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見張りの6人

 つまりこの世界にゴリゴリの人が少ないのはそういう事で、太っている人がいるのもそういう事で、ひんぬーはひんぬーなのねとアイシャはちゃんと理解できた馬車での往路。


「他2台の馬車はそれぞれ少し離れて野営する。一ヶ所で集まって守りを固めるのも手だが、前と同じでまだ子どものお前さんたちを危険に晒すわけにいかないからな。そのため離れて警護してくれている」


 なのでここにはベイル以外女(御者まで女性だった)という一見すると少女を集めたハーレムが形成されている。


「やっぱり世紀末ひゃっはーな人じゃない」

「良くわからんがいい意味でないのだけは伝わってくる」


 パンとスープの食事をすればあとは交代で見張りながらの就寝時間だ。


「お、あの時のぬいぐるみじゃない。貸してくれるの? ありがとう。んふー」


 アイシャが取り出した“呪い人形のカーズくん”を抱いてマケリは嬉しそうに焚き火の前に座っている。


 その隣にいるのはフレッチャ。今回はサヤたちの提案で見張りに参加することにした。すでに近い未来に結成されるのが見えているパーティでの活動を前に経験しておきたいという考えだ。


 ベイルは多少渋ったが、もともとマケリと2人が交代でするつもりだった事だ。話し相手が出来たと思えばいい。その上でアイシャたち6人は時間を短くそれぞれが順番に体験することとした。


「なあマケリさん、御者の女性のリオさんは見張りには参加しないのですね」

「そうね。だって彼女、私たちが座っておしゃべりしている間もずっと仕事してたでしょ?」

「なるほど。それもそうですね」


 やがて時間は経ちサヤの番になる。


「フレッチャちゃんとは仲良くやれました?」

「サヤちゃんともフレッチャちゃんとも仲良しになれてたと思ってたけど違ったのかな」

「ううん。なんていうか初めてのことなんでどんなだったかなって。もしかしたら緊張して全然喋んなかったりとか」

「あー、これが初対面なら、もしかしたらそうかもね。私も人見知りなところあるし」

(絶対嘘だ)


 サヤはマケリについては最初から欲望に素直な面ばかりを見ており、そんなはずないと思うが口にすることはなかった。先輩でいずれは上司かも知れない相手だ。時間まで楽しく話してカチュワと交代する。


「ああ〜何この子可愛いぃ。カチュワちゃんていうのね? カチュワちゃん可愛いー」

「やっ、やめっ、スキンシップが激しいのですよ⁉︎」

「んふふー!」


 やはり人見知りなどというのは嘘だったのか。すでに挨拶も済ませていたはずなのに、初対面を装い過剰なスキンシップに走るマケリ。そんな状況はベイルとマイムが交代に起きてくるまで続いた。


「なんだか疲れてそうだな。2人ともさっさと寝るといい」

「マイムちゃん、あとよろしくなのですよぉ」

「うん、おやすみ」


 ベイルが出てきたことでマケリもようやく眠りにつける。そして静かな野営が始まる。


「全然喋んないのな」

「あたしは大体こう」

「……」


 もともとお喋りではないマイムは、魔術のことか女の子のことくらいにしか興味がない。物理戦闘職でおっさんのベイルと話す話題もなく焚き火を見つつ居眠りし、フェルパと交代するまで横になっていた。


「アイシャちゃんも言ってたけど、わたしもおっきな人はかっこいいと思いますよ」

「そりゃどうもだ。フェルパは戦いはしないのか?」

「わたしはね、アイシャちゃんに守られるの。それから2人はこう見つめ合って──きゃあーっ」

「お前もかなりキワモノだな」


 マイムに引き続きフェルパも少し変わった子という印象を受けるベイル。そもそもこの子に至っては戦闘職ですらない。何故、と思うがこのあとに謎の塊みたいなのが待ってると思い、フェルパの趣味の話などを聞きながらそいつが起きてくるまでを過ごした。


「でたな筋肉モヒカン」

「お前はブレねえなぁ。それに俺はずっとここにいた。出てきたのはお前だちんちくりん」

「ぐぬう……」


 やはり普通ではない、と。しかしそれだけに何も気兼ねすることない相手でもあるのかも知れない。


「──なあ、アイシャよ」

「なに? 世紀末モヒカン」


 焚き火に木をくべるベイルはアイシャの態度が変わらないことに安堵しているようで微かに笑っている。


「俺は半端者だ。だからステータスなんかは低いし見てくれもこんなだ。だけどオールEで見てくれも育ってないお前はじゃあ何なんだ?」

「それが解明出来たらAを脱する事が出来るのかな」


 やはりふざけて返すアイシャは、しかし真剣な顔のベイルに対して「参ったよ」と呟き空を見上げる。


「私も頑張ってるんだけどね。ステータスの表示は変わらないんだ。答えを知ってそーな人もいるんだけどさ。聞くのが躊躇われるっていうのかな」

(どうせあいつもどこかに居て今も見てるんだろうか)


 静かに話を聞くベイルにアイシャの言葉の意味は伝わってはいないだろう。だからそれはただの独り言でしかない。ベイルもアイシャに本当に答えを求めてもいないはずである。


「探して見つかったら教えるよ」


 影の人物は、関与していないとは言ってたけど分からないとか知らないなんてことは言ってなかった。


 だから答えはきちんとあるはずだ、と。



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