシャは起きる。お昼寝士の彼女は寝る時はストンと寝られて起きる時もスッキリ目覚めがいい。何より“寝ずの番”は使い方によっては目覚ましのようにも使える。横にいるサヤを起こすことなくすんなり起き上がる。
テントの入り口から微妙に差し込む青白い月明かりがアイシャとサヤの肌をうっすらと照らす。
「なんでまた2人とも裸なの?」
こんなところでまで、とフェルパは呆れる。
アイシャでさえいつの間にと呆れるしかない。
どうやら想いをこじらせた幼馴染は寝ながらに脱いで脱がせる技能でも手にしたようだ。
「ベイルさんが見回りにきても困るから着せておこう」
他に女性陣もいるからそんな事はないのだが、それでも野営ですっぽんぽんはまずい。アイシャはサヤにショーツを穿かせてブラもちゃんとつけてあげてシャツを着せるために身体を少し浮かせると、サヤはアイシャの首に巻き付いてきた。
「サヤちゃん、起きてる?」
「ZZzzzz」
「この世界で初めて聞いたよ、それ。ていうかやっぱり起きているよね」
「……てへ?」
「どこから?」
「(というかカチュワちゃん以外全員だった)あたり?」
「一度も寝てないし私の脳内だよそれ⁉︎」
「アイシャちゃんのことならもう何でもわかるよ」
「そこまでいくともはや超能力だよ」
「77回」
「なにそれ」
「さっきアイシャちゃんに揉まれた回数」
(なるべく平静を保っていこう。私は寝起き、私は寝起き──)
「出たな筋肉モヒカン」
サヤの3Dモデルは更新されその触感も温もりもまだその手の中にあった。