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不可解犯罪勃発事件簿。  作者: 武者小路霧雨。
6/6

真相に近づく。3



※この物語はフィクションです。

実際の人物、団体などには

関係ありません。


※この物語には若干の性描写、

グロテスク表現、暴力表現が含まれております。

苦手な方はご注意下さい。


※(おことわり)

この物語は、私自身が、自分のYouTubeアカウントにて一部動画化しております。


※挿絵の挿入の仕方、わからないので

連携したTwitterに上がってます!!笑笑


-----

不可解犯罪勃発事件簿。6

-----


??「いたい、いたいよお」


安藤「ーー所詮、遊戯の間に勝手にできた子供だもんな?お前はな?お前なんぞ世間体に睨まれるから生かしておいているだけなのであってどうせいらないんだからな。お前の母親も勝手に産みやがって。ああ、お前が賢い娘なら役に立っただろうに、残念ながらお前は馬鹿だ。大馬鹿だ。

あいつも勝手に産みやがって…本当に"出来"損ないだよ!!」


??「ーーーッッ」


このひとがなにをいっているのか、わたしはよくはわからない。ただ、ものすごくげひんなことをいっているのであろうことは、なんとなくわかった。


??「ごめんなさい…わたし、もっとがんばるから…おぼえてられるように、がんばるから………


『オトウサン』、

おねがい、ころさないで」


✳︎


よる、ねるまえ。


わたしはにっきをつけます。

あのひとは、わたしの、『おとうさん』



そして、ねるまえにれんしゅうします。


かがみのまえで、


「お」

「と」

「う」

「さ」

「ん」



ただ、あのひとにむかって、こう、はつおんするだけで、あのひとは、とてもうれしそうなかおをする。

わたしがこれができないと、あのひとはとってもおこる。かなしむ。

そして………


いつもわたしと、だれかをけなす。


そして。


わたしはどうしてもかれを「けす」。


-----

不可解犯罪勃発事件簿。6

-----

登場人物


◎人物紹介〜


・日暮里源介(26):青井警察官。学生時代は、取り巻くものが影響して、人の心が慮れない少年だった。弥夜と婚姻関係。


・久遠寺弥夜(20):造人×人間。

安藤総理の隠し子。源介と婚姻関係。


・仁比山紅葉(26):東京テレpo」のアナウンサー。源介と三島とは、学生時代の顔見知り。


・藤崎 周平(30):研究員で弥夜の育ての親。安藤とは親友だった。昔Steam laboの研究員。

造人計画も、本当は彼のアイディアだったが、安藤の裏切りによってその計画を悪用されてしまう。

常に怠そうにしているが切れ者。好きな飲み物はオレンジジュース。


・藤崎 (えん)

・藤崎 (かい)

藤崎周平の双子の妹(23歳)。心理学に長けている。苑の方は底抜けに明るい性格の持ち主。快の方は沈着冷静。大きい瞳にサラサラの紫ショートヘアがトレードマークで見分けがつかないが話せばどっちだかわかる。


・矢井田馬セトリ(23):元Steam Laboの工作員(半造人)。独自の心理学の知識を使用して、そこでの生活を生存して終える。現実世界では家電量販店「長谷川ハッセー」の工場で働いている。元々目の色素が薄く、緑眼持ちである。


・安藤雄一郎(45):現内閣総理大臣、兼、Steam labo研究所長。

藤崎とは昔親友だった。藤崎の研究『造人計画』を悪用した張本人。


・晴明

安藤に仕える造人。



・黒岩 マコト(??):Steam laboの『工作員』。訳あってテレビ局『東京テレpo』に潜んでいる。和多留の血族?その情報はいかに。


・黒岩 和多留(29):テレビ局『東京テレpo』の次期社長。パワハラやセクハラで有名。


・絮源おりゃんせ(23):仁比山の部下。

仁比山が休んでいる間に花形アナウンサーへと昇格してしまった。

前回大活躍ガール。


・仁比山秋月:仁比山の7歳上の兄で故人。

Steam laboの秘密を一部暴露したせいで殺害される。


・日暮里 陽介(にっぽりようすけ)

故人。源介の3歳下の弟。

生きていた頃は兄・源介の世話係として、常に源介を支えてきた。


・太一

造人。三島亮平の祖父、三島清一郎を(マスター)とする。

だか色んなことから三島家とはぐれてしまい、現在は(マスター)のいない状態である。


・久遠寺摩耶

久遠寺弥夜の母親で、造人。元は人間だったが安藤総理と婚姻関係を結んだことによって、「利用」された。

現在はなぜか、16歳の姿に変換させられ、Steam laboの中に閉じ込められている。



〜参考資料〜


・解離性健忘: 心的外傷やストレスによって引き起こされる「記憶障害」。

(参考: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/10-心の健康問題/解離症/解離性健忘)


・7秒間: https://mdpr.jp/column/detail/2784143


・Steam labo:研究所。

かつて藤崎もそこにいた。今や安藤の手によって悪行に使われている。


・工作員:

完成系の『完全体』、『未学習』含めた、Steam Labo 『造人』の正体。


・謎の紙切れ:

工作員の情報が書いてある、破れた紙。

前巻で、三島と絮源の活躍により、藤崎の手元に。




〜これまでのあらすじ〜


今からX年後の日本。

『犯罪』の増加による『治安の悪化』が、この国を網羅していた。


「…一体どうしたらいいんだよ」


政治家も頭を抱える中ーー


『こうしよう!!!』


立ち上がったのは、『研究家』。



人間を『守る』。そして、『代わる』ーーー完全人間型AI『造人』。



「マスター(ご主人様)のかわりに、私達がお守りします。」



研究者が作った、『造人』が、日本を守る存在となった。

人間でもなく、造人でもない。彼らをを従え、研究者達は蹂躙する。そしてーーー

今や日本を統べる者は、


『研究者』。




彼らのおかげで、日本は安泰かと思えた。ーーしかし。

一級研究者兼、内閣総理大臣「安藤総理」。

彼の企みにより、造人達は、侵略のために『暴走』する。


造人達の暴走を止めるために施設『Steam labo』に乗り込んだ日暮里源介は、そこでであった安藤の娘『久遠寺弥夜』という半造人の娘と出会う。

この暴走を止めるために、人間を信じきることが条件という彼女と、婚姻関係を結び、事件解決に向かう。………


〜前回のカンタン♡なあらすじ。(源介turn)〜


あ、どうも。

一応この物語の主役…?の、日暮里源介だよ。

こんな形で読者の皆様と触れ合えるなんて思ってもなかったぞ。

とりあえず作者の馬鹿が全く更新してなかったからなんとも言えねえ…悪かったな、作者も人間。…

…それなりにリアルの方も生きていかなきゃなんねえからな。面目ない。


…ってなわけで!!!


