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この年のアイシャの最初の成果

 滑り落ちたカチュワは再びお昼寝館にやってきた。


「アイシャちゃんんん。さっきのはどうなってるのぉ? なのですぅ」

「無事そうでよかったよー。まあ堅そうだから大丈夫だとは思ってたけど」


 アイシャはそう言ってどんっと丸く大きな板を地面に突き立てた。


「んん? これは何なのです?」


 カチュワはアイシャが突き立てたそれを眺める。


「カチュワちゃんの大楯はさっき私が壊しちゃったからね。これはその弁償だと思ってよ」

「これを弁償で私に……?」


 その大楯は確かに盾の形をしてはいるが、表面はまるで岩のような質感。手で触れればわずかな凹凸を感じられる。


「私の手作りで申し訳ないけど、ね」

「こ、これをアイシャちゃんが作ったのですか⁉︎」

「うん。私のクラフトの技能でね」


 アイシャはこの世界の住人が必ずしも適性に縛られている訳ではないと知った。ならば、とあちこちを回る内に武器防具を扱う工房棟でその技能に触れていた。


 工房棟で出会った人から「材料と道具を手にすればその完成形が頭に浮かぶ」と教わって試せばギルドカードのスキルツリーが変化して防具職人と武器職人があったので両方を取得した。


 そのあとはどうするか迷ったが、カチュワが消えていったあと、防具職人を解放し、中級まで取得したというわけだ。


 ただ困ったのは、アイシャが技能を行使するとお昼寝士のクラフトと同じでストレージから直接材料が出てきて自動で作成されたことだ。


 お昼寝士と違い他にも居る職種でそれはまずい。今日は盾をプレゼント出来たらいいなと思っていたのが既にあるのだから、この異常なスピードと作成プロセスは人に見せるわけにはいかない。たとえフェルパであっても、だ。


「手作りでも嬉しいのですよ。よっと……見た目よりも軽いし何より強そうなのです。ちなみに材料はなんなのですか?」

「あー。……あのときの岩トカゲだよ」

「へえぇ。こんな強度があるのですね。知ってるですか? 岩大トカゲの外殻だとかなり強くてレアだって話なのですよ。それには届かないかも知れないけど、カチュワにはそれ以上の価値があるのですよ」


(言えない。実はその岩大トカゲの外殻だなんて言えない。なんか嫌な予感してちっちゃい方ということにして良かった)


 あのとき、フレッチャたちにトドメを刺されて落ちてきた岩大トカゲから剥がれた外殻だけはストレージに収めていたアイシャ。


 倒してスキルポイントに捧げた場合は千切れたものや血液までもが消えてしまう。じゃあ先にストレージにしまった場合は? と思い付き試したことが成功したために外殻だけはまだ少し手持ちがある。


「そんなにいいものなの? 岩大トカゲって」


 こういう機会にこそ知識を補填しておきたいアイシャ。


「別名レッサーアースドラゴンって言うくらいなのです。小型の地龍ってことなのですよ。だから岩トカゲと似てますけど実は別物で分類もドラゴンらしいのです」


 お昼寝ばかりで共通授業すら聞いていないことの多いアイシャでも知っている。ドラゴンの脅威とその価値。


「ドラゴンなんておとぎ話の世界だよ」

「なのです。まだドラゴン素材の防具なんて見たことないのですよ」


 その手に小型地龍の盾を持ち、2人は「いつか見れるといいね」と笑い合った。


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