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不可解犯罪勃発事件簿。  作者: 武者小路霧雨。
4/6

真相に近づく。

よん

はじめに。


※この物語はフィクションです。

実際の人物、団体などには

関係ありません。


※この物語には若干の性描写、

グロテスク表現、暴力表現が含まれております。

苦手な方はご注意下さい。


※(おことわり)

この物語は、私自身が、自分のYouTubeアカウントにて一部動画化しております。


※挿絵の挿入の仕方、わからないので

連携したTwitterに上がってます!!笑笑



登場人物


〜青井警察署〜

・日暮里源介(26):警察官。三島とは親友同士。


・三島亮平(26):警察官。源介とは親友同士。


・逢沢悟(25):源介の上司。底抜けに明るく無鉄砲&破天荒、しかしコミュ障。集団行動が大の苦手で、孤独を好むが妻のことは溺愛している。彼は現在、訳あってSteam laboという謎の第一研究所に赴き、所在が分からなくなっている。


・逢沢円(23):悟の妻。悟とはマリッジブームに則って婚約した。心配性で、無鉄砲な悟のことを気にかけている。前回の話で絮源という女子アナをさらっていったが、真相はいかに?


・夫:マリッジブームに則って結婚したという、男。


・妻:上記に同じ状況の女。


〜東京テレpo〜

・仁比山紅葉(26):東京テレpo」のアナウンサー。源介と三島とは、学生時代の顔見知り。今は亡き兄貴がおり、彼はSteam laboの研究員に殺害された。その謎を解くため、laboに潜入し、今現在所在が分からない。


・長谷川小太郎(24):東京テレpoの新入総務職。冴えない感じだが毒舌。仁比山のことが好きで、常に録音機を持ち歩いており、その都度仁比山の行動を記録してたり…。


・絮源おりゃんせ(23):仁比山を慕う部下。ゴシップや新規のニュースを追うため、この度警察署にやってくる。しかし、捜査虚しく円に捉えられてしまう。


・黒岩和多留(29):東京テレpoの次期社長。

酷いパワハラをする事で有名。


〜Steam labo(理科研究所)〜

・安藤雄一郎(45):現内閣総理大臣、兼、Steam labo研究所長。しかし、その正体は日本撲滅を願う心なき人物であり、藤崎の実験内容を盗んだ人間である。


・藤崎周平(30):安藤の第一部下。造人研究成功とともに失踪。安藤とは昔友達だったが、上記のことから現在まで青井警察署に身を潜めていた。今回、大活躍。


・三島清一郎(83):三島亮平の祖父。Steam laboの元研究者。社交ダンスが趣味。


・羅門目鉄郎(50):Steam labo、現研究者。

安藤内閣の側近。彼の右腕的存在でもある。






-----

〜キーワード集〜


20x x年。12/24の歴史。


『聖・ユートピア事件』

→不可解団体内閣襲撃テロ事件。

官邸内にて、内閣殺人未遂が起こる。

その犯人「服部政景」(仮名)を、現内閣総理大臣の所有する、限りなく人間に近いAI『造人』により、撃退に成功。


内閣総理大臣:安藤雄一郎

ーー政策目標。

:「研究者が、日本を救う!!」

「病原体や感染症、また外部機器(犯罪)から

我々人間を守る…造人(完璧万能人間型AI)の増殖。」

その造人の研究のために、

理科学研究所「Steam Labo」を増築すべし。)


登場場所


・Steam labo:造人研究所。今は廃墟と化していたが…!?


✨✨✨


造人計画

国民を外部機器から守るため、代行して危険な仕事を受け持つ、『完全人間型AI』を、日常生活に導入するという、安藤雄一郎氏の政策。


主に工事現場、土木作業、原子力発電など、危険が伴う分野での仕事をなんでもやってくれる。


彼らはどこからどうみても人間の風貌である。あまりに似ているのでたまに本物の人間と間違えられることも。


マリッジブーム:謎の失踪事件が勃発してから、恐怖からか婚約者数が膨大に増加。「マリッジブーム」と名付けられ、現在もその増加は続いている。

なかには単純に「事件が怖いから」という理由だけで結婚する人もいるくらいだとか。


造人機能


・機能:危険と判断した相手を追随、必要ならそのまま攻撃する。

マスター(命令主)の言う事以外、一切聞かない。


・機能②(「認証」):命令主と言われる、「マスター」を決定する。人間でいう脳の役割を果たす。

ここが壊れると造人としての機能を果たさない。


・機能③:

視線を合わせるだけで、その相手の心拍数や骨密度、血液型、その他諸々の人物情報を把握することができる。


・「心臓部」:完璧に人間に見せるための「調味料」という隠れ機能が入っている。内容は秘密。左胸に厳重にロックされてるとか。


・「爆破装置」:

人体に最も危害を加える「細菌」が充填されている。量によれば重傷から、死亡に至る。

主にマスター(命令主)に危険が迫った場合、敵とみなした生物に放出。

人間で言う、「内臓部分」に猛毒作成機能が付いている。食物を毒に変える性質があり、いざという時に毒を溜めている。


◎気になる認証方法: 額をくっつけ、操りたい造人の「虹彩」を、3〜7秒見つめること。

認証成功したら、『認証しました』と、言われる。



あとは普通の人間と同じ。

ご飯も食べるし睡眠もとる。

普通の人間より、「タフ」なだけ。



…本作で、追加要素アリ(!?)



〜〜造人〜

一軍:完全体。危険地帯で働くことができる。めったに壊れない。(…本作で追加要素アリ)


補欠…完全体に近いが、壊れる可能性があるもの。

(…だったはず、だが??)


未学習:「完成前」の造人のこと。善悪の判断が備わっていないので、「生きる兵器」とも呼ばれている。つまり危険度マックス。



・晴明:安藤氏の息子的存在。造人計画で一番最初に製造された。「完全体」の一人。



・太一くん:青井警察署で働く造人。

「補欠」の一人。




・久遠寺弥夜:???



備考欄:


◎造人、そして、ここで出てくる「団体」とは。


造人は、「はるかに人間に近いAI」という存在であるが、その中に、本当の人間も混ざっている、という。

しかもそれは、「日本滅亡」…だけではなく、それ以上も?………を望んでいるといわれる「とある、団体」の集団×Steam Laboの一部研究員の仕業であると言われているが…?(真相はいかに?)


-----


-----


夫「じゃ、俺は行ってくるから」

妻「…いってらっしゃい」

夫「何かあったら、すぐ連絡してな」

妻「…何もないと思うけど?」

夫「…っ、そうか。じゃ、行ってくる」

妻「………」


ーーバタン。



『えー、本日のマリッジブーム!

婚姻予定者数は………

59組です!!』



妻「…あーあ。」


怖がって結婚するんじゃなかったわ。

今更思っても仕方ない。

仕方ないから………


触られた肩を、ぱっと払い除けてみた。ーーー



『いらない』。


-----

不可解犯罪勃発事件簿。4


-----

現在地:Steam labo第一研究所前

逢沢悟の車の中

太一(三島保有造人)turn


「…遅いな」


あれから、24時間以上経った。


我が主の孫、三島亮平(警察官)の知り合い、の知り合いである、「逢沢悟」は、未だ研究所内に入ったまま、戻っていない。


『ついていってやれ!』(※一巻目参照)


「…っ」


彼……….『三島亮平』。

現在master…『主』の命令。


それに今、従っている最中なので、僕は、ここから動けない。


いや、「動いちゃいけない」…


単純に、命令がないからだ。


「………」


ふと僕は、車の中のミラーを見る。

赤い瞳が、闇で煌めく。


造人として生きてきて、一体どれくらい経っただろうか。



✳︎


…『No.7890、今日から、第一研究所研究員、『三島清一郎』のもとで研究結果を発揮せよ』


✳︎


現代の日本=化学or科学。

そう言っても過言でない。

研究者=有識者。

そんなことになったこの国で………


「はあ」


そう。


僕「太一」は、三島家に仕える前…………


僕の研究所時代の(マスター)

安藤内閣総理大臣の祖父、

『安藤雄二』を思い出してた。


令和の終わりの時代になって、感染症が蔓延し、環境も汚染し、なんの防備もない人間がおいそれと生きられない世の中になり…




『科学こそ至高!化学(ばけがく)こそ、不動の存在!!

日本が脅威に晒されたら、我々の研究結果を国民に見せつけてやろう。


科学者、研究者が統治する時代が、きっと巡ってくるであろう。


それまで密かに研究を続けていようぞ!


我がユートピアを、成功させる、ために………な!』…




昭和あたりの時代から、世代を超えて、密かに動いていた組織…



安藤と、Steam labo。




彼らは、環境汚染と治安悪化の『混沌』の塊になった現代日本。


そこで頭角を表した。


太一「…っ」



国民は、すっかり科学者に頼らなければならない時代になってしまった。


もともと「安藤」、一つの大きな財閥だったものが、日本を「裏から統治する」という意味あいで、この五つに別れ、

その中でも、三島家は、研究所「Steam labo」の、殊更由緒正しい研究一家だった。


研究員である、三島亮平の祖父、三島清一郎。

僕は彼から研究材料として引き取られ、主に祖父の部屋から出ることもなく、淡々と働いてきた。主である清一郎氏が年端も行かない子供の頃から、亮平…孫が生まれる時まで、ずっと。





混沌。




「………」



僕は、自分の手のひらを見る。

青黒く、血管が浮かび上がって、不気味にどくどく脈打っている。


「…」


どうやら、親機…

『最終兵器』に、少しずつ変更が加えられているらしい。


(人間の形でいられるのも、そろそろ時間の問題………ってか)


…そう。

僕は、『造人』だ。



「…」



地上にいる「完全体」たちは、

「未学習」とは違い、ちゃんと善悪の判断がある。


ただ、「未学習」と同じところは………


内閣の娘、もとい、

親機、もとい…


最終兵器、『久遠寺弥夜』に、「変更」を加えられれば、僕たちですら、変わってしまうこと。


結局善悪の判断はあれど、造人は単なる「駒」でしかないのだ。

とある、『計画』のための。


太一「…惨めだ。」





………あれ………?



僕?


太一「…あれ?」



…どうした僕?



なぜ、



太一「『惨め』、なんだ???」







…『命令が嫌』なのか???

僕は自分に問いかける。



太一「いいや、ちがう」






命令じゃない。


太一「命令じゃない」



なんかこう、もっと、大きなーーー





「…!!!っ!!!」


…あ!!!!


『なにか』の『記憶』が。

『僕』の『なにか』を『制御』

している。ーー




とくっとくっとく、とく、とくーーー


「…っ、はぁっ、はぁっ…」


激動が静まっていった。

感情抑制システム。

体の中で働いたのだろう。

造人の心拍数は、人間よりもかなり低い。

そのため興奮することがない。

だけど人間を元にしてできているから、鼓動が速くなることがある。



ただ、鼓動が速くさせる、その時は………『爆発』するとき。



それまで、早くなってはいけないのだ。…


そもそも『駒』が、

こんな感情を、持ってはいけない。


ーーー生きる、『兵器』だから。


その役目を、果たすまでは……




「…!」



そう。

兵器。


『生きる、兵器』ーーー


太一「そう、か……」



僕の忘れていた記憶。

ずっと、忘れていた、

いや、押し殺していた『記憶』。


それがもし、正しいのならーーー



太一「…止めなくちゃ」




ーーひょん!!!!!

ーー空を切る音。


考えるより、体が動く。

僕は車を飛び出していた。

割れたガラスとその破片が、混沌の空気の中で輝く。


自分の重力が

軽く地面を抉って飛ぶーーー


扉。

Steam labo、第一研究所。


ーーー向かう。







太一「…『停め』なくちゃ」




-----

源介turn

現在地:藤崎運転の車の中


「いやーすまんな!