俺が今から簡単に、「前回のあらすじ」を解説しちゃうよ。


前回。


Steam laboの第一研究所に乗り込んだ俺ら一行。

しかし、三島亮平と絮源おりゃんせが、俺らとは違う別の部屋に、閉じ込められてしまったんだっけ。


なんやかんやで見事、脱出できた彼らは、俺たちと合流…最深部のカプセルに閉じ込められた造人『久遠寺弥夜』を発見する。(彼らがそこでで見つけた、『謎の紙切れ』から、『黒岩』がどうやら怪しいらしいと判断もついたんだっけな。)


この弥夜ってやつ、安藤総理の実の子供で、この国の造人計画を停めることができるであろう、貴重な存在だと分かったんだ。


彼女を助けたとたん、Steam labo第一研究所は爆破した。


逃げ出した一行は、怪我や疲労、藤崎の家に転がり込んで治療を受けることに。

昏睡状態を経ながらも、治療して全員回復!!ってな感じだったな。


んで。

俺はこの研究所が爆発・弥夜を誘拐した、という『重大事件』に関与してしまったという訳で、現職である警察官を退くことになる。いわば無職してやつだ。最悪だよな。


そのかわり、謎の少女…


久遠寺弥夜とタッグを組んで、事件解決の道へと進むことになった。


何も知らない人間たちを守るため、この不可解な計画を止める。


そして。


俺の弟『日暮里陽介』。

彼が過去に死んだ理由と、色々関係があるのかもしんねえ。………


………。

すまん。感極まって黙っちまった。


てなわけで探りを入れてくよ。

準備はいいか?

じゃ、行くぞ。


…我ながらすごい人生だよなあ。


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不可解犯罪勃発事件簿。6

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一章「リアル育成ゲーム。」

源介turn



ーーー婚儀後日。


日々は粛々と進んだ。




俺、日暮里源介と造人(半分人間)の久遠寺弥夜は、晴れて夫婦(めおと)となったのだった。


藤崎から聞いた話だと、どうやら弥夜は妻という立ち位置だけでなく、俺が危険に晒された時に『守護してくれる』存在になるらしいのだ。


「え!?それって俺がこれから危険に晒されることがあるってことだよなぁ!?」


俺が藤崎にそう言って

一触即発状態になったのはさておき。←


まあ、その話はあとにする。


源介「あれは一体何なんだろうな」


そう。

弥夜と婚姻するにあたって、

『注意喚起』があった。



「弥夜と7秒間、目を合わせてはいけない」ーーー



弥夜の目は、常に特殊な光線が発せられている。力圧がかなり強いから、7秒見つめ続けると、見つめた相手は『失明』する。


なぜ7秒間なのか、理由は全然わからないが………

婚儀の時は応急処置として、安全フィルタのついたカラーコンタクトをつけてもらったから、何も心配はいらなかった。


源介「…」


婚儀の時、といえば。


源介「なあ、弥夜」

弥夜「はい?」

源介「………それじゃ動きづらいだろ」


弥夜は俺のせいでかなりのショートになってしまったんだっけ……0。


弥夜は安藤の実験のために、数年間もカプセルに入れ込められていたから、髪の毛がまるで伸び放題だ。平安時代の貴族かよ!?ってほど長いものを引きずって歩くもんだから、見てて首が折れそうだし可哀想。

だからとりあえず伸びまくった髪の毛を切ってやった。


しかしながら俺はどうやら『センス』というものを持ち合わせていないらしく、力の入れ具合によりかなり斜めにカットしてしまったのだ。

髪の毛ってしっかり抑えると上に上にとずれていくのな。ていうか全体像を見ながら切らなきゃならないって難しくね。

一点集中した結果かなり斜めに切っちゃった→とりあえず一番短い髪の毛に合わせた→めっちゃショートになっちゃった→やべえやべえと慌てて何とか体裁整える→結果どうとも何にもならず→


仁比山「…いやなんでそこまで短くしちゃったわけよ!?」


…ことの顛末に偶然居合わせた仁比山が、「ちょっと貸してみなさい」と、綺麗に整えてくださった(平伏)。

自分のセンスのなさに驚愕した。(あれ何の話してたんだっけ)。




はい。回想はここまで。


現実(リアル)

何が起こっているというとーーーー





源介「…同衾て」


藤崎「そう!同衾!DOU☆KIN♪

何も言わない空間をベクトルするのも、そう夫ぉァ!!!………お前のシ・ゴ・ト・だ、ズキューーーン!!!!」


源介「…何盛り上がってんだお前…?」


藤崎「とにかく!旦那のお前がしっかりせい!一応婚姻関係を結んだとは言っても、信頼関係ってのが生まれないと弥夜はお前も敵とみなして光線ぶっぱなってんだから」


源介「だから同衾しろというのは意味不明なんだが…」



藤崎「夫婦ってのは滞在時間が長ければ長いほど、信頼関係ってのは生まれるだろ?」


源介「いい意味でも悪い意味でもな」


藤崎「だから少しでも弥夜と会話する時間を増やしてもらうってことさ!」


源介「…効率よく信頼してもらうには」


藤崎「1日ワンタッチ方式!」


源介「は…!?」


は。


藤崎「『夫婦モード』には特殊な設定が生まれるんだ。

一日一回、相手の体に触れるだけで、信頼関係というものが生まれる。手を握る、頭を撫でるなど何でもいい。とにかく普通の円満な夫婦がやっているような動作を弥夜にしてあげるんだ。

ちなみに………


どの辺タッチするかはまかせる☆」


源介「…だからなにニヤニヤしてんだよ!!!

