第八話 秘密の扉には秘密の理由があります
僕は隠し扉に手をかけた
この先にある真実を求めて
いざ!
「…ん?開かない?アイリさん開きませんよ?」
「ええ、開きません。」
「…カギ、掛かってるんですね。」
「当然です。」
「カギ、持ってるんですよね?」
「ええ、もちろん持ってます。」
「でもこの扉、鍵穴無いですけど?」
「ええ、無いです。」
「どうやってカギ開けるんですか?」
「そもそもどうしてイキナリ開くと思ったんですか?」
「いやぁ、その、ノリで、開くかなぁ、なんて。」
「‥‥信じられません。」
カッコよく開けようとしてた自分が恥ずかしい。
凄い恥ずかしい。
この扉をあけて未知なる世界に踏み出すつもりだったのに。
新たなる第一歩を踏み出す予定だったのに。
振り返れない。
恥