結構な期間幽閉してたモンだから、運転方法ミスったらごめんよ」


源介・三島・長谷川

「…笑えないんだが………」


一方その頃。


俺らは、藤崎の運転する車の中にいた。


攫われた、俺の友達ーー

ーー仁比山 紅葉。


彼女を助けるために、三鷹の第一研究所、『Steam labo』へ向かっている最中である。

現在は、青井警察から公用車をパクってき………いや借りてきたところで、今は、林の中だ。



ーー外は、大雨。

突然の雨が降ってきたのだ。今現在は夏だというのに、山の中は相変わらず、天気が変わりやすいらしい。



藤崎「いやー、どうもありがとよ!!公用車貸してくれた礼にあとで色々と何かするわ!!」


長谷川「…めっちゃ曖昧だな」


三島「これあとあとバレたら色々やばいんじゃ…」


源介「…もはや何が起こってるのかちょっとよくわかんねえから俺知らねえ」


長谷川「あー仕事放棄!!」


源介「お前はいちいちうるせえんだよ!!」


俺は長谷川をこづく。

数日間色々激動すぎて頭が追いつかないのが事実である。




まあ、ざっと説明するとだーー

『仁比山が行方不明になった』。


この世には『調べちゃいけない・関わってはいけない』とある『事件』がある。…それは。


10年前にキャスターだった彼女のお兄さんーー『仁比山秋月(にいやましゅうげつ)』が、ある『番組』、『テレビ局』そして造人を作る研究所『Steam labo』にかかわったせいで、失踪した、という。



その事件について調べてしまうと、なぜか行方不明になるのだという。

実際興味をもって調べた連中たちも皆、失踪、不審死を遂げているとか。


仁比山自身も、兄のことを諦めきれないということを俺に話してから………



源介「…フラグ回収しやがって」


長谷川「え?どうしたの急に?」


源介「…す、すまん独り言」


三島「デカすぎんだろw」


やべ。

色々と漏れ出てた。


藤崎「まあ心配なのはわかるが、まず落ち着けよ。これからやばいところに乗り込まないとなんだからな」


源介「…本当に、仁比山が攫われたのは、10年前の事件と関係があるのか?


やっぱり黒岩も、Steam laboの繋がりなのか?」


藤崎「…さあーなー」


源介「そしてーーー

この国で、この時代で……

何が起きようとしている??」




藤崎「…ははは。いい考察仲間ができたモンだ。

ま、やばいことが密かに動いてるってことは否めないけどな」



源介「………俺はただ単に、友人を助けたいのであって断じてあなたの仲間になった覚えはないんですけどね………?」



藤崎「そんな寂しいこと言わねえでくれよー。

お前の友人を助けに行くんだろ!それに俺もちょうど、動かなきゃなんねえ潮時だなとか思ってさ!」


長谷川・三島「俺らは道連れだけどな☆」


源介「…それこそ悲しいこと言わないでくれよ,今星見えたぞ星………」


長谷川・三島「ジョーダンだって、ジョーダン!

まずしっかりしろよ源介。まだ彼女が怪我したかどうかもわからないんだから」


源介「…」



藤崎「…あ」



三島「どうしたんですか??」



藤崎「そういや、前に説明をした、最終兵器ちゃんのことで、抜けてたところがあったんだけどさ。」




三島「…総理の娘、『久遠寺弥夜』のことですね」




藤崎「ああ。


ここではちょっと紛らわしいから、造人化(最終兵器化)される前の「人間」弥夜には、"元"をつけるな…


前に、"元"弥夜には、脳の疾患があるって言ってただろ?

詳しい症状としてはな、まあ、記憶を司る部分が弱いから、色々と不便なところがあって。

なんで彼女を造人にしたか………それはな、単なる実父、安藤の好奇心からきているものもあっただろうが、ときに、自分のことまで忘れてしまうモンだから、悲しみに暮れた安藤が、怒りのあまり実験台にしたんだよ。

『実父の顔まで覚えてない親不孝モンなんか、単なる荷物でしかない』…ってな。」



三島「本当酷い…」


源介「人権もへったくれもねえよな」


長谷川「自分の娘に…?」


藤崎「…ま、そんなことになっちゃうのに責任を感じちまった俺様が、弥夜を必死に人間に戻そうとしてた、ってわけだ。


そーこーで。


俺の分析した研究ノートを久々にあさったら、詳しく書いてあったんだけど………」


源介「…」


藤崎「弥夜を人間の頃に戻すために、実験で、弥夜を匿っていた頃の何日かで、実験用のネズミくんを使って、データをとってた。…結果、


『心を動かす』!ムーブ・マインド!!!」



三人「…は?」


藤崎「…心を動かす。」


三人「…だ、だから?」


藤崎「そう。

つまり感動するようなことをしたら、

万能細胞の活性が少しずつ弱まっていった。


…つまり。


交感神経が優位なことをしたら、この世の中の造人たちは、皆、人間の状態に近くなる、ということ。


造人は、交感神経が活性化しないんだ。



『完全人間型AI』…

完全体・補欠・未学習含め、未だ国民は「ロボット」だと勘違いしてる奴らも多いが、

人間が元になっている時点で、それは「生きてる」んだ。

感情が動かないように訓練されてあるだけ。

「人権のない人間」って思ってくれればそれでいい。

…ただ便利な人間型のロボットを研究したかったはずなんだけどな俺は。…安藤から実験内容を盗まれてから、色々改造されちまった。


それに。


未学習には犯罪者・精神異常者の細胞も仕込まれているから、なおさら判断力自体ない。

生きる兵器だからな。


しかしな。…「元人間」である以上、感情を動かすようなことをすれば…」


源介「…なるほど」


長谷川「少しずつ、『人間に近くなる』ってことですね」


三島「よくできてるんだな」



藤崎「そうだ。よくできてんだよ、造人(あいつら)は。


ああ…弥夜……

ここに囚われてる間、

すっかり、人間らしいこともないんだな…


もう、

造人(あっちがわ)に戻っちまったかな」




源介「藤崎と暮らしてた時は、弥夜はどんな感じだったんだ?」


源介「ままごとが好きな少女だったよ。


不思議な少女だったな。男の子の人形に惚れちゃったりして。

一度造人に染まっても人間の心はどっかに持ってるなんて、もしかしたらこのまま人間に戻せるんじゃないかって日々研究………


…!!ちょっと待て、」



源介「へえ、弥夜にも好みとかってあったんだな」

三島「今では爆発物だぞ」

長谷川「なんて思えないよねえ……」




藤崎「………待て………源介。

もしかしてお前なら………


源介「…?藤崎?」



藤崎「……いや。

なんでもない。ははは」





何だったのだろう。





藤崎「とまあ、ざっと説明したけど、安藤くんも色々と、設計ミスってるんだよな」


長谷川「どういうことですか??」


藤崎「精魂込めて作ったものは、『作り手の意志』が入ることは、知っているだろ?

内閣の弱点だって、反映されているはずなんだ。

いくら頭のいい彼だって、俺の計画を盗んだとはいえ、たった一人で計画したんだ。どこかに抜け漏れがあるはずなんだ…

造人の『弱点』…


それさえわかれば、

きっとなんかわかるはずなんだけど…ああ、そこだけどうもわかんねえ」



藤崎が息を吐いた。



藤崎「…あと補足だ。"晴明"というのは、安藤君の子供の頃を模ったものだ」


三島「え!?そうなんすか!?」


藤崎「マジでそっくりだよ。性格以外はな。」


長谷川「…性格、以外??」



藤崎「あー、それと!

危ないのは『造人』だけじゃねえぜ。…長谷川!」


長谷川「えっ?」


藤崎「お前が統括してる長谷川ハッセーの電化製品…Steam labo監修だろ?

つまりだ。

その小さな機材の中にも…

弥夜の細胞が入れ込んである」


ここで蔓延ってるSteam labo製品の全てが危ういということだな。」


長谷川「う、うそ!?」


藤崎「ここまできて嘘なんか言うかよ」



源介「ち、ちょっと待て。

この世の中に造人に侵食されてるのは一体どれだけあるんだ…?」


藤崎「…それは俺にもわからない。

ただ一つ、言えるのは…


全てを手中に納め操作するため

万物に細胞を組み込んで、

遠隔操作するつもりだろうな。


もはや、彼らの薬を飲んでいる時点で、俺らにも、微弱ながら、造人の細胞が仕込まれている」


三島「…ぐっ!!??」

長谷川「おい、吐くなよ!?」


長谷川が三島を揺さぶる。

いや、揺さぶったらやばくね。


藤崎「幸いながら、まだ機能してないけどな。俺らだって、細胞を搭載している分、あいつらの裁量で、いつでも造人化できるかもしれないってことだよ。」


源介「あいつらの目的はいったいなんなんですか?」

三島「…げほっ、日本撲滅、とか聞いたんだが」



あ、三島復活した。



藤崎「…完全体と、未学習の二つの造人がいる

だけど、結局はどちらも、『脅威の存在』であることに変わりはない。


正直、日本撲滅とは言っていたが…

それもどうだか。

内閣は、その地位から、簡単に世界とつながることができる。

どんな理由かは…何をしようとしているかは…

はっきりと、わからない。


でも、何かとんでもないことをしでかそうとしているのだけはわかる。…


その『とんでもないこと』…


それが、内閣、そしてSteam laboたちの目的なんだ。」



長谷川「…でも、未学習が一番危ないのはわかったけど、…完全体だの、補欠だのっていうのは?」



藤崎「その造人たちは…ダミーさ。」



源介「…ダミー?」


藤崎「本来の人間たちの目をくらませるためのダミー。

メディアが彼らの従順さに気を取られている間に、静かに未学習たちが動き回る。

そして、完全に世の中に『造人』という存在が混じったら、ーー

一軍の造人たちも、未学習と化すだろうな。」


源介「え…」


それやばくね?


三島「じゃあ、早く首謀者の内閣を捕らえないと…」


藤崎「…うん。だからお前らには悪いが、仁比山救出は勿論、違った意味の目的で、ここに乗り込ませていただくぞ」



ーーばしゃあ。


いつのまにか、雨は上がっていた。

ぬかるんだ道が、土をはねる。




源介・三島・長谷川「………」


目の前に、

『Steam labo』が見えてきた。

俺らは思わず、息を呑む。暗い雰囲気に、胸が詰まった。




藤崎「…いいか。

今から入るのは『Steam labo』だ。

『Steam labo』の人間たちは、人の命を奪うのに、なんら抵抗のない奴らばかりだ。

目的は、仁比山紅葉の救出。

そして、少しでもその計画を遅らせること。ま、後者は俺の目的だがな。

お前ら、少しは体術訓練を受けているとは思うが、気を絶対に抜くんじゃないぞ」



all「わかっ、た…………」



藤崎「…さて。

まー何が起こるかわからないから、念のため車でぶち込むか!!!

きっと研究所の中もバラバラだし、絶対素足じゃあぶねえぜ」


長谷川「…素足では行かないと思うけど…」


藤崎「こっから先は、絶対に俺から逸れるなよ。なるべく安全運転を心がけるが、そうも言ってられない時があるからな」


三島「………ゑっ?」

長谷川「それってどういう…?」


藤崎「車がぶつかって壊れても、俺から離れるな、ってことだ!!」


源介「は、はあ!?

ちょっ、と、待…………」


藤崎「おっしゃー!!!

乗り込むぞーーー!!!Foo!!!」


三人「うわ待てよォーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


ーー車は大ジャンプをかましーーーそして、


派手に水を飛沫ながら、


入口のドアを突き破った。


----

現在地:とあるカフェテリア

妻turn


『マリッジブーム、まじで失敗したわ』

『わかるわかる。うちも。

『あたしのほうはもう、愛情を感じられないのよね。』

『恐怖から守ってやるっていうのは、式でのセリフだけだったわw』

『今なんて恐怖よりあたしの方が怖いだなんて言うのよw』

『そう考えると、歩み寄ってくれた人ってのは貴重よね』


「…………」


仕事終わり。


あたし?

近くのカフェで暇を持て余しているところ。


まあ、実際暇ではないんだけど、なんとなく、家に帰りたくなくて、ね。夫(現実)がいるでしょ。お家に。


妻「……はあーあ……………」


ーーぼすん。


体をソファに埋めてみる。


ーーカラン。


アイスコーヒーの氷が溶け、音が鳴る。


あたしは氷が嫌いだ。


だって現実に引き戻そうとする。


音がなる=溶けてる=時間が経ったってことじゃない?