お前絶対RPGでヒロインと早々に結婚して同居から先を楽しむタイプだろ。レベル上げや新たなフィールド開拓をせずに延々と畑耕して村の中で伴侶と暮らす。そのままスローライフ楽しむよ的な!」


藤崎「なっ!!!別に俺はそんなことはしねえよ!!!冒険も楽しむしレベル上げだってする!!!じゃないと先に物語が進まねえじゃねえか!!!とりあえず勇者にならねえと嫁さんのいるフィールドにいけねえだろ体力問題的に!!歩くだけで倒れるレベルじゃ本末転倒よ!!!!!」


源介「…やっぱりお前目的が変態じゃねえかよ。

ま、いい………

弥夜の信頼度合いってどうやってわかるんだ?」


藤崎「左腕を見ればわかる」


源介「左腕…?」


弥夜「これです」


源介「…うお、なんだこれ!?」


藤崎「弥夜の腕には、スライド式の蓋が搭載されてある。そこを開けてみるといい。

弥夜の体温、脈拍、血圧ーーー

現在状態の測定値が、全て、そこに『表示』されている。

そのほかに、信頼度合いが1〜10まで表示されているシステムさ」


弥夜「ちなみに今は1ですねー」


源介「夫婦になったのに?」


弥夜「まだあたしに妻っぽいことしてないでしょう?」


源介「………リアル育成ゲームかよ」


ゴイス。


弥夜「かなりまどろっこしいと思いますが頑張ってください旦さん愛してますズキューン」


源介「…が、がんばるズキューン」


弥夜「ま、もちろんあたしの役目も果たさせていただきますよ。あたしの役目は旦さんの命を守もZ z z………」



源介「えっ」


寝やがった。


藤崎「あーごめん。弥夜には一日稼働できる制限時間があるんだ。この子はカプセルから出てきてまもないから、こうして体力温存のため、眠ってしまうんだな。」


源介「マジかよ…?

そんな機能あんのかよ?」


藤崎「人間社会に慣れてないんだろ。弥夜はかなりの疲労を抱えてる。

…ちくしょう、同衾させられなかったじゃねえかよー。その瞬間見たかったのに」


源介「………まだその話引きずってたんか」


恋愛脳め。


源介「あ、そうだ」

藤崎「ん?」

源介「なんで7秒なの?」

藤崎「なにが?」

源介「弥夜と目を合わす瞬間。」


地味に気になってたことをきく。


弥夜の目は常に人間にとって危険な光線を放っているのだが、完全に相手を駆逐するには『7秒間』、瞳を合わせなければならない。

だがその『7秒間』ってなんだ?長いような短いようなーーー

とにかくどういう基準なんだか、明確にしておきたかったのだ。


藤崎「まあ…言うなれば

人間が恋に落ちる時間なんだ。

異性を並べて7秒間、互いに見つめ合いをさせれば、恋愛感情が生まれる。

弥夜の目の光線は、その研究をもとにしている。」


源介「うん?

…いやちょっと待って。

前巻最後の弥夜のセリフはどういう………?」


藤崎「ああ、あれは何となくそう言えば巻末の締めくくりとしてかっこいいかなって思った弥夜の計らいだろ。運命の相手だからうんたらかんたらって話じゃなくて残念だったか?ごめんな物語ってのは一手間かかってんだ純粋くんガハハハハ」


源介「………裏の人は苦労しているってことがよくわかりましたよ先輩…」


とりあえずメタ発言ガンガンなので控えよう。


藤崎「あ、そうだ、これだけは話しておきたいーーー

お前、弥夜の生い立ちをしらんだろ」


源介「あ、…ああ」


藤崎「夫婦なら知っといて欲しいな」


源介「なんだよくしゃみが変とか考えだすとウロウロし出すとか寝ると白目剥いちゃうとかか?」


夫婦知っておいて欲しいシリーズ100的な。(ドン引き回避策)


藤崎「そんなんじゃねえよ。

…弥夜は、虐待を受けてたんだ。

それも、安藤(ヤツ)から」


源介「…え?」


藤崎「弥夜は生まれつき、脳に疾患があってね…俺らみたいに、記憶を保持することができない」


源介「え?…それって、俺らだって同じじゃねえの?俺だっていちいち昨日のこととか覚えてねえし、ましてや1週間前の記憶なんてほとんどねえよ」


藤崎「会った人物や出来事くらいは、覚えてんじゃねえか?」


源介「まあね」


たしかに。


藤崎「弥夜は、そっくり忘れちまうんだ。

出来事も。誰とあったかも。

………『解離性健忘』

弥夜は、それを発症している。」


源介「…かい…なん?」


藤崎「解離性健忘(かいりせいけんぼう)。…これはな、何らかの心的外傷やストレスによって引き起こされる記憶障害のことさ。………

ストレスのせいで、当人にとって重要な情報が思い出せなくなるんだ。それが、物心ついた時から既に、弥夜の脳内で発生していたーーー


安藤の気持ちからすると、父親である自分のことを覚えていられないのは、かなりの悲しみだったんだろう。

その結果、安藤は弥夜を人間として扱わず、『実験体(もの)』として扱った。

常にカプセルの中に閉じ込められ、見張られ、研究される日々。…そんな日々を、弥夜は送ってきたんだ。


…そんな日々の中ーーー

弥夜の『母親』も、その実験に加担した」



源介「…母親…?」


藤崎「久遠寺摩耶(まや)。弥夜の母親。…安藤とは、同じ研究所関連で一緒になったんだろう。


彼女は、弥夜の病気の発症の責任を背負わされ、安藤から殺された。」


源介「えっ?殺された…?」


藤崎「それが実験に加担するってことさ。どういう流れかは知らんが、自分から了承したんだ。

…母親は粉々に砕かれ、練り込み、原型を留めないくらいに機械でめちゃくちゃにされた。


砕かれた母親の体は、弥夜の養分となった。弥夜に繋いだ機械に流し、全て弥夜に取り込ませた。

脳に母親の大脳を組み込み、健忘性を発症しないように、弥夜の体に細工をした。

つまりーーー弥夜の記憶を保持しているのは、弥夜の中に生きている、『母親の細胞』なんだ」


源介「…」


藤崎「母親を取り込んだそのあと、弥夜の記憶を司る部分に手を加えられた。脳内に、工作員である彼らの重大なメモリーを刻み込み、工作員以外の人間が簡単に近づけないように光線を発する目を搭載した。

安藤にとって弥夜はやっと、娘としての価値がーーーこれで出来上がったんだ。

これでやっと、娘を愛すことができる。ーー何の変哲もない、幸せな家族のように」


源介「…酷いやつだな」


藤崎「おや?」


源介「…なんだよ」


藤崎「お前もわりと人生に不貞腐れてた方じゃねえか。急にどうした??正義感でも芽生えたか??」


源介「…うるせぇよ」


俺はそこまでやさぐれでない。


藤崎「とにかく、この弥夜の生い立ちは話しておきたかったんだ。

お前の中で弥夜が、まだどんな存在か確定してないだろ。

これからお前と、弥夜の協力が、この国全体を守ることになる」


源介「…そうだな。ありがとう。………………


…………あ!!!!!」


藤崎「どうした?」


源介「いまここに弥夜がいることは、安藤の奴らには知られているのか?」


藤崎「?…なんでだ?」


源介「だって危ないんじゃねえか!!!それたけの大容量記憶が弥夜の中にはいってんだろ!?その記憶装置が、持ち出されたーーーー

となると!

安藤や工作員たちにとって、かなりの大損失じゃないのか!?」


藤崎「どういうことだ??」


源介「今弥夜を探してる、となると……………


こっちに探しに向かってる!!!」


藤崎「…考えてなかった」


源介「バッキャローーー!!!」


藤崎「とにかく俺らがやるべきことはーーー「ちょっと藤崎!!!!!」………ゑ?」



仁比山「あんた、一体…

一体どうしてくれんのよーーー!!!!!!!!」





邪魔が入った。

-----

第二章「仁比山解雇予告?」


仁比山「…………

…………は???

ど、どういうことですかディレクター!?」


ディレクター「だーかーら!

仁比山ちゃんの企画だったけど、絮源ちゃんにやってもらうことになったからよろしくってこと!!!」


絮源「いやー、なんかごめんなさい」


仁比山「いや、ごめんじゃないわよ何あたしが休んでるうちに仕事勝手に取ってんのよ!!!」


絮源「人聞きの悪いこと言わないでくださいよぅとったわけじゃないですって。たまたま代役でアナウンサー入ったやつがヒットしちゃって。なんだかあたしの話術のテンポが良かったんですって。視聴率も良かったらしいからこのまま仁比山ちゃんの番組入っちゃおうかってことなって」


仁比山「…下剋上………

まだ今でもあったのか………」


ディレクター「…とまあそんなことだから仁比山ちゃんも少し休んでていいよー」


仁比山「いや休んでていいよー、じゃないですってバカ言ってんじゃないわよ!!!大体元々あたしの仕事だったわけじゃないですかこの10件!!!」


絮源「うわー資料たたかないでくださいってええ」


ディレクター「そうは言ってもねえ………絮源ちゃんが代わりに入ったやつ、結構視聴率良かったんだよー…正直言って仁比山ちゃんがおんなじような企画勤めた時よりも………仁比山ちゃん、可愛いし話術も上手いけどそろそろ視聴者は新入りを期待してるんじゃないかなァ…?」


仁比山「…え…それって………やんわりとあたしに『表舞台から去って、裏方の台本作りをやれ』と言ってる………?」


ディレクター「………とりあえず今日はもう仕事ないから、せっかくだしもう一日くらい休んだらどうかなー?残ってたでしょ、まだ、有給。」


仁比山「も、もう死ぬほど休みました!!!」


ディレクター「悪いけど本当にもう決まっちゃった話なんだよー。ほら、次の仕事に遅れるから、そこ、どいて」


✳︎


藤崎「あははははははは」


仁比山「笑ってんじゃないわよ!!!!!!!」


藤崎「悪い悪………いててててててて耳引っ張んなッッ!!!」


仁比山「あんたがあたしを休ませて引き留めたせいで仕事無くなっちゃったじゃない!!!!現代社会は余裕がないのよ、休んだらその分誰かに仕事取られるのよ!!!!どうしてくれんのよほんとにいいーーー!!!」



あのあと。

あたしはしっかり復職しーーー


しっかり立場を『失った』。


現代社会。


それも、放送業界隈というのは、とにもかくにも『休みがない』。


いやもちろん、有給を取得の権利は誰にだってあるのだが、それが続くと"社会死"する。

席を空けばその分誰かが仕事を奪う、恐怖のシステムが待っている。というわけで結局休めないのだ。有給積極消化運動期間開催キャンペーンとかでもしない限りみんな休まないしなんなら休出とかしてる。下剋上のためにみんな必死なのだ。



仁比山「〜〜ッッ藤崎ッッ!!!あんたが引き留めたせいよ!!!」


藤崎「エエエエエ俺のせいかよ!?!?」


仁比山「あんたが

『仕事に復帰するのはもうちょっと後にしろ』ってずっと引き留めたんじゃない!!!!!!」


藤崎「いやでもお前自分から喜んではいそうですかって休んでたじゃんかよ!!!」


仁比山「豪勢な食べ物がタダで毎日食べられて嬉しくて仕事のことを忘れてたっていうのは棚上げさせてよ!!!!!」


藤崎「は、はあー!?!?」



実質、あたしは。


席はあるものの仕事が皆無のいわゆる『社内ニート』に化してしまったのだ。


せっかく新しい企画の取材とかどんどん入ってきてたのに。アナウンサーの中でも花形に君臨してるあたしなのに。ここまで来るのにめっっちゃ苦労したのにーーーッッッ!!!



しかも。


あたしがやるはずの仕事は、あたしの直属の後輩である、『絮源おりゃんせ』なんだとか。どうやらあたしが寝込んでいる間にさっさと復帰して代役を引き受けたところ、見事に視聴者を惹きつけてしまったらしい。新規できてここまで視聴率が上がったのは歴代最高らしく、彼女は今人生の花道を歩んでいる(過言)。


………つかあたしのこと尊敬してるんです発言しといて仕事奪うってどういう神経してんのよ。ま、そういうのも全てゴマスリリップサービスだってのに気づけなかったあたしが悪いんだけどさ。



藤崎「いやーごめん。

まさかこんなに怒るとは思わなんだ。これにはちゃんとカラクリがある」


仁比山「カラクリ…?」


藤崎「実は、この作戦は、俺とセトリが仕組んだことだったんだ。」


仁比山「は…?」


は?


藤崎「いでででででで耳引っ張んなッッッッギブ‼︎‼︎‼︎ギブ説明を聞け‼︎」


仁比山「最 悪」


……………。


あたしって仲間に裏切られやすい?