ならばホットを頼めばよかったではないかというが、30度越えの暑さの、その余韻が残る夕暮れ時のフィールドで、ホットを頼む心の余裕なんて全くなかったからであってーーー


「………」



だめだ。

やっぱりマイナス思考。

このまま時が止まってくれたらいいのに。あーあ。遊園地にでもしゃれこもうかしら。…あ、そうだ閉園時間。

夢の国なのに閉園時間なんてあるのはおかしすぎる。



結局は現実から逃げられないだなんて。

なんて非情なのこの世界。


というわけで、またあたしは

画面をタップする手をやめない。




「……へえ。」



意外とこの世の中、マリッジ則婚した人、失敗したなんて感じてる人たちの方が多いのね…


「……はあ」


世の中のつぶやきなんかみたとしても、現実はどうすることもできない。

それは、わかっている、けれどーーー。

ちらりと時計を見る。

…19:02。


ちょっと暇を持て余すつもりが結局2時間近くの滞在となってしまった、わけでーーー


夫(現実)が………


妻「……………」



仕事に行き→

旦那の世話をし→

そして家に帰ると家事をし→

電話が来→

子供はまだかと迫られ→

プレッシャーに撃沈し→

家なのに休んでもいられず→

また日々は巡る→




なにこれ。


こんなはずじゃなかった。


「自由に」なりたい。




そう、あたしは、

…「自由だった」。




妻「自由だった、はずなのに……………」



なんでこんなにも、悲しいんだろう。




??「…お困りのようですね」


妻「…えっ?」


??「おやおや、そんな恐ろしい瞳で見ないでくださいよ。なあに、怪しいものではございません」


妻「…誰?」


??「私は、あくまでも『通りすがりの人』…とでも、言っておきましょうか」


妻「…お金ならないわよ」


??「おっと。現金などたかりません。

あなた…マリッジブームでお困りでしょう」


妻「…!!」


??「どうです?…少しお話ししませんか??」



妻「…………」



一瞬、不安そうな顔をした夫が脳裏によぎったが、気づかないフリをする。


違う。

あの人とあたしは………


妻「…ここじゃなんだから、変える?場所」


-----

藤崎・源介・三島・長谷川turn

現在地:Steam Labo‐一階廊下



ーーーぱりぱりぱりぱり。




藤崎「…うーーん」


源介「乗り込むとカッコつけたはいいけど、潜入してからずっとまっすぐ、20キロくらいのスピードで走ってますけど??」

三島「おっそいんですけど??」

長谷川「景色変わらないんですけど???」



藤崎「るせーなおいお前ら!」



Steam Laboに潜入してからというもの。

俺たちは、『長い長い廊下』を、車でずっと走っていた。

延々と鉄の壁と鉄の管の景色がずっと続いており、さっきからずっと、『変わらない』のだ。ほんとにここで失踪事件がおきているのか?

…デマじゃなかろうか。



藤崎「少しは映画のスリル的な要素醸し出させてくれよ!正直なこというと俺もここの研究員だったとはいえど、ずっと幽閉されてたのには変わりないからなあ、建物のシステムとかはもう忘れちゃったってのが本音なんだよ!」


三人「あーね…」


あーね。


とりあえずこれ以上彼の気分を悪くさせてしまったら、途中下車せざるを得なくなってしまうので、黙っておこうぜえ。


そうやって俺ら(藤崎以外)は、目を使って会話する。



今乗っている、この車。

こいつは有名なプリウスなのだが、ちょうど横幅が収まるので、車のまま進むことができている。


ぱりぱりぱり。


車のタイヤに踏まれるビーカー。ガラス。なんかの破片。

素足で踏んだら痛そうだし、

靴で歩いても、切れてしまいそう。

それくらい、あたりはガラクタでいっぱいだ。



当たり前だが、電気機器は切れている。

ま、今まで人がいなかったので、切れている方が当たり前、というがーーー


車のライトに頼ることしか状況確認方法がないので、そのまま俺らは進んでいく。


ーーと。




藤崎「…あれっ」


三島「どうしました??」


藤崎「…行き止まりだ。ちょっと降りてみるか」


目の前には、鉄の壁があった。

そして…


謎の、エレベーター。

ライトに照らされ、赤錆が目立つ『それ』は、かなり『不気味』を醸し出してる。




ーーーざっ。




源介「何々…重量100キロまで…?」

藤崎「…」

三島「………何に使うんだ?これ」


藤崎は頭をかく。


藤崎「あー………なんだっけ……これ……

何を運んでどこに到達するのか、そして何が作動するのか、もはやすっかり忘れたな………」


長谷川「えー!だめじゃん!元研究員なのに!!!」


藤崎「しょうがねえだろ、俺だって忘れたくて忘れたわけじゃねんだ。

…まあここも、かなり古くなってしまったな…俺がいない間に…

まあ、動きはしないだろ……古いし…

あー…何だったっけな…何に使ってたっけな…」



ーーーーーがこん!!!!!




源介「…え?」

長谷川「え?」

三島「…ゑ…わわ!!!」




ーーーバタン。

うぃぃ…ん


源介「み…三島?」



藤崎「あー、思い出した!

おいお前ら、それにのっちゃいけねえぞ!!何を運ぶかはともかく、それの行き先はだな…………



…って、ん?

お前らどーした??」




源介「三島…………乗ってっちゃいました……」

長谷川「藤崎さんが後ろ向いて考え込んでる隙に………」





藤崎「…まじ?」


-----

太一turn

現在地:Steam Labo-地下1階


「…よしっ」


誰にも見つかることがなく、研究所の内部に侵入できた。


自分でもよくわからないが、なんだか変な感情が働いたらしい。


なぜ、人助けなんて

指示もないことをしだしたのだろう。

それは、わからない。



きっと何かの設計ミスだろう。


今は、無理やりにでも、そう思う、他ない。



「………」



荒廃した、床板。

赤黒く変色した、壁。

鉄錆だらけの、機材の管。



Steam laboの内部は、僕が「生きていた」頃と違って、だいぶ荒廃していた。

まあ、ここまでは、想定内だ。もはや廃墟、ってところか。


かすかな音が、聞こえる。

そして、その中にーーー





「…!!」



熱?



あれ、なんで…




「…?…??」




『あのエレベーター』が動いているんだ?



「………」






ーーー体温感知。

およそ「36.8度」。


OK.






(…誰かがいるのか……?)



下に高速で降りているところをみると、どうやら…


「エレベーターに…誰か、乗ってる???」



確か…

あのエレベーターの用途は…

行き先は。


「…助けなきゃ」



-----

一方その頃。

警察署内では。


上司「…いや昨日からそこに座っていただろう!」

部下「それがちょっと目を離したすきに…」

上司「円さんはどこにいったんや〜い!!!」

部下「そんな変な呼び方しても、警戒されると思いますよ…」



上司「まあ、大丈夫だとは思うけどよ…旦那がいなくなったからかなり凹んでたけどな。

まー、看病くらいしかできなかったし、取り合ってくれなかったってことで帰っちゃったんだろ。



そう。

実は先日、ここ青井警察署の警察官、『逢沢悟』が行方不明になったのだ。

まあ、本人の勝手な意思でどっかに行ったらしいのだが…


逢沢悟の妻…『逢沢円』。


夫が居なくなって辛かったのだろう、泣きながら警察署にきた。

(※前巻参照)


ま、色々あってここで休ませていたのだが、ちょっと目を離したすきに、彼女も居なくなってしまったのだ。


上司「さっきそこのソファに座ってたはずなのに。

ほんと、こちとら忙しいのによ…」


部下「…」


ーーー

『本日のマリッジブームは………59組!59組だそうです!!

おおっ、これは、いい線いきそうじゃないですか!?佐藤さん!中継つながっております佐藤さーん!!』ーーー




上司「…おっ、ニュースか。

玄関前の待合室にテレビとか、ここの警察署っていささか変わってるよな」


部下「ええ…実際

ないところが多いらしいですよね、待合室」


…中継『おやおや?また一組、カップルが入ってきました!今ちょうど入籍の手続きをし始めているようですねー!』…


上司「…お気楽なこったな。

マリッジブームで結婚して、後悔している人間たちが多いってのに」


部下「…やっぱそうなんですか?」


上司「やっぱ?」


部下「…いやなんでも」


上司「…まあ、勢いで結婚しちまったせいか、『こんなはずじゃなかった』ってなってるやつが多いって。

夫婦の仲が冷めきっちまって、少子化の改善すら、実際そんなしてないらしいぜ。馬鹿だよな。ノリで結婚したって上手いこといくのなんてほんの僅かだろうに」


部下「…」



上司「まーあったりめーだけどなーあはははは!!!!!

あまりにも考えなしなんだよ。失踪事件が怖いからって普通そこまでするか??」


部下「…じゃあ、俺の妻も…………」


上司「…お?なんか言ったか??」


部下「…いや、なんでも。

じゃあおれは帰りますね。

…当直、頑張ってください」


上司「そうか。じゃあなー」

部下「………。」






✳︎

部下→夫。



「………」




妻「この世間が、怖くて仕方ないの」


夫「………」


妻「いつか、きっと…

あたしも攫われてしまうのかな、って思うと」


夫「…」


妻「怖くて、仕方ないの」


夫「…なら……



…………俺が、守って…………」


妻「え………?」


夫「俺で、よければ、だけど…!ははっ、


…やだよな、こんな男なんか!

すまん、忘れてくれ!///


うわー、何言ってんだろうな俺/////


きっと当直で疲れて」妻「…ううん」


夫「………えっ?」





妻「………守って、ほしい」


✳︎



「…っ」


はっ。

俺は何を思い出しているんだろう。



ーーしかし。


『守って、ほしい………』




あの時。

恐怖にすくんだ顔の彼女を、どうしても守りたいと思った。

急な恋って、本当にあるもんだと、実感した瞬間だった。


「っ…」


頭を振る。

思い出に耽っていた脳内を、むりやり戻す。

でも。

現実は。


「…」



今朝の流れを思い出す。

妻はーーー


こっちも「見も」しなかった。




やっぱり。

上司がさっき言った通り、

マリッジブームなんかにのっとって、結婚しない方がよかったんだよなあ。


「…」



妻の横顔を思い出して、俺は思った。




そう。

最初からわかっていたはずなのに。ーーー



「………」




何はともあれ、彼女に無理をさせるために結婚したわけじゃない。

妻がもう、世間が怖くないというのなら、



「………」



俺はーーーー


-----

現在地:Steam labo-地下へ続く階段の途中

源介turn


藤崎「ちくしょー!階段だと滑って怖え!!!俺こんなに階段慎重に降りたの初めてだ!」


長谷川「うわぁあぁああんっ、怖いよー!!!」


源介「仕方ねえだろエレベーター、どっかで止まっちまって来ねえんだから!!!あー馬鹿三島め、次あったら覚えてろよ!!!好奇心旺盛なのもいい加減にしろよな!!!俺がこうやって苦労してんじゃねえか!!!」


藤崎「文句言いたいのはわかるけどもうちょっと静かにしろよ………」


長谷川「…元はと言えばどんな用途だったかすぐに思い出さなかった藤崎が悪いんじゃ………」


藤崎「あァ?」


長谷川「ごめんなさいごめんなさいなんでもないですなんでもないからすごまないでえぇえ」


藤崎「とりあえずこの螺旋階段を地下に向かって降りりゃいいってことだけはわかる」




一方その頃。


俺らは三島を追っていた。


エレベーターがなぜか戻ってこないので仕方なく階段で降りているわけだが、いや、これが古すぎていてしかも滑るときた。手すりにしがみつきながら降りる。もはや数階降下したのに負荷が強すぎるから大腿部がヒクヒク言ってる。頑張れ俺の太もも。

それは皆同じなようで、一応藤崎も長谷川も辛そうな顔をしている。



源介「くそ………三島め………

勝手な行動しやがって…」


長谷川「ほんとですよ…僕もう歩けない……」


源介「しんでもおぶってやんねえぞ」


長谷川「僕男になんか甘えないもん!!!!」



「あのう」



源介「ちょっと黙ってろ長谷川」


長谷川「えーと、違いますよ?」


源介「なんだよ少し黙ってろって」


長谷川「じゃなくて!後ろ!」


源介「あァ!?」


長谷川「僕じゃないよ、こいつが………」




え。


赤い瞳。


振り返ると、いつのまにか、

『造人』が、立っていた。


いや、あれ、


こいつ………




源介「………太一?」


あれ。

逢沢悟先輩に、一時的についていったはずの太一が、なんでここにいるんだ?



✳︎



太一「…とまあ、かくかくしかじか、こんなことがあったんですよ。だから、僕は僕自身の考えで、逢沢悟氏を探しにきたってわけです」


源介「なるほどなあ…てか逢沢先輩、そのまま太一のこと置いて、この中に入っちゃったってわけか。勝手なことするもんだよなあ。…てか藤崎。お前何やってんだよ」


藤崎「休息」


さっきから声聞こえないと思ったら。

藤崎は階段の数段上でなんか飲んでた。

いやどっから出したんだよそれ。缶コーヒーか??