藤崎「今回の事件からわかった。Steam laboの手下のやつらは芋蔓式に蔓延っている」


仁比山「どういうことよ?」


藤崎「安藤内閣を筆頭に、省庁、公務、一般企業…

つまり、普通の人間のふりをして、こっそり潜んでいるってわけだ」


若干右耳の形が変形したような気がするけどこれあたしのせいじゃない。(違います)


藤崎「Steam laboの狙いは、生身の人間に造人の細胞を注入して細胞を壊し、生き物としての活動を停止させること。人間を"機械化"させる。


Steam laboの手下…「工作員」。


そいつらが、この国の人間を侵食させようとしているんだ」


仁比山「工作員」


藤崎「彼らは、この地上で、人間のふりをしてのうのうと暮らしている。そいつらを捕まえなきゃ、この悲劇は永遠に終わらないだろう」


仁比山「説明はわかったわ。

その説明と、あたしが殺害?…いやいやいやいや!!!!!どうやってそこが繋がるわけよ!!!まじでぜんぜんわからんのだけど!!!」


藤崎「お前、兄がいただろ?」


仁比山「……」


藤崎「お前の兄は、Steam laboの関係者と出会ってしまっていた。

そして、運悪く、計画を全て知ってしまった。


これから陥るであろう、沢山の犠牲者を助けようとしたが故、チャットスポット『5ちゃんねる』…掲示板に情報を貼り付けてしまった。


兄を殺しても、情報は止まらないだろう。


お前の兄はSteam laboにとって、『驚異的な存在』と化してしまったんだ。


知っての通り、裏切り者は血族を抹消される。


情報をもみ消すまでにこれまでの時間がかかったとなると…


藤崎「…」


仁比山「でも、!!あの事件からかなりの期間が経ってるわけで…

追われてるわけないじゃない!!!」


藤崎「否定できるか?」


仁比山「………嘘でしょ?」


藤崎「いいか。

少しでもスチームラボに反逆したものは必ず殺す。

それは当人でなく、『当人の関係者』『血族』だってそう。


お前については、ずっと…それ相応の機会を伺っていたんだろう。


お前の兄は、結構な痛手を負わしたから…その妹であるお前に、工作員『黒岩』を近くに配置させ、

…全国放送中にでも派手に殺そうとか、考えてたんじゃないのか」


仁比山「なっ…………!?」


まさか。


藤崎「工作員とか造人になりかけのやつら。未学習たちは、完全に人間に擬態することができていない。

しかも脳が萎縮したまま完全形態に達しておらんから、そういったことが起こるんだ。

ということでーーー


お前のパワハラの原因、黒岩和多留が、工作員だと断定する」


仁比山「…





やっぱり!?」


✳︎

第三章「黒岩とやら」


………

…………。


黒岩和多留「…臨場感ない」


仁比山「…っ」


黒岩和多留「こんなんじゃ絶対企画倒れだよぉ。オカルト番組なのに、現場に行く人数が少なすぎるって。

ここはもっと、民間人も巻き込んじゃって、みんな大勢で現場に向かうのが一番面白いんじゃん!」


仁比山「…ですが!

あまりにも危険すぎます!

確かに、何も知らない民間人を連れていけば、視聴率がとれるかもしれません。

ですが、巻き込むのはーーー」


黒岩和多留「辞めたいのぉ?」


仁比山「っ!」


黒岩和多留「…最近の企画は面白くないんだヨォ。

縁起悪いとか倫理に反するとか、みんなギリギリの線を越えないんだ。

いいかい?ここは、『東京テレpo』だ。

テレビの中でも絶対王。もっと自覚を持ちなさい。

君だって…その絶対王の、『華ウンサー』なんだからさ。

…………ま、あと10年もすりゃ、使えなくなるけどねぇ〜???っははははは!!!」


✳︎


あたしははっと息を呑む。

やっぱりだ。やっぱりあいつだ。

兄さんをおとしいれたのはーーー


仁比山「…!!!」


源介に腕を掴まれていた。どうやら取り乱していたらしい。


藤崎「こないだの事件から、三島と絮源がこの紙を拾っただろ、」


ぺら。

藤崎が紙切れをあたしに渡した。


仁比山「これって…巨体男の」


藤崎「黒岩はこいつと血縁だよ」


仁比山「?なんで、それが」


セトリ「工作員は、互いを判別するように、この世界で活動するとき苗字を決めるんだ」


仁比山「!?…矢井田馬」


セトリ「おつかれさまです」


仁比山「…何してんのよ」


セトリ「勤務して帰ってきたんですよ。僕家電製品店の工場員としてはたらいてんですよ知らなかったっけ」


セトリはふっと目を伏せる。

アシンメトリーの髪が揺れた。


セトリ「『黒岩』…この苗字は、

工作員として動くための、代表的な苗字です。

黒岩和多留も、きっと、その一味と仮定します。

そして工作員は、親元というものが存在している。

工作員は、意思を持って行動している奴らの上にさらに、そいつらの行動や、情報を把握しているものがいます。

それが…この『巨体男』。

『黒岩マコト』でしょう」


セトリはリストをあたしの手のひらからそっと奪う。

そして自分のポケットから、カードのようなものを取り出し、


セトリ「よっと」


仁比山「!…これって、…」


空中に文字が浮き出した。


源介「最新型の、「読み込み機能7」じゃねえか!!」


セトリ「おお、よく知ってますね」


源介「知ってるも何も………

お前iPhone567なのか!?」


セトリ「ふふふふふ」


セトリは紙切れを取り出すと、自分の手開いた手のひらに乗せたーー


ーーすると。


仁比山・源介「え!?!?」



その場に画像が浮かび上がる。


源介「お前…Air phone567…!?」



………Air phon567とは。


自身の中にICチップを内蔵し、それを"無線で連動"できる人物。

調べたい対象物が目の前にあると、それに触れるだけで、その情報を全て、脳に読み取り…


…一時的に、『電子世界』が見えるようになる。


つまりは脳波を読み取ると、体の中のチップを使って、自身の網膜を支配→水晶体をスクリーンにし、目の前に情報を写しだす。

そんな仕組みになっている。


そこから相手に対して表示したい情報を選ぶ。すると、その場に表示させる。…


要は自分が小さくなって、スマホの中の世界にいるような感じに陥るのだ。Air phone567を搭載していない人間からすると、軽く、目を閉じているだけのように見えるが、彼らは内で情報を操りーーー


セトリ「ほいっ」

源介「…」

仁比山「うわあ」


情報を目の前に『表示』させる。


これも、Steam laboが研究を重ね、この令和X年時代に人類にプレゼントしたんだとか。


ただし、無作為に情報を開示しすぎて、犯罪に発展することを恐れたことから、Air phon567は一般国民には広まっていない。使っていい人物とそうでない人物とにわかれてる。

特別な国への"許可"が必要なのだ。………


勿論、その許可が取れる人物は…


源介「Steam labo関連の人間だけじゃなかったっけ??何でお前が取れてんだ??」


セトリ「まあ、色々な特権ですよ。ボクはちょっと特別なんです」


仁比山「特権て何よ」


セトリ「おっと。ボクに興味を持ってしまうのはちょっと待っていただきたいね」


セトリがくくく、と震えて笑った。

なんか憎たらしいな。

どうやら仁比山も同じことを思ったらしく、目をほっそくして目配せしてきた。


セトリ「とりあえずまず、黒岩について説明をしておきましょうかね………


黒岩というやつ苗字を持つ奴は、研究所Steamlaboの、『情報源』。

全ての工作員の情報を担う、『主』でもあり、また、実験のため人間を誘拐する存在。」


仁比山「『主』…?」

源介「主って」


セトリ「Steam Laboの『工作員』は、主に三つに分けられます。

一つは『造人分野』主に、造人に改良された人間のことです。

二つ目は『工作員分野』。これは完璧に造人ではないものの、スパイとして現代社会に送られたもの。

三番目は『主』…

こいつは、全ての工作員の情報を『貯蓄』するもの」


仁比山「…」


セトリ「紙切れに書いてあった、『黒岩マコト』。こいつは、情報を『貯蓄』するためだけに、人間世界から誘拐された。改良に改良を重ね、記憶を集約できるようインプット力を増やし、訓練する」


仁比山「へえ…」

源介「…」


セトリ「彼らにももちろん、Air phone567が組み込まれています。操作を許可された人間よりも、さらに膨大なデータをね。

記憶搭載するためには、脳を開いて、造人にするのための手術を施す。

…ただし。」


仁比山「ただし?」


セトリ「彼らも所詮、誘拐してきた『人間』…つまり。

体は消耗品なのです。造人に改良する前にやみくもに体にメスを入れていたら、寿命が縮まっていくでしょう。


…そこで。


彼らには、過剰に栄養を与えられるんです。体を壊すのに耐えうるため、たくさんの栄養を。


だから、情報源の『主』は、肥えているのが特徴です。


ただ情報を蓄えられるだけの存在、健康管理などさせてもらえるわけがありません。


死なない程度に、食物を与え続ける。」


源介「…ゔっ」

仁比山「源介!」


源介が口を塞ぐ。

どうやらこの手の話は苦手らしい。


仁比山「ねえ…それって

『拒否権』ないの?」


セトリ「工作員は誘拐し、それを『洗脳した』人間。


洗脳させるには…


絶対に抵抗できないよう、対象の人間の体に、アレルギー反応物質を『大量投与』するのです。逃げられないようにね。


少しでも逃げるそぶりや、嫌がった反応を見せたら、アレルギーを引き起こさせる。

そして…服従させる。

それが、…Steam labo(奴ら)のやり方です。」


仁比山「………兄も、そうされた…?」


セトリ「………」


ゆるせない。


セトリ「人間と工作員の違いですが…

外見では、勿論判別がつきません。元が人間ですから。

ですが、決定的な人間との判別方法があります。

彼らは、自らの"アレルギー物質"をひどく怖がる。」



(今、ボクの手の中で表示されている情報…

紙切れの名簿の中にも、ICチップが隠されているようです。

黒岩という苗字に、全員決定されているようですね。


となれば………


黒岩という名字を持つものを、片っ端から、対処していかねばならないってことです。

勿論、現代社会(ここ)では改名しているでしょうから、証拠あぶり出しからでしょうけどね。


は!?それ、どうやって、


簡単なことです。

相手も造人とは言え元は人間。うまく誘導させればなんの、ころっと本音を吐き出すでしょう。


セトリは両目を伏せる。



藤崎「…そこでだ!!!」


藤崎が咳払いする。

いたのか。


藤崎「話を理解してくれて助かる。

そして…お前ら最適だよ!!」


仁比山「………?」

源介「何がだ?

…ていうかいたんだな」


藤崎「おいおいひでぇな」


藤崎が頭をふった。


藤崎「ずっと探してたんだ」


ざああ。………

風が通る。


藤崎「友人(あんどう)を止めてくれる奴らを、俺はずっと探していた。

元はと言えば、俺がこんな研究をしなけりゃ、起こらなかった話なんだ。


あいつはもう、俺を友人だと思っちゃいない。そうだろう。


…でも。

お願いだ………


俺にとっては、いちばんの………


………もう、お前らしか、頼れる奴らなんてのはない」


仁比山「…………」

源介「………なあ、もしかして

この流れって、」



藤崎「おお、案外察しがいいな!

喜べ、お前らーーー





『暴露班』に転職だ!!!」


-----

第四章「俺らが食い止めるっていう」

源介turn


源介「うん…やっぱこうなるよなあ………」

苑「大丈夫、似合ってますよ」

セトリ「バッチリです」

仁比山「…流石に清掃員でも清掃員同士顔見知りでしょうが…明らかにヤバいやつよこれ…」

源介「そうは言っても、これ以外にしか方法ないんだろ?」


藤崎「…おい。ほんとにこれでいいのかよ」


苑「お兄ちゃんwww」

快「似合ってますよwww」

藤崎「何で笑うんだよでめーら!!!」

苑「んだってザ・場末の男感満載のお兄ちゃんがそーゆー真面目な格好するとなんかおwかwしwくwてwwwww」

清掃員A「おいそこ。喋ってねえで掃除しろ」

all「…へーい」



翌日。


今をときめく、東京テレpo。

俺たち「暴露隊第一班」はーーー


『変装』して、乗り込んでいた。

工作員は、普通の人間のふりをして現代社会に溶け込んでいる。

だからそれを「暴露」ーーー暴き出し、見つけ、捕獲。『不能状態』にしーーー


秘密裏に、「殺害」する。


工作員の殺害の方法は、弥夜が一番知っているから、そこは弥夜に任せるとして…


源介「…うーん…」


探っていると悟られないようにするには、俺らも『他の誰かに変装』して、ターゲットを見つける方式らしい。

そのためには、『他の誰か』に日常的になりすましをして、身近にいるであろう工作員を見極めることが必要なんだとか。


苑「楽しいねこれー」

快「確かにね」


こないだの話をした奴らは勿論、

藤崎の双子の妹達も、この計画に参戦していた。…


にしても、


源介「大丈夫かこれ?」

藤崎「ご不満でも?」


なんで『変装』なんだよ。


源介「利便な世の中かつ研究員が活躍してんだぜ…?画期的な機械作ってそれを使うとかなんかそういうやつなかったのかよ…?幼稚園児のお遊戯会じゃねーんだぞ…なんでこんな原始的なんだよ」


言わないでおいた方がいいかなとか思ってたけど言っちゃった。


藤崎「そこがいいんじゃないか!