胴部を手でまるきり覆ってるもんだから何飲んでるか見えない。



長谷川「…ねえ源介、一つ思うんだけど。

こいつ、誰???」



長谷川が太一を指さす。


源介「…あ。悪い。

こいつは、俺が所属してる警察署で働く………」


太一「青井警察署の造人『太一』です。

(マスター)は三島亮平氏の祖父、三島清一郎氏です。が…

訳あって今、現在行方不明中である、逢沢悟氏が現在主です」


長谷川「……へええ」



太一は自分から自己紹介した。

…説明が省けて助かる。



藤崎「おし。

自己紹介も済んだところで…

太一。お前の話も聞かしてもらおうか。」


太一「はい。

僕はまあ、今現時点でのマスター、『逢沢悟』を探しにきました。

ですが…皆さん、ここの施設の事実を、はっきりとはご存知ない、そうですよね?」



all「ああ…まあ…」



太一「ここの施設に関して重要点をまとめますと…

ここは、『誘拐した人間たちを、"完璧な造人"にする場所』なんです」



源介「は…??」

藤崎「…」



太一「まず、対象となる人間を、何らかの方法で『誘拐』してくる。

使えそうな人間は『器』として使い、使えなさそうな人間は、…その場で殺して、別の方法で造人にします。

さて、そして使えそうな人間を造人にできました。

…ここでは終わらないのです。


世に出るには、『恐怖訓練』なるものを受ける」



源介「恐怖訓練?」



太一「…人間誰しも、ストレスホルモンというものを持っています。


要は、『いいストレス』と、『悪いストレス』ですね。


結論から申し上げると、

後者である、『悪いストレス』…

これが、造人を作る、格別の材料なんです。


悪いストレスはキラーストレス、とも別名で呼ばれます。


キラーストレスは、苦痛や恐怖、我慢をしいることによって、どの生き物でも発現します。



最終的に造人は、人間の知能を付随させるという最終統制を終えてから、初めて世の中に放たれるのですが…その前に。『仕上げ』があります」


長谷川「仕上げ?」


太一「…はい。

造人を作ったあと、感情を抑制させる訓練をするんです。

元は人間ですからね。主の言うことに対して完全な反応を見せなければならないので。

そんな中、感情が邪魔していたら、人間に仕えることなどできない。

だから、『感情を消す』。

そのために、この施設の中にある『恐怖部屋』という場所に放り込みます。


人間の知能は持ったまま、人間の『反応』はしないように抑制し、

恐怖に対抗して、対抗して、対抗し続けて…


完全に対抗できたものが、『造人』として最後、この世に出てこられます」



源介「…」



太一「その部屋での試練内容は、『精神を病むほどの、とにかく恐ろしいものから逃げる』。

部屋が施錠されるので、ボスから逃げまくりながら、自分でヒントを探し当て、部屋を開錠しなければならない。」



藤崎「…そうだったな、確か」


長谷川「…?」



太一「…しかし。

残念ながら恐怖に対抗できず、精神を壊してしまったもの、自我を保てなかったもの、発狂してしまったもの…。

造人の完全体、もとい、未学習にすらなれなかったものは、今も恐怖部屋にいるんです。

まあ、いると言っても、殺人機(ボス)に喰われて『取り込まれた』が、正解ですけどね」


源介「…てことは、つまり……ボス、ってのは…」


太一「単純な意志を持つ、『肉塊』ですね」


源介「………」

長谷川「………」


藤崎「ああ、そうだったな………

こちらの感情を瞬時に読み取り、恐怖だけに反応する、ストレス細胞の塊みたいなもんだ。

そんなやつがいるところに生身の人間を入れられたら…まあ…ただでは出てこれないだろうな」


源介「…え、じゃあ、おい」


藤崎「ん?」


源介「マジでヤバいじゃねえか!!三島が…、早くその部屋だかなんだか知らんが開けてくれよ!!!」


太一「…こればかりは、造人の僕でもどうにもできません。…ここの施設の機械は、全て、安藤総理の裁量に委ねられています。

だから、恐怖部屋の施錠も、エレベーターの稼働も、一度動いてしまったが最後、止める権利はないのです」


源介「…畜生」


長谷川「…でもさ、僕思うんだけど…」


藤崎「どうした?」


長谷川「その部屋って、地下にあるんでしょ…?

さっき太一くん、『精神病むほどののかなりの恐怖』って言ってたよね??」


太一「ええ」


長谷川「…じゃあさ!

既に怖がって気絶してるんじゃないかな!!

怖がって気絶してれば、声も出せないでしょ?

だとすると…

『物理的にボスもやってこない』!!!」


藤崎「…たしかに」

源介「あ、そうか」

藤崎「それもそうだな、」


all「三島はきっと、気絶してる!」


藤崎「じゃあそうなってることを信じて、早く助けに行くぞ!!!」





-----

現在地:Steam labo-恐怖部屋

絮源×三島turn


絮源×三島turn

とある部屋にて。


「………ま、………しま」


三島「………う…………」


「……しま、み、ま……



…………三島ッ!!!」


三島「…ぁ、ぁあ!?」


絮源「もー。しっかりしなねー。

あんた、いつになっても起きないんだから」


三島「え………絮源か!?」


絮源「起きてくれないと困るのぉ。あんた、せっかく四肢の拘束がされてない人間なんだから、気絶してたらあたしを助けられないでしょうがっ!!」


上で四人が喚いているとは

いやはやまったくつゆしらず。

俺はよくわからん場所で眠っていたらしい。

あれ。おかしーな。

エレベーターに乗って降りてきたはずなんだけど、あれ、ここ、どこだ…?

しかも。


絮源「ちょっと。何じっとみてんのお」


目の前に、絮源(=バカ)がいる。


ということは…………




絮源「ハァーーーい"だだだだだだだッ、急にこめかみにスクリュードライバーかますんじゃないわよ何すんのォ!!!」

三島「玄関先で散々俺に時間を使わせた罰だよオラァ!!!ここであったが24時間以内!!!!!やめて欲しけりゃ謝れェ!!!!」

絮源「ヒーーーッッッんググ鬼畜ゥ、うぉあんたそれでも人間なのォ!!???!?ハわかったわかった、ごめん、ごめんってだから離しなさい馬鹿ァ!!!!!」


どうやら彼女も捕まっていたらしいな。ふん。出入り口用のカード持たず警察署に侵入しようとするからいけねえんだ。それに俺のこと散々色々言ってきやがって。


三島「…俺のこと散々言ってきやがって!!!」

絮源「は?………口に出てるけど」

三島「はっしまった」

絮源「ふゥ〜ん、君ィ………意外とずゥゥ〜ット気にしちゃうタイプなんだあ…???かーわいい、かぁいいよォォみ…し…ま……………?(上発音)」

三島「なんなんだよお前一体!!!てか出会ってから何キャラなのかいまいち掴めねえよ!!!!」

絮源「我は風のように雲のように、はたまた水のように掴みどころのない………」

三島「うん掴めない!!!!!!!!」



…茶番は終わりにしよう。



三島「…っていうか、ここどこだよ」

絮源「知ってたらとうに抜け出してるわよ」

三島「と言うかお前、どこからきた?」

絮源「まー地上じゃないかなー。

…で、たった今起きた」

三島「…お前だって俺がこの部屋に来たところ見てないんだから、偉そうな態度取れねえじゃねえかよ………いてっ」

絮源「?…どしたの」

三島「…」


体が痛い。

肩を強打したようだ。


右側には、俺が乗ってきたであろうエレベーターが、閉じた状態でそこにあった。多分、乗っていた間に空気が薄くなって気絶したのだろう。なんかよくわからないけどあのエレベーター、明かりもないし、空気も悪いし、人を乗せるには向かない設定だったな。


三島「…」


俺は上を見る。天井に穴が空いていた。

絮源の紐は、どうやら、その穴に繋がっているようだ。

…まあ、登って助かるわけがない高さだが。


三島「ッ………最悪だな畜生」

絮源「あんたはどうしてここに来たわけよ」

三島「友達の友達を成り行きで助けにきた」

絮源「捕まってやがんのwwハーッwダッサwwwwwダッサww」

三島「うぜーぞ、お前!!

お前だって今現在ここにいるじゃねえか!!

お前はどうなんだよ!?」

絮源「知らないやつからの誘拐ですぅ。可愛い女は困っちゃう」

三島「 は 」



…どうやら。


こいつも誰かに捕まったらしい。

でも、正直な感想言わせて、正直な感想。



…………全くもってとにかくこいつと一緒にいたくはなかったぁぁ!!!!(ド正直)



三島「てかお前俺から逃げた時のすばしっこさで普通に逃げれたんじゃねえのかよ」

絮源「可愛い女の人だったので油断しましたァ。見惚れてたらなんか一瞬」

三島「薬かけられたとか?」

絮源「うーん首が痛いので多分手刀かなんか食らったんじゃないすかぁ」

三島「お前人ごとみたいにいうなよ…」

絮源「だってあたしは並一般的な女子ですよwww」

三島「百歩譲ってだから何」

絮源「譲らないでと言う言葉を飲み込んで一言。

あんた警察でしょ。体術訓練も受けてるはずなのになんでこんなとこいんのwww助けにきたのに捕まってんのwww」

三島「馬鹿!お前だって自分の状況わかってんのかよ!?

俺がここに来なかったら、お前だって捕まってたんだからな!!」



ーーじょきっ。



絮源「あロープ切ってくれたんですねありがとうございます」


三島「…………急に素直になるなよ怖えよ…………」



喋りながらも俺は絮源のロープを切ってやる。ちょうどハサミの歯のようなものがおちてた。犯人が落としたのか?だとしたらバカだな。


四肢の拘束が取れてホッとしたのだろう。

絮源は急に静かになった。


三島「お前を誘拐したやつって…

一体どんなやつだったんだよ??

俺、お前追いかけてたから玄関で張ってたけど…外部からやばいやつは侵入してなかったはずだぞ?」


絮源「女の人………でしたね。多分、最初から中にいたんだと」


三島「…婦警か?」


絮源「いや。一般人って感じでした。」


三島「特徴は?」


絮源「おさげ髪の豊満ボディ」


三島「………」


絮源「…いや妄想しないで気持ち悪ィ」


三島「ハッッしてねーよ!!!いや、そもそもお前の言い方がヤバいん『るーーぅァアア』だろうがっ!!」




三島「……………」


絮源「……………」



三島「今、なんか声しなかったか?」


絮源「…いや、そんなわけ、だってあたしら以外いるん『るぁあーーー』?……

…………???」



三島「ほらやっぱり!

声するじゃ『る?るうぁあ』………。………。…。」



三島×絮源「…………」



『るぁあぁあぎゃあっ!!!!!』




三島×絮源「ひっっ!!??」


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現在地:Steam labo-地下1階

太一turn×藤崎・源介・長谷川



長谷川「でもその恐怖部屋って一体どんなところなのー?」


太一「『恐怖部屋』…それは。

造人研究の仕上げですよ」


藤崎「ああ………思い出してきた」


藤崎が頭を抱える。

余程怖いところらしい。


太一「要は、人は怖がると、とある反応を見せる…

扁桃体が反応し、オレオキシンニューロンが出る。



『恐怖部屋』の殺人機(ボス)は、

その反応に、敏感に反応します。」


長谷川「殺人機(ボス)…?」


太一「その部屋の中にいる、自動追随、そして殺人する機能しか持たない、『殺人機(ボス)』。…

彼が,その部屋の中にいるのです。

彼は、知能を持たない。生きた人間がいると察知した瞬間、必ず殺すまで、対象物を追い回します。

どうやって対象物を認識しているか、それはーーー

『恐怖』。」


源介「…つまり、状況に対して怖がれば怖がるほど、奴が反応して、敏感に追い回してくる、と」


太一「…そうなんです」


藤崎「ああ。

あらゆる恐怖を感じさせないために、造人たちは地上に送る前、恐怖訓練という課程を踏んでいる。

人間よりはタフとはいえ、元は人間を模して作られてあるからな。人間の臓器もそのまま使われてる。感情がないように作られるとは言えど、『発現する』とも限らない。

人間の代わりに危険地帯で働かないといけないからな。恐怖があったらなんもできない。


だから造人たちは、定期的に恐怖訓練なるものを受ける。


閉鎖的状況と、殺人機(ボス)を怖がることなく部屋を開錠して出れたものだけが…ちゃんと造人として世の中で機能するのです」



源介「……じゃあ」



俺は太一に聞く。


源介「設定はどうであれ、その『恐怖部屋』って鍵を、要は解けばいいんだろ?」


太一「はい」


源介「どんな鍵だ?」


太一「暗号です」


源介「…暗号…?」


太一「ああ…少しずつ僕も、思い出してきました…

なんで忘れてたんでしょう、こんな恐ろしい記憶………


僕の記憶から掘り出すと、その恐怖部屋の構造は、『回』。…


『回』と言う文字を、模っているんです。



この研究所は、地下に長い構造です。…地上から入って、1階しかなかったようにみえたでしょ?」





源介「…たしかに。車でそのまま突入したが…」


藤崎「…一方通行だったな。」


太一「そうでしょう。」



太一「実は、…この施設は、

密かに地下で稼働している。

これは、入った人間でしか、わからない事実です。

そして、ここの関係者だった人物以外………


最終まで辿り着いて、行き止まり…

その壁についているエレベーター。

このエレベーターの行き先は。

恐怖部屋です。

エレベーターの重量は100キロ。

重たい人でない限り、大人一人はまあ、乗れるような重さだったでしょ?」



源介「…質問が二つある。

これはなんの用途だ?