ありきたりだからといって誰もやらない方法を選択する………いわば灯台下暗手法!」


セトリ「いやそこまでいったら「し」まで言いましょうよ」


藤崎「灯台下暗し!!!」


そうじゃない。


源介「もうこういうのって絵巻物に載って語られるレベルなんじゃないの。古すぎでしょ、計画が」


セトリ「仕方ないでしょ藤崎さんが決めた話なんだから………

あとこの会社、採用情報で清掃員の募集が溢れかえってたし、この際だから会社に乗り込んで雇われている側から見つけた方が効率いいじゃん?」


そう。


仁比山が勤務する東京テレpoーーー


清掃員の募集だけ、『なぜか大量に』あったのだ。


しかも採用試験(面接)だけであとは翌日即出勤というなんとも軽快(軽率?)なシステム。

多分面接なんてのは単なる形だけで、あとはもう自由にやってください!うぇい!の方式らしい。

10人枠中俺ら7人、全員受けて全員入社、それも次の日即働き。………


絶対だれか一人はダメで、外部で隠密活動なんかな…



…そんなこととか思ってたのに見事に全員すぽっと受かった。御社が俺らを待ち構えていたとしか思えないのは気のせいか?ん??…


苑「…考えてる暇はないです。ひとまず情報収集ですよ。誰が黒岩マコトなのか。奴も改名して、他人のふりをしているはず。必ずこの局の中に息を潜めているはずです、それまで変装して息を潜めましょう」


苑「どうやって、自分だとバレずにターゲットのそばにいくか…。

それは『他人のふり』をする。

これ以外に方法はない。

今でいう『〇〇詐欺』とか、そーゆー難しいのを使うより、原始的で古臭いことの方が気づかないじゃないですか。

作業員のふりして敵の巣靴の中に乗り込むなんて、もはや古すぎて誰も思いつかないよ!いえーい灯台下暗!!!」


仁比山「………あのさ。

もしかしてあんたら結構頭悪い?」


苑&快「………」


図星らしい。

いいように言いまとめただけでこの二人その他の案が思いつかなかったと断定する(all)。



苑「…Steam Laboは、現に怪しい宗教団体と仕組みは同じなんです。一度入ったら名簿に記され、絶対に抜けられない。無理やり抜けたとしても、『情報を持っている』=外部に計画がバラされる可能性のある敵として、『命を狙われる。』…


研究員…現時点の世界観で、一番給料もよく安心な立場にいるけど、そう言うところでは一番危ない組織。もしこの作戦がバレて、彼らに見つかったりでもしたら…まあ、無事ではいられないでしょうね」


仁比山「気を引き締めていかなきゃってことね。…あ、そうだ。

ねえ、あたしずっと引っかかってることがあるんだけど…」


苑「?…なんですか?」


仁比山「この国には、『マリッジブーム』とか呼ばれて婚約推奨が叫ばれてるのは何でなのよ??

乗っ取るのにわざわざ婚約させたりなんだりして、人口を増やそうとしてるじゃない。

その意図がわからないわ。だって、奴らの本来の目的は、人間の『造人化』なんでしょう?

だったら普通に、人口増加などさせないで今いる人間を乗っ取っちゃえば良いのに」


セトリ「仁比山さん…

そうなんです。そうだと思いますよね。でもね………

奴らの狙いは、この世界の人間を『造人』にすること………しかし。


それと同時にーーー

『土台となる人間』が欲しいんです」


仁比山「…土台となる人間?」


セトリ「造人の元は『人間』です。人間に細工をした機械。


マリッジブームで『土台』を繁殖させ、増えた人間を『造人化』する。…

奴らは、その時を待っている。


造人は人間であって、人間じゃない『生き物』。………

人間と決定的に違うのはーーー『意思を持たない』。

そして、『人間に対して、いずれ敵となる存在。


彼らの時限爆弾付きの細胞。

それが破裂する時ーーー


彼らは意志を持ったままアメーバ状になり、地上表面に付着する。そして…

折り重なって腐食する」


仁比山「…!」

源介「…なっ…!?」


セトリ「晴明をはじめ、造人たちは、自分の腕を外して毒液を噴射するじゃないですか。でもあれは、少なからず、自身にもダメージを受けているんです。なにしろ、毒液噴射は人をも殺せる強力な菌ですからね。


だからそっから細菌が発生して、少しずつ『壊死』してく。…そして、壊死が身体中に広まったら最後ーーー自身の損壊と、液体になる運命。

それが地上を覆い、腐食。造人と化していなかった人も細菌に感染し、細胞が壊死し、死ぬ。……」


源介「………」

仁比山「………」


嘘だろ。


セトリ「ま、そんな未来にしたくないならさっさと黒岩探しましょうや。

ただし…」


セトリがゆっくりと近づいた。

彼の緑眼が煌めく。


セトリ「『黒岩』…もちろん、普通の名字のやつも混じってます。」


仁比山「あれっ、黒岩マコトは、かなりの体躯だって聞いたわよ。だったら巨大人間を探せば…?」


藤崎「いいや、」


藤崎は頭を振る。…病的な花の香りがきつい。


藤崎「この世界で生きるために、標準体型に痩せさせられている可能性がある。」


源介「は…?」

仁比山「嘘でしょ…?」


藤崎「そう簡単に痩せれるわけ、とか思っただろ?