そして、なんで大きな人間は、対象外なんだ?」


太一「…ふむ。まず、一つ目の質問に答えます。」


太一は頷く。



太一「むりやり、乗せるんですよ。

生きた人間を。一人ずつ。

単独で狭い場所に閉じ込めることによって、恐怖感をさらに倍増させるためです」


長谷川「…倍増すると、いいの…?」


太一「恐怖反応が高ければ高いほど、殺人機(ボス)は気付きやすいらしいんですよ。さっき言ったように、オレオキシンニューロンに反応しますからね」


藤崎「…仕込まれてやがる。俺が幽閉されてるあいだにそんなに施設を改造しやがって………」

源介「…」

長谷川「…」


太一「藤崎さんがいない間、安藤総理はめちゃくちゃでしたよ。

この施設を完璧にしたら、奴をも殺してやると意気込んでました」


長谷川「奴って」


太一「藤崎さんです」


藤崎「………ははは」


藤崎はカラカラと笑った。


太一「…そして、二つ目の質問。

なぜ大きな人間は対象外なのか。それはーー


まず肥満体だと、細胞が『弱い』んです。

肥満の人は、色々な病気にかかりやすいでしょう?

造人を作るためには、なるべく普通体型で、普通の細胞を持った人間を狙って、病気の心配のない、『普通の細胞』を使いたかった訳です。あとは、安藤は、無駄を省きたい人間ですからね……ここの建設に余計なものは設定しません。建設費をはぶくということも踏まえ、この軽量なエレベーターを作ったのでしょう」


源介「…なるほど」



太一「そして。

この下、一番地下、最深部………。

総理の娘、もとい最終兵器、


『久遠寺弥夜』が囚われてます。」



源介「…」



太一は壁を見る。

壁には、無数の管。

太いものから細いものからーーーさまざまだ。



太一「…ここに這わせられてる管は全て、最終兵器の弥夜に、繋がっているんですよ。


誘拐してきて、造人に仕立て上げ、結局『恐怖部屋』の訓練に耐えられなかった者、または安藤総理から逃れようとした者、裏切った者、この施設に対して興味を持ったりした者を捉え、その人々の臓物や骨を全て、弥夜に送っている。



養分とするため、に。」




ーーーーがこん!!!




あれ…今、


音が…?



太一「!!まずい!!!!!」



-----

三島inside


さて。

俺と絮源が目撃したものは、というと。


『るぁああぁあーーー』


首のない、『人体』。

赤やら紫やら、管が剥き出しになっている。

体は大きく筋骨逞しい、男性のもののようで、ぶつかったらひとたまりもなさそうだった。


そいつがーーー


奇声を上げながら、襲ってきたのだ。

声帯がどこかに埋め込まれているのだろうか。どっから声を出してるのかわからないが、るぁるぁ言いながら近づいてくる。



絮源「み、三島………」

三島「に、逃げるぞ!!!」




ーーーーというわけで。



三島「…はあ、はあ…

ここまでくれば、大丈夫だろ」


現在地:恐怖部屋-消火栓内。


壊れた消火栓があって助かった。

俺と絮源は身をつっこんで「隠れる」。ーーー



三島「とりあえず少し様子見だな」



どうやらあいつは目は見えない(まあ無いからな)らしく、素早く逃げたら追ってこなかった。ーー見失ったらしい。


絮源「み………みしま………」

三島「あ?」

絮源「み…し…まぁ………」

三島「なんだ?…すっかり取り乱してるな」

絮源「そりゃそうだよォあんなのがいるなんて聞いてない!」

三島「そりゃ誰も聞いてないだろ」

絮源「なんであんなのがいるわけ??あんなの人間じゃないよね??人間だとしても普通の人間じゃないよね!?「おい、絮源」なんであんな形相の何かがいるわけ!?「なあ」どうしようどうしようどうしたら」


三島「怖がってる場合じゃねえだろ!!!!!!!!!」


絮源「!!!!」


三島「…………絮源………取り乱しちまう気持ちもわかるが…………今やるべきことは………この部屋から、出ることだ」


絮源「…うっうう………」


とりあえず落ち着かせる。

ったく。

先程の元気はどこへ。




--絮源inside now.


ーーそうだ。

今やることは…


『この部屋から、脱出すること』


そうだ。

しっかりしなよあたし。


今、三島に叫ばれたせいで

なぜか、思考が落ち着いていく。あれ、いつのまにあたし錯乱してた??やばいやばい。落ち着かないと。


三島………


…すごいいけすかない人間だと思って勝手に見下していじめてやろうと思ってたけど、なんだ。結構頼り甲斐のある男じゃん。


…なんてね。



絮源「………」



不本意だが、

三島の体温のおかげか、気持ちが自然と和らいでいく。

へえ。

これくらい近づくと、心拍音とか聞こえるのね。

どうやら三島は割と落ち着いてるらしく、あたしとは心拍速度がまるで違ってゆっくりだった。恐怖耐性あるのか。


てか。

「!」


男と。

「!!」

こんな接近すること、今までない。

「!!!」


三島「なあお前大丈夫か?」

絮源「なっなにが」

三島「さっきから3ミリくらいの幅でわなわな震えてるけど」

絮源「ふ、震えてないもん!!!」


3ミリくらいの幅とは。

はああーーよかったぁー強めの香りのシャンプーしてきて!!!こんな男子と近づくことなんて全くないから、変に思われちゃいやだよ。どきどきどきどき。緊張のせいで怖さとは違う震えが。はああ。



…あれ。

なにを考えてるんだあっし??




『どきどきどきどき????』


「……!!!!」


いや!!

心拍が上がってるのは,えー、

怖いからであってーーー



ううん、もしかして…



もしかして、





これが噂の『吊り橋kーーーーー




三島「…お前、香水つけてんのか?」

絮源「は?」

三島「…すっげえきつい」



ゑ?????


三島「あのさー………可愛い女の子がするんだったら話もわかるけど…………お前みたいな可愛げのねえ女は趣味悪いからやめといたほうが……」

絮源「…うっせえ変態!!!!!」

三島「ぐっ!!!!!」



あたしは三島の鼻をつまむ。…色々撤回。

やっぱり怖さでバグったらしい。あー変なこと考えそうだった。おお怖い怖い状況って怖い。

ちなみに、敵に見つかるとまずいので今話している内容はなるべく全て小声で話している。



三島「んぁーかーら!ほーいうほころがはわいくねえっふってんだ!!!…いいはへんはなへ!!!」


三島が涙目で色々抗議する後ろでーーー


絮源「…ん?」


「それ」が、あたしの目の中に入った。


絮源「…ねえ、三島」

三島「…なんだよ」


絮源「これ………あんたの後ろに書いてあるやつ………

回と、田って書いてあるけど、なにこれ…?

解除方法…って、…書いてある」


「それ」ーーー

三島のちょうど後ろの壁。

壁に、血か何かで書いたのだろうか。

研究員が書いたのだろうか。


『解除方法〜回or田?』


とだけ、書いてあったのだ。



三島「…!」


絮源「どしたの?」


三島「絮源。さっきから逃げ回っててなんとなく気づいたんだが………この部屋……俺の予測が、正しければーーー」


絮源「…」



三島「もしかしたら、この部屋の構造は…

漢字で言うと

『回』か『田』

このどちらかのつくりだ。」



-----

絮源inside now2


絮源「は?」


三島「…多分」


絮源「多分で何よ多分て。」


…てかどっからその発想がきたのよ。



三島「いや。さっきからテキトーに逃げてたら、なんとなく頭の中に図形が浮かんでな」


絮源「…いやどんな能力してんの!?」


三島「空間図形は得意なんだよ」



ーーかさっ。



絮源「ん?…なにこれ」


三島「なんだ?………名簿?」



くしゃくしゃに丸まった紙が、足元におちていた。


三島「ふん。どうやら

ここの研究員の名簿の一部のようだな。

なんでこんなところにおちてんだか」



広げてみる。ーーすると。



絮源「うわーこの紙、研究員たちの個人情報まで書いてあるじゃないですかあ。身長、体重、血液型…誕生日まで!?」


三島「静かにしろ絮源。

ここの施設の奴らやっぱりとんでもないらしいぜ」



--三島turn now.



三島「おそらく………」


ーーキイ。


俺はそっと扉を開けーーー指差す。

絮源がそれにならった。


指差す先に、巨大な鉄扉がある。


三島「…見えるか?」

絮源「鉄扉?」

三島「俺が予測するに、あそこが出口だ。

この部屋を研究員が作ったとしてーーー

こんな危険な場所、出口がないと、研究員自体が殺されちまうだろ?」


絮源「…たしかに」


三島「お前が落ちてきたであろう、あの天井の穴………

あそこは、まず穴だから使えない。届かないからな。

俺が乗ってきたあのエレベーターは、終点がここ。

あのエレベーターも使えない」


絮源「え?なんで?」


三島「あのエレベーター、『上がれない』」


絮源「…は?」



三島「…俺が乗っている間、内部から見たところーーー『上』の表示がなかった。

…あのエレベーターは、研究員の昇降用に作ったものじゃないと思う」


絮源「…じゃあなんだっていうのぉ。あれが出口なんじゃないのぉ?」


三島「まず、今の、上れないってことから、出口ではないことは確かだ。

…まあ、地上で俺が乗れた時点で、何か作動すれば上に行けるんだろうけど…その方法は現時点ではわからない。この部屋にヒントがないからな。

そして、そのエレベーターを研究員が特別な暗証番号か何かで無理に使うにしても、あのエレベーターの重量は……100キロだ。」


絮源「つまり…?」


三島「この大男。こいつは乗れない」

 

俺はさっきの名簿を指差す。



黒岩藦孤斗(くろいわまこと)

No.69の、1研究員だ。



三島「彼の情報…


身長180センチ、体重120キロ。

大男である彼を、重量が100キロのあのエレベーターは、仮に研究員が何かしら上る方法を知って操作したとしても…到底彼を引き上げることなどできない」


絮源「…!そっか…!」


三島「上れないだの、極端な重量制限だの、…こんなに条件があるもの、職員用に使っていたとは思えない。何か別の用途だろ。

…それに。

ここにいる化け物…俺が見たところ、知能を司る脳が抉り取られていた。生き物は脳みそがないと、考えることができないはず。つまりーーー

単純な命令だけで動いている可能性がある。」


絮源「…というと?」


三島「あいつは多分、『見境なく』生きてる奴らを襲ったはずだ」


絮源「!!!」


三島「だから研究員たちがここに餌となる人間を放り込むにしても、自身に危険を及ぶことを恐れ、すぐにこの部屋から出れる、別の出口を必ず用意していると思う。」


絮源「…」


三島「だとすると……あの鉄扉が、絶対『出口』だ。」


絮源「んな簡単な…?

選択肢が2択しかないなら、テキトーに押してもーーー」


三島「…まて」


絮源「え」


三島「…考えてもみろ。

これで間違えた結果を選んだとしたら、どうなる…?」


絮源「…っ」


三島「俺が逃げ回って見たところ、ここの天井は、特殊だ。

しかも、お前が叫んでくれたおかげで、どうやら反響板で作られてるとわかった。つまり上は空洞。

そしてこの部屋…

俺らを簡単に帰すとでも思うか??」


絮源「…?」




三島「…あのな。

多分ここの人間は、相当性格が悪いと思う。

軽率に答えを選んではいけない理由…見ろ。

あの出口となる鉄の扉,横に四角いモニターがあるだろ?