それがな…Steam Laboでは、そういう計画(プログラム)まであるんだよ。


情報源を外に出す時は、奴らはかなり肥えているから、

食生活とカロリー計算をされた栄養源を彼らの体に注入する。日に三度。そしてダイエットした経験のあるやつならわかると思うが…」


仁比山「食欲に負ける、でしょ?」


大いに頷く仁比山。

お前ダイエット中だもんな(黙)


藤崎「そう。…食欲。

こいつが厄介だ。

一回根付いてしまった食欲ってーのは、簡単に制限することが難しい。

ましてやあの巨体まで成長させられてしまった彼は、きっと中毒症状に似たものを思い出して、減量もスムーズにいかないはずだ。



…そこで。


Steam laboでは、『欲求』に対しての制御の研究してあるからな。

食欲を消す成分を作ったか、心理学で操ったか。

それを繰り返し、最短で標準体型まで痩せさせられているだろうな。

巨体のままだと逃げづらいから」


仁比山「そんなこともできんの!?」


藤崎「…………

Steam laboは、『人を操る場所』。…そうだろ?」


仁比山「…っ」


気持ち悪い。


藤崎「とにかく、マコトは、普通体型に戻されている。

巨体のままだと、いざという時逃げられないからな。

まー、ひとまず探すぜ。

食物系統で釣ってね」


源介「食物系統?」


苑「アレルギー源のことよ。

その物体が近くにあれば…もちろん、アナフィラキシーが起こる。いくら普通の人間のふりをしていたとしても、その源が近くにあれば、極端に嫌がるはず。」


苑「他の人が触ってるものに近づかなかったり、食べてるものを嫌がったりしたら…ビンゴね。こちらも他人のふりしてそーいった挙動不審な人間を探すわよ!」



清掃員A「だからおめーらしゃべんじゃねえーー!!!」




-----

一方その頃。

太一turn・Steam laboにて。


コツ…コツ…


冷たい靴の足音が、無機質な廊下にこだましている。


太一「………」


僕は、Laboへと戻ってきた。

主を失ったからだ。


造人のシステムは…

普段は、永続的に主人の元で、働くシステムとなっているのだが、…

主人を『失う』と、Laboに『帰還』することになる。


現在の主・三島亮平(厳密には彼の祖父)を、とある事件で見失った。


僕は、「主」を無くしたのだ。


(ま、それはそうなんだけど…

今回帰ってきたのはーーー

少し違う理由のためもあるんだよな)


太一「………」


とある部屋の前で,足を止める。

ーー大きな鉄製の、近未来な構造の扉。


『閉鎖』。


ーー扉の上、


それを示す赤点灯が、煌々と廊下を照らし出してる。


太一「………」


ーーういいいぃーーーん。


扉の側、"モニター"に、

左手を翳す。


太一「…………」



ーーー「開錠」。



僕は一歩、踏み出したーーー


✳︎


ーー部屋の中央、巨大なカプセル。


青緑色の薬液の中に、あたしは一人、漬けられている。

遠い記憶の中、近づく足音によって、あたしの意識は覚醒していく。


きた。


『開錠』ーーーー



誰か、きた。

あたしはすっと目を開けるーーー。


何の変哲もない、"青年"が、

あたしの目の前に立っているーーー




??「生きていたのね。」


太一「お元気そうで」


??「私は元気よ。

こうやって無理やり『生かされてる』。」


太一「無理やりって」


??「仕方ないじゃない。

だって安藤(かれ)が、あたしを生かしてるんだもの。

あなたはなんで戻ってきたのよ」


太一「主を見失った」


??「馬鹿ね」


太一「主が行動不能になったら、本拠地に戻るシステム………か」


??「所詮、あんたも機械ってことね」


太一「…っ」


??「あなたも結局、人に飼われる『造人(ロボット)』さんだってこと。あたしたちの最大の職務ーーー

人間の殺害る(のっとる)までは至っていない、単なる機械。」


太一「…それがなんだ」


??「使えないってこと。」


太一「…」


??「あら、怒った?ごめんなさいね」


太一「…僕にとっては、あの人たちは『大事な仲間』なんでね。

寝返って殺すなんてこと、やっぱりできなかったさ。

残念ながら僕は、人間と一緒に過ごしていくうちにーーー

悪い人間ばかりじゃないってことを、知ってしまったんだ」


??「綺麗事言ってる場合じゃないわよ。

職務を全うできず、主を失い、Labo(ここ)に戻ってきた造人(もの)はーーー」


太一「『廃棄処分』、だろ?」


??「………」


太一「僕たち造人は、人間の(マスター)から原則離れてはいけない。

離れたものはーーー

『職務放棄』として、Labo側から『破棄』される。

そんなの、わかってるさ。

覚悟の上で戻ってきたんだ


…それより。

お前、外に出たら。

さっさと逃げ出して、弥夜(むすめ)の元へ行けよ。

細胞の増殖、みたところ、成功してるぜ。数値も、正常じゃないか。

…体は全回復してる。」


??「…あたし、もう人ではないから。

あんたと違って、あたしは、人間でいたいという欲求を、とうの昔に捨てている。

それに、この社会では、既に死んだもの扱いされている。

…戸籍もない。

なんで生きてるのは他でもない、

検体として生かされてるのよ。

あんたのような不能ではない、人間を殺すための造人を作るためにね」


太一「………でもお前、


『娘』に会いたいとは思わないのか?」


??「…!」


太一「生きてるぜ。お前の娘。

人間の野郎とタッグを組んで、今、この状況を救おうとしている。

早く会わないと、お前…


娘に処分されるぞ」


??「黙れ!!!」


太一「…」


??「あたしは検体。安藤(かれ)の道具。

身体改造され、今もこうして、様々な実験に貢献している。

それに…


見てわかるでしょう、あたしの姿。

…16の姿よ。


『こんな姿』であの子に会う資格はないの」


太一「…」


摩耶「あたしは、久遠寺摩耶(くおんじ まや)。…

検体として生かされているだけの、もはやヒトではない存在」


太一「………」


摩耶「もうあたしを惑わさないで。…疲れたわ、どこかへ行って」


太一「………」


………。

……………。


また、

一人になった。

これでいいのだ。

あたしは、『外へ出てはいけない』。


会いたいわ…………

会いたいわよ。

そんなの、あたしが一番知ってる。


あなた、無事に人間に戻れた?

人間と恋をして、あなたも『人間』になった?


『弥夜』…あたしの娘…


会いたいのに、



あたしは



時 が 止 ま っ て い る の



-----とぅーびーこんてぬー



あとがき。



大変長らくお待たせしました………_:(´ཀ`」 ∠):

ちとリアルでリアルじゃないようなことが連続して起こってな_:(´ཀ`」 ∠):

仕事だの演奏会だのなんだのとちょいと失礼しやしたぜ!!

しばし更新できず…っ、まっこと申し訳ないです!!!!!!!

というわけでリアルに乗っかるためにこれからは不定期になるかもしれませんが、更新自体はやめないので………d( ̄  ̄)

どうかよろしくおねがいしますっ!!!!!!!

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