きっとそこが、解除の鍵だ。ここの部屋の図形を、書き込めば開くだろう。

しかしーーーそのモニタの上。」


絮源「…監視カメラ?」


三島「ああ。

恐怖心と戦いながら、やっとこさ答えを見つけ、解答し、結果、ーーー


『間違い』。


そしたら、上の圧縮機が一気に作動し、ーー潰される速度でも速まるんだろう。

恐怖の解放から、絶望。ーー対象人物のそういった…表情の変化を、どこかで見ていて楽しんでんだろ。モニターあるってそういうことじゃね。とことん悪趣味なこった」


絮源「…圧、縮機?…って何…?」



上を指差す。



三島「ああ。

この天井。…

見たところ、圧縮機だ」


絮源「!!!!」


三島「天井と壁に、隙間がある…そして、」


奴の気配が遠くでよかった。

俺は指を上げるとーー


ーーーッカッ!!


絮源「!!」


指を鳴らした。

音はーーーー


響かず、すぐに耳内に入り込む。


絮源「………!

あれ、さっき逃げる時、足音結構響いてたよね…それに、あたしらの、声も、あいつの声も………」


三島「天井が低いと、『音は響かない』。

さっき俺らが逃げる前と、明らかに反響が違うのがわかるか???

さっきまで響いていたのと、今、響いていないのとーーー


…何が言いたいか、わかるか?

今でさえ、少しずつ下降してきている天井………


解答を間違ったら『潰される』可能性があるってことだ」



絮源「…!!!」



絮源の顔から血の気がひく。



絮源「三島…あたし…

死にたくない!!!!」


三島「…絮源」


俺は絮源を自分に寄せる。

絮源の目から涙がこぼれた。


三島「…大丈夫だ。勝算はある」

絮源「…ど、どういうこと?」

三島「あいつは多分耳が良くない。」

絮源「…え?」

三島「反響を頼りに、こっちにきてる。」


うそ。


三島「つまり、あいつが襲ってくるのも僅かながら時間がかかる(タイムラグ)があるってことだ。

襲われるか、潰されるかーーー

その前にこの扉を開錠しちまえば………」


絮源「で、でもさ。

地図もないのに、どうやってこの部屋から抜けるわけよ?

現にしかも、閉じ込められてるわけじゃない。

それに、あのデカデカとした鉄扉。あれが出口だなんて………罠にしか思えないよ」



--絮源turn now.


三島「…人は詰まると、単純な思考すらできなくなるんだ。

お前、ゲームはしたことあるか?」


絮源「…は?何急に」


三島「いいから」


絮源「…………うんまあ」


ゲームならしたことある。


2段ジャンプとか超人離れした技かます3文字のビビットカラーのあの髭の人のとか、はたまた、聖なる剣を頭上に掲げる、正義を具現化したような、これまたやっぱりビビットカラーの金髪少年のとか。三つの正三角形と丸い妖精さんと一緒。もしくはーーーあ、

これ以上はやめておこう。



だけどなんで、今この質問???



三島「…そう。どんなゲームでもいいけどさ。必ずだんだん難しくなっていくだろ。ダンジョンとか、謎解きとか。最後にいくにつれて」


絮源「うん」


三島「それで一番最初のダンジョンに戻った瞬間、急にできなくなった覚えはないか?」


絮源「…あ」


ある。

そういえば、ラスボスを倒したあと………

久しぶりにレベル1のダンジョンに行ったら、「なんだこいつレベルで?」といった雑魚敵にダメージを喰らわせられたことが。ーーー


三島「難しいことばっかやってると、基本の『き』を忘れちまうことがある。

そして、

『簡単なことさえ、できなくなる』ーーーー

それを狙った構造っぽい。


だからこの扉はーーー出口だよ。

なんの引っ掛けでもない」




は?




絮源「…その理論はどこから来るのよ」

三島「…何となく」

絮源「何となく!?」

三島「なんかそう感じただけだよ!!!」



いや。

普通の人間はこんなこと、全く考えもしないと思う。

一体どういう思考回路してんのこいつ。しかもなんかめちゃめちゃ余裕で過ごしてない!?

死と隣り合わせ、って状況下のはず、なのに。



三島「…あと。

地図がわからないときは、必ず同じ方向に曲がれ、そして曲がり角に番号をつけ覚えてろ、というのを聞いたことがある。

地図はなくともその建物の構造がわかるって何か、本で読んだことがある。

そこでだ。

俺は今から、左に曲がる」


絮源「…でも」


三島「言いたいことはわかってる。

『鉢合わせしたらどうすんだ』ってだろ?

だから………ある程度あいつを引きつけながら、進むしかない。

もし、危険が迫ったら、俺が銃で、あいつを打つ。死なないかもしれんがダメージは喰らうだろ」


絮源「そんなうまく行くわけーーー」


三島「まあそこそこ、自信がある」


絮源「…なんでよ」



三島「阿保だが一応、公務員試験受かってる側の人間だぜ?空間図形などおてのもん♪」


絮源「…………」




…あごめんなんかやっぱりムカつく。




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藤崎・源介・長谷川・太一turn


一方その頃。

現在地:Steam labo-地下5階。

藤崎・源介・長谷川・太一turn



太一「…残念ながら彼らは、恐怖部屋の恐怖細胞…殺人機(ボス)に認識されてしまったようです」


源介「…ど、ど、どういうことだ?」

長谷川「う、嘘でしょ…!?」

藤崎「…」



太一「キラーストレスの具現材料…殺人機(ボス)が大暴れしてます…

暴れるということは…見つけてしまったんでしょう。三島様たちを。…ものすごい熱量を感じます」

源介「…熱量?お前、そんな能力があるのかよ?」

太一「造人の能力です」



太一は目を瞑る。



太一「造人の機能の一つとして、『感知能力』っていうものがあります。

その中でも、『熱感知』ーーー

自分がいる、ある程度の範囲の環境の温度を、感知することができるんです」


源介「え…」


太一「ある程度近づけば、動物がいることを察知することができる。その殺人機(ボス)は、ここからでも動いているのがわかるくらい、ものすごい熱量なんです。

被害者の血や肉、その他諸々を合体させて組み上げたものですからね。熱量はその分、すごいです。


くっ…


僕、殺人機(ボス)を止めることだってできるんですが…」


all「嘘だろ!?」


太一「嘘ではありませんよ……

殺人機(ボス)の、元となった人間のDNA。

僕の充填された毒物と、その元の人間のDNAを融合させ…殺人機(ボス)にかければ、たちまち壊疽を起こします。」


藤崎「太一…お前、凄いやつだったんだな」


太一「しかし…その元となった人間のDNA。

それがなければ無理です。

誰か一人でもいいから,DNAがわかればいいのですが…うげぇ!」


all「…は?」


ーーじゅば。


源介「!!!お、お前、何やって…」

長谷川「げ」

藤崎「おうふ、きっつ………」


太一が何か吐き出した。

どこに持ってたのか、ーー透明な袋に濁った液体を吐く。

ひとしきりえづくと、彼はその袋を掲げる。



太一「…今僕が吐き出したこの液体。

これは、『万能細胞』を液状化したものです。

これに対象となる人間の体液を混ぜ、僕が細工をすればーーー


その対象となる人間を、完璧に殺すことができます。」


all「え」


太一「この万能細胞…対象の人間にかけるだけで、アナフィラキシー、アレルギー反応、また、壊死崩壊が起こります。


前にあった、あの『聖・ユートピア事件………』。

内閣殺人未遂の事件、覚えていますか?」


源介「…ああ」

長谷川「…」

藤崎「覚えているとも」


太一「人のDNAや情報は、血液以外にも、体液、髪の毛などから検出されることは、知っていますよね。


ただし。僕たち造人は、そのDNAを使って、その人間の殺傷成分をつくることだってできる。

犯人である服部政景は、自身の汗や涎が周りに吹き飛んでいることを知らなかった。激情のせいで油断したのでしょう。

その体液を、安藤内閣の"息子"である晴明が"収集"し、自分の中に取り込んで、万能細胞と組み合わせ、服部専用の『猛毒』を作った。


………そして、彼に浴びせました」




藤崎「…ほんと、お前らってよくできてるのな」


太一「でなきゃ、人様たちを守れませんから」


太一がため息をつく。



太一「というわけでその理論を使って、止めることができるんですよ。その恐怖細胞ってのは、あらゆる人間を取り込んでいますから。

その恐怖細胞の一部となってしまった、人物が一人でもわかれば、そのDNAを取り込んで爆撃を作り、恐怖細胞を止めることができるのですが…


…あ」



源介「…なんだ?この血は?」

長谷川「…いっぱい落ちてる」



太一の目線の先にはーーー点々と血が落ちている。




太一「ふむ…どうやら、まだ新しめなようです。」


長谷川「どうするの??」


太一「もしかしたら、ここで殺害されて、殺人機(ボス)に取り込まれた人のものかも。

…ちょっと調べてみますね」



太一は屈んで,指で掬った。

もはや凝固していたので、指にこびりつくだけだった。

ーー瞬間。



源介「…!」

長谷川「すごい…」

藤崎「…」



太一の赤目が、『光りだした』。




太一「血液成分ーーーOK。

血漿細胞ーーOK。

形反応ーーーA型。



全情報統合ーーーー



………!!!」





源介「なんだよ?」


太一「…現在僕の主でありーーーあなたの先輩の一人は、…死にました」



長谷川「…えっ…?」

源介「ちょっと待て、死んだってもしかしてーー」


太一「はい。…この血液の持ち主はーー


『逢沢悟』のもので間違い無いです」




-----

三島×絮源turn

現在地:恐怖部屋



どん!!!!


三島は壁に手をついた。

『左に曲がる』『角に番号をつける』


ーーそれを守りながら。



三島「…⑦!!!…もう少しで解読できる…この部屋の文字がどうなのか!!」


絮源「はあ、はあ………走るの辛い…」


『るうあぁあーーーーー』

首のない化け物は、相変わらず追いかけてくる。


ーー現在。

俺と絮源は、消火栓から抜け出し、

俺は部屋の構造を少しでも理解するため、曲がり角に番号を付けて、敵から逃げ回りながら、部屋中を回っていた。

敵はありがたいことに、そんなに頭は良くないらしく、俺らの周りを追いかけるだけらしい。

もし出口を解錠できた時、絮源に教えに戻っている暇もないので、…絮源も一緒に走ってもらっている。はぐれないように、お互い手錠をつけて。



『るぁあーーーー!!!』


三島「くそが!ちょっと黙ってろ化け物!!!」


ーーばあん!!!


三島「はあ、残り、10発か………」


絮源「弾をぶち続けてるのに、まだ追ってきやがるなんて…」



三島「でもまあ、とりあえず………


わかった。

ここは、

『回』だ!」



ーーー鉄扉。

モニターに図形を書き込む。

ーーピン♪


『ーーー解除しました』


絮源三島「!!!やった!!!」



しかし。


『しーーーん………』


三島「…正解した割に開かねえな。いや、なんでだ?」



-----

太一・藤崎・源介turn




源介「…そんな………」

長谷川「ねえ源介、逢沢って…」

源介「失踪した警察官だよ。俺の先輩だった人。

まあ、かなりトラブルメーカーだったけどな…でも、そんな、あっさり………?」


自業自得とはいえ、流石にこれは酷すぎる。

単に迷った人間まで殺すのか、ここは?



太一「逢沢悟………ああ。

彼、造人ですよ」


源介「はあ!?」


太一「たしか僕の記憶にあります。造人の名前は、一通り覚えておりますから。

彼は、まあー…元いた場所に帰ったのでしょう。それか、僕のように計画を『停めよう』としたのか。それはよくわかりませんが」



源介「…」



でもあいつ。




源介「人間の目だったぜ…?お前みたいに赤くはなかった」



太一「ああ。そういえば、重要なことを話し忘れてましたね」


太一がぽんと手を打つ。



太一「まず、お話を整理しますとーーー

逢沢悟は、元人間の造人、また、未学習でした。

目が赤くないのは、元が人間の要素が強かったからでしょう。

国民の中には、造人はみんな目が赤い、と判断を間違えているような方々もいらっしゃるのですが、赤くない造人もいます。

造人の目が赤い、赤くないという分離起点は…

元が人間の要素が強ければ強いほど、目は人間の色を持っております」


源介「というと…」



太一「こういう想像をしましょう。

しっかりした容器に生地を入れるか、または、壊れた容器に生地を入れるか。


元の容器がちゃんと『人間の形』ならーー

造人は、その人間の情報を得て、目が赤くなることはない。

しかしーー

あとあと繋ぎ合わせて『無理やり人間の形』にしたものならーーー

造人は目が赤くなります。僕ら胎内にある充填液…毒物を作る所が、赤いですからね。そこが透けて出てしまうんでしょう。


僕は、人間の要素が少ない…圧倒的に、器となるこの肉体は、後者の要領で作られました。元の人間は惨殺されて、跡形もなかったんでしょう。脳みそだけは残っていたから、そこだけ引き継いでーー他の細胞を培養して、この体を成している。」


藤崎「………おぞましいな。その違いは、俺も知らなかった」


太一「内閣の手法ですから」


藤崎が震えた。



太一「逢沢悟は、いつの時代かわかりませんがーーー彼にも、元となる人間が存在した。

しかしどうやらーーー取り込まれたようです。」


源介「『恐怖細胞』とやらにか?」


太一「ええ。

あれにはもはや、ほとんど知能はありません。

恐怖度合いだけで、相手を判断するーーそれ以外、何も。

あれに認知されてしまうと、あれを倒すまで、執拗に追いかけてくる。ーーーしかし。



取り込まれてしまった逢沢様のDNA、ありがたく、頂戴しました。

であれば、ーーー


あとは、三島様たちが、この扉を開錠するのを…願うだけです」



太一が足を止めた。



いつのまにかーーー



源介「目の前に…扉?」


藤崎「ついたのだな。太一。ご苦労だったな」


太一「ええ、ここがーーー

恐怖部屋、出入り口でーーー「…おいなんで開かないんだよ!」…



源介「…え?」

長谷川「今、声がーーー」

源介「三島!?そこにいるのか!?」

太一「三島様!聞こえますか!?」



三島「おう!って、た、太一か!?

助けにきてくれたんだな!!!!サンキュー!!

てか、おい、どうやって開けるんだこれ!?」


絮源「…み、みしま…」



太一「!!!…

これは………


よくやりましたね、ここまでは成功です!


しかし、

最後の難関です…


お連れ様を、とにかく『安心させてあげてください』!」


-----扉の反対側。


三島「…は?

一体どういうーーーッッ!!!」




太一「いいですか。あなた方がいる部屋は『恐怖部屋』。恐怖の部屋です。

そこは、恐怖で支配してあり、その恐怖に打ち勝つことができなかったものたちが、今いるその殺人機(ボス)ーーー彼に喰われて取り込まれます。


僕の感覚ですと、三島様はぜんぜん、怖がってない。

むしろ今の状況を楽しんでいるまである。

しかしーーー

隣にいらっしゃる、絮源様ーーー

かなり怯えてらっしゃいますね?」


三島「えっ?」


俺はチラリと横を向く。

いや…太一。

なんでこいつが絮源だってーーーいや、いまはそんなことどうでもいい。


絮源「…」



…こいつ。

さっきまでわからなかったが。

かなり青い顔をしている。そしてーー

ぷるぷると、小刻みに震えていた。

どうやら相当怖いらしい。

ものすごい強がりな雰囲気を出していたから、わからなかったがーーーー



太一「…いいですか三島様。この部屋の殺人機(ボス)は、生き物に備わっている『恐怖反応』に、敏感に察知します。

人間は怖がるとまず、脳の中の『扁桃体』から指令が出ます。

その指令から出る物質ーーー『オレオキシンニューロン』に、殺人機(ボス)は察知するのです。」


三島「おれお…何?」


太一「オレオキシンニューロン…それが大量に分泌されている人間をそのまま食らうと、うまいんだとか」



三島「!!」

絮源「!!」


太一「その物質は、状況に怖がっていると発生します。

絮源様は、かなり、怖がっております。

誰かが怖がっている状態だと…鍵は、あかないんです。

なんとかして、安心させてあげてください!」



三島「んなこと言われても…」

『…るぁああ』

太一「早く!」


やばい。


後ろで、化け物が復活する声がした。

悠長に考えている時間は残されていないようだ。

「…」

俺は天井を見上げる。

もはや俺らが謎解きに成功したのを、察知しているらしく、少しずつ、下がってきていた。もはや、俺二人分を重ねたくらいの高さーーーおよそ350mってか…

そんぐらいしかねえ!!!



『るぁああ………ぁああ………』



後ろから、奴が迫ってくるのを感じながら、俺はーーー


絮源「!」


絮源をそばに引き寄せる。


三島「…絮源」

絮源「な、なに」

三島「大丈夫だ。死ぬ時は俺も一緒だから」

絮源「は…何言って」

三島「お前みたいな不思議な女と最期に会えて楽しかったぜ」

絮源「何言ってるのよ!!!あたしはまだ死にたくないんだってば」

三島「お前が怖がらない限り、ここの出口が開く方法がないんだ…………いよいしょッッと」

絮源「は!?

…ちょっと!!?」

三島「…やれやれ」

絮源「急に抱っこしてどうするつもりよ!!!手足拘束反対!!!強執行罰代行罰反対即時強制猛反対!!!!!!

身体の自由というのは………」

三島「うるせえ黙れ!!!

いいかよく聞け。

こうでもしないと気は紛れない。

怖いやつは、こうやってーーー

最終手段で気を紛らわせる。

それが一番!!!」


絮源「は!!??ちょっーーーー」


三島「絮源。ごめん。

いけすかないやつだと思ってたけど

俺は、お前にも、お前の権利があることくらいわかってるよ。」


絮源「だ、だから何言ってーーーー」


三島「絮源、俺とーーー




恋 を し て く れ」


-----


………がしょん!!!!!!!!



---


開いた!!!



三島「!!!源介…たち…!!!」

源介「三島ぁ!よかったぁあぁあ!!!」

太一「無事、再会ですね」

藤崎「よかったな」

長谷川「みーしま!」

三島「お、おおお!!

源介ぇーー!!!ハッセー!!!」

長谷川「その名前で呼ぶなし!!お疲れ様。お連れさんも無事だったみたいじゃん?」



太一「皆さま!ふせて!!!殺人機(ボス)を鑑定します!!!」


all「うお!?」


『るぁあーーーーー』



太一「…やはり。

あいつ、逢沢悟のDNAを持ってますね。

ならば、その部分を壊せば、全体が壊死するようにします」




ーーーーバキバキ!!!



太一が腕を"折っていた"。血管がだらりと垂れ下がりーーー


太一「毒液噴射、対象物射程圏内、反応ーー"壊死",」


にゅるりと、銃が出る。


太一「ナウローディング、殺傷判定…100%。

周囲の人々は離れてください」


太一の"毒液噴射"だ。


太一「…射殺!!!!!!!」



ーーーーーどごぉぉぉぉん!!!!!!!



俺はちらっと絮源を見る。

彼女はあまりの衝撃に、今度は驚いているようだった。

恐怖感大ありだったくせに。今は微塵もかんじねえ。


…単純なやつだな。




??「やあ……みんな。

お揃いのようだね…???

まさかとはいえど、ここまでくるとは思わなかったよ。

はあ…まったくだ。

我が恐怖部屋を開けるとは。

今その材料作りの真っ只中だってとこだったのに」


all「…その、声は…!!!





安 藤 内 閣 ! ! ! 」


✳︎


内閣「おお藤崎!!!お前、久しぶりじゃないか、我が友ーーー」


藤崎「おい安藤!!お前、何やってんだよ!!!

俺の研究盗んで、何人殺ししてるんだよ!!!何がしたいんだよ、おい!!」


内閣「…悲劇を見せることさ」

源介「…悲劇?」

内閣「造人を使って、この世界を悲劇に包むことさ。

僕は人間というものが、本っっ当に嫌いでね。

心底、滅びてしまえって思ってた。

前に服部のやつが俺を殺そうと乗り込んできた時は、ひやっとしたけどねー。うん。

なんか後にわかったけど、服部も根は似通った思いらしかったけどね。

でも流石に俺これやるまで死ねないって。はは。

あ、ちょっと方針変わったよ。日本撲滅って思ってたけど、どうせなら地球おわしちゃおうと思って。」


藤崎「正気か?…何言ってやがる…」



内閣「まぁーいいや。

その計画のため、君の技術を少しばかり使わせてもらったよ。藤崎………君の技術は、本当に素晴らしい」

藤崎「…いやお前全部盗んでったんじゃねえか」

安藤「ごちゃごちゃうるさいな。ねえ、円ちゃん?」

円「ええ。内閣総理は、素晴らしい実験をなさっているのですわ」


源介「え…ま………?」

三島「まどかって………」

絮源「あ、お姉さん!!」


円「あら。そこのお嬢さん。警察署ぶりね」


三島「…おい!!!そこの女とやら!!」


円「!!」


三島「お前、逢沢悟先輩の、妻だったんじゃねえのかよ!?

夫が死んだんだぞ!?お前、何平気な顔してーー」


円「どうせマリッジに則ってノリで結婚しただけですわ」


源介「な…」



円「いいこと?この世界、恐怖に支配されている。

その恐怖から少しでも逃げようと、みんな人と連むのですわ。人間って本当馬鹿ね。目先の感情だけで容易く動くことができるんだもの。

んで結局、お互い後悔しだして無礼な態度を取り出す。

相手の存在価値を感じられなくなる。それが人間ってものなの。酷い生き物よね。私含めて」


源介「おい…」


円「警察署に入ったのも、まあ最初は偵察みたいなもんだったけど、うーん、誰か一人、犠牲になってもらう人間でも引っ張ってこようかなって思ってたからなんかとろそうなのを連れてきたってわけよ。まんまと捕まっちゃって面白かったわ。そこのお嬢さん」


絮源「…っっ!!!」

三島「堪えろ、絮源」



円「人間なんてね、みんな誰かを疎んでるのよ。

人間の愛情や友情なんて脆いもの。よくわかるでしょ?

…晴明くん!!!」


晴明「…承知」




…………がこん。


源介「な、なんだ…???」

三島「揺れてやがる…」

長谷川「どういう、ことなの…???」



ーーーーごごごごご。




床が揺れーーーー



all「!!!」



巨大なカプセルが現れた。



✳︎

巨大なカプセル。

その中に、男性が一人。

そして、ーーー


妻「やめて…!!!おねがいだからやめて!!!

夫だけは、…お願いだから!!!」


男性の入ったカプセルの前に、泣き叫ぶ、女性がいた。


藤崎「なっ…お前、まさか」

安藤「そう♪そのまさか、さ。

どうやって人間が、『材料』になるのか、教えてあげるよ!


安藤雄一郎総理の、『ユートピア政策』………

造人をこの世の中に搭載することで,人間たちの生活を楽に、安全に、そして豊かにすることーーでもね。


そんなのはただの『表側』。


結局は内側から壊そうとしているのさ。

人間は簡単にに裏切り、欺くものだってことを、人間同士で争わせて、最後にーーー


後悔と絶望に精神を病む。


それがわかりやすいように、『マリッジブーム』を起こした。

夫と妻、いらない同士だと思いはじめた矢先ーー片割れをさらって造人の材料にする。

そしてーー

後悔したもう片割れが、自らこちらの手中に乗り込む。


…これが私が、世の中を滅亡に導こうとしてる計画だよ。」


藤崎「なッ………!」


安藤「結局は造人なんてのは、完全体も補欠も「未学習」となんら変わらない。

ただ単に、「計画遂行」の「時間稼ぎ」のために、完璧な知能と、肉体とを兼ね備えていた、完全体と、補欠、裏で暗躍する未学習、というだけ。

晴明だって、時間稼ぎの一人さ。

後で俺のために、爆発してもらう。」


晴明「つまり。人間に従順な完全人間型AI…人間に使える完璧な存在として騙すための、「完全体」「補欠」

その騙すだけの知能が備わってあるかないかだけのもんだいであって、僕たち全員、未学習と変わりないさ。


ま、そんな説明は置いといて。


…まーずーは。


目の前のこの夫婦から、引き裂いてやろうかなー♪」


妻「やめてーーーー!!!!!」


晴明「ふぉ?」



妻は晴明の短パンを掴む。

衝撃で肩紐がずれ落ちた。彼の華奢な肩が、揺れる。



妻「お願い、私の夫を返して…お願いだから!!!

その人は、わたしの大切な夫なの、お願い、返してよォ!!!

わたし、カフェテリアにいた時に…あなたたちの仲間のような人から、ここに連れてこられたの。夫もここにいるって…『マリッジブームでお困りですか』って………でも、でも、こんなこと…!!!」


晴明「…お前が望んだんだろ?」


妻「…!!!」


晴明「『いらない』。…

お前が望んだんだろうが。

この夫のことなど心底どうでもいいってさ。忘れたのか?

いらなくなった瞬間を狙って、こいつを気絶させ連れてきたのさ。邪魔者が消えて嬉しくねえのか?

今更になってなんだ?怖い時に守ってくれたことを思い出したってか?反省したって?そんな都合のいい話があってたまるかよ。馬鹿が」


妻「…」


安藤「こうだから嫌いなんだ、人間ってのは!!結局全て感情だけで動いてる生き物じゃねえか!!!だとしたら動物の方がよっぽどいい、よっぽどいいよ!!だから俺が壊してやるんだ、こんな世界を全てな!!!!

晴明ー!!!!!!!」


晴明「は!」



いつのまにか部屋の奥に、巨大なミキサーが現れた。

そしてーーー


妻「やめてえええええええ!!!!!!!」


ミキサーの上にーーー夫が入ったカプセル。


そしてーー


妻「いやぁあぁああああぁああ!!!!!!!!!」


ーークレーンの手が、外れた。





✳︎

源介inside now.



音は、『聞こえなかった』。

耳が遮断していた。


全ての感覚器官が使い物にならなくなった。

景色が、白黒になっていくーーー

ショック反応だろうか???


汗が、止まらない。


自身の髪が、頬に張り付いている。ーー


それは、こいつらたちも同じだろう。

人が死ぬ現場を、今、見たんだから。

こいつはこうやってきっと、造人や、殺人機やら、

ありとあらゆる恐怖細胞の材料となるものを、集めてきたんだろうな。



安藤「ははははははは!!!!!

…哀しいか??卑しい人間よ。

都合のいい話なんてのはこの世の中に存在しねえ。

俺が許さねえよ!!!


全ては、研究者…

『Steam labo』の元に………!!!!」




そう、安藤が手を広げた。

ーー瞬間。



妻「…!!!」


クレーンの手腕が、ゆっくりと、

妻の方向に向かっていく。


安藤「…どうだ?

お前も夫を追って死ぬか?それとも…


お前も、『造人』になるか?」


妻「!!!」



安藤「造人になったら、長い命と不老、さらに、身体強化を授けよう♪

ま、そのかわり、人間特有の感情を失い、自由を失い、

単なる動くだけの駒になるだけだけどね♪


死んで造人の材料になるか、それとも、造人になるか。


これが死んだ夫への、償いだと、思わないか………???」


妻「………えっと………」


安藤「だーいじょうぶだいじょうぶ!!

地上の人間には『失踪扱い』にして報道するしな!!!

少し容貌ももじるしー、それに、

…誰もお前のことなんか待ってないって!!!」


藤崎「安藤ォオオオオォオオオ!!!」


安藤「なんだよ藤崎うるさいなぁ。

やっぱなんか邪魔だからさー、お前ら、やっぱり俺の娘に殺されなよ。…晴明!!!」


源介「なっ…!!!」

藤崎「待て!!!おい、安藤!!」

長谷川「だめだ藤崎!そっちにいったらーーー」



ーーーがこん!!!!!



扉が閉まりかけた。ーーー

どうやら安藤と俺らの間にーーー鉄の扉があったらしい。今まで気づかなかったが。

…2000tと表記がある。


その間でーー晴明が、両足で扉を受け止めたまま、ニタニタと笑っていた。


晴明「おっと危ない……僕が殺しちゃうところだった……」


三島「藤崎お前、馬鹿か!!!

潰されちまうじゃねえか!!!」

藤崎「安藤!!!この野郎、この野郎!!!」

晴明「悪いけど藤崎ぃ、ここから先は通さないよ?

今からまた材料を作るんだからさー、大人しく弥夜に殺されるんだ。お前らの床、まもなく抜ける。

落ちたら…そこは、弥夜の棲家さ」


藤崎「安藤ォオオオ!!!!!」

絮源「抑えて、藤崎さん!!!」

源介「おいバカ、暴れんなっ、死んじまうだろ!!」

三島「藤崎堪えろ!耐えるんだっ!!!」

藤崎「離せーー!!!」


ーーごごごごご。


床が揺れ出した。


晴明「…〽︎かーごめかごめー、かーごのなーかのとーりぃはぁー」

藤崎「待て!!!くそ!!!安藤!!!」

晴明「〽︎いーつーいーつ………うきゃ、っ、ははははっ、藤崎おもしろーい!!!」

源介「やべえ!!!床が………」

三島「みんな捕まるんだ!!」

絮源「ひゃ、ぁあ!!!」

長谷川「互いに手を繋いで!!!」

藤崎「…………」

晴明「ふふ、はははは、面白いね絶望した人間の顔って!!!楽しいね、あはっ、もっと遊ぶー!」



ーーポチッ。



晴明が懐から、何か赤いものをだす。

そしてーーー


藤崎「あ………!!!」



一気に『それ』を、押した。






----

一方その頃、地上。





とある財閥「…えっ?」


完全体造人

「………ショートします、ショートします。

離れてください。

ショートします。完全停止まで、10……………9……………8………」


人間「ど、どう言うことだよ!!??おい!!!なんかうちの造人くんがちょっとおかしいぞ!!!

身体中に電気が走って、膨張してやがる!!!!!!」



完全体造人

「7…………6……………5ぅう…………」


人間「も、もはや、

人の形をしておらん………!!」



完全体造人

「4…………3…………」



人間「肉の、塊だ…………!

うわぁあ!!!逃げるぞ!!!!」



完全体造人

「2…………1……………








……0」



-----

最深部。

仁比山turn


「…う、ん」


ポーン、ポーン、ポーン、ポーン………




あれ、あたし…………

どう、なったんだっけ………?


兄のことを調べようとしてて、それで………


ああ。

たしか。

捕まったんだっけな。…奴らに。


じゃあここは、

研究所…ってこと?


「………」


謎の機械音だけが、部屋の中で響いている。

人の気配は、しない。



「……!」


あたしはそっと片目を開ける。

長い長い、無数の管。


ーーそして。


「…」


どうしてだろう。最初から視界に入ってたはずなのに、

本能的に、避けてたものーーー


巨大な巨大な、カプセル。



「…!!」


その中に、『女の子』が入っている。

自分の長い髪の毛に、身体を埋めるようにして。

そして、その肌の白さ、異様な雰囲気から、



(この子は、人間じゃないーーー)



全身の細胞が、それを知らせた。





どうしよう。



あたし、今、




造人と一緒にいるんだ………!






仁比山「……ッ」


この子が一体、どれだけの威力を持つのかはわからない。

それはわからないけど。


とにかく無事に帰してもらえそうにない………ということだけは、はっきりとわかる。殺すんだろうか。あたしを。



「………くっ」


ごめん。

兄貴。



あたしーーーー





仁比山「あんたの仇、取れそうにない「うわぁあああぁああ!!!!!」………



ーーーーどすん。



仁比山「…………え?

って、源介たち(あんたら)!?

ど、どっから落ちてきてんのよ!?」


源介「はっ、仁比山!!!お前無事だったか!!」

三島「おお!あなたが仁比山さん!

お噂はかねがね…いや、美人ー!!」

絮源「ちょっと三島ァ初対面にそれはないんじゃないのォ変態」

長谷川「いたたたた…もっと優しくおとしてくれればいいのにぃー」

藤崎「………」



いや、これは一体何??


✳︎

仁比山「なるほど。そういうことね。

色々繋がったわ」


藤崎「…これ以上説明している暇はねえ。

とりあえず、弥夜の爆発を止めねば」


藤崎がすっと立ち上がる。



藤崎「晴明が押したあの『装置』…

あれは…造人の自爆スイッチだ。

地上の、造人やその装置の近くにいた者…みんな爆風に巻き込まれただろうな」


仁比山「そん、な………」



藤崎「こうしちゃいられねえ、こうなったら、弥夜の爆発を阻止しねえと…!!!

こいつが爆発したら、それこそーーー


世界の終わりだ。



…ん?







爆発するまで、あと、




………30分!?!?」



all「30分!?」




全員の顔が青ざめた。



太一「太一、こいつの爆発をなんとか停める方法、知ってないか………って、太一!!??」


太一「すみませんっ…親機である、彼女に変更が加えられたから…僕も…っ、もう、抑えられません………!!」


太一が胸を押さえている。

身体中に電流が走り、皮膚に壊死が始まっていた。

もはや一部はドロドロに溶け、血が吹き出し、服にシミている。

そしてーー立っているところに、血溜まりができていた。


源介「…くそ……!」

仁比山「そんな…!」

絮源「一体どうしたら…!!!」

長谷川「俺たち終わりなのおお!?」

三島「…っ」

藤崎「…」



もしかしたらーーー

やっぱ、最初に思いついたーーー『あれ』。


脳裏に、『あれ』が閃く。



あの時は、Steam laboに乗り込む前だったから、言わなかった、けれどーーー


源介。…


藤崎「…っ」


『あれ』をするには、やはり、大博打だろう。

もしかしたら、失敗するかもしれない。

そしたら、源介の命はない。ーーでも。


(弥夜…)


俺は弥夜の世話をしてきた。

いつでも、弥夜のことは信じてきたし、理解してきた。

彼女ことならーーー実父よりわかる!!!




藤崎「源介、ごめんっ!!!

俺を恨め!!!!!」


源介「えっ………のわ!!!」

仁比山「えっ…ちょっと、藤崎!?」





ーードン!!!




ーーーーがっしゃあぁぁああああぁあん!!!!!


✳︎

源介inside now.



ーーーーがっしゃあぁぁああああぁあん!!!!!



視界の中にガラスが飛ぶ。

黒い何かが、体に巻きつくーーーー

いや、これはーーーー髪の毛か?柔らかい。

絹のような美しい髪に、俺の体が埋もれていく。


そしてーーーーその、小さな主にーーー



ーーどしん!!!!!

「……!!!」



体当たりした。

どうやら、ガラスを突き破って弥夜にぶつかったらしい。え?いや今何が起こったの。こうなった原因はーーー


そうだ。

俺藤崎に押されたんじゃん。

藤崎が訳のわかんないこと口走りながら、俺の背中を押したんだ。おい。藤崎。お前何すんだよ。頭大丈夫かよ。

こりゃ一言言ってやんねえとーーーー


源介(…いってねえななにすーーーーん??)




仁比山「…ちょ、ちょっと……」

三島「いやこれ一体」

長谷川「どういう状況??」

絮源「藤崎ぃ………」


藤崎「………」





あれ?

なんで口が塞がってんだ?

しかも?

なんか視界が、暗い………?






「…んんっ!?」




俺は、『顔を離す』。



あー。

なんか、今気づいた。

てかなんで。




源介「なんで俺弥夜に接吻してんの!!??」





とぅびーこんてぬーぅ。



-----


あとがき。


やっほー。今回は絮源おりゃんせが担当だよぉ。これでも一応新人女子アナ。よろしくねえ。

いやー、ほんと頑張ったわ。今回。

三島と一緒に、あんな変な部屋に閉じ込められるなんてね。おお怖。思い出しただけでも怖。


え?

そういやすごいこと言われてたって?


んー、なんだっけ??

もう怖すぎて覚えてないわ…


……

…………



嘘嘘めっちゃ覚えてる(震)

あたし、あいつから恋してくれって言われたんだったよ!!!!は!?まじ何考えてんのあいつ!?いや結果的に無事助かることができたからよかったんだけどさ!?いくらなんでも……はぁーもうあたし今度どうやってあいつと顔合わせたらいいの!?



あ、合わせなければいいのか。

作者ー、…五巻目は辞退で☆


(だめっすby作者)



-----

参考資料:


『ケイビング入門』

https://pioneercaving.club/%e8%b3%87%e6%96%99%e9%9b%86/%e3%82%b1%e3%82%a4%e3%83%93%e3%83%b3%e3%82%b0%e5%85%a5%e9%96%80-%e5%ae%9f%e6%8a%80%e7%b7%a8


『キラーストレスって何?』

http://www.ee-life.net/hatena/killer.html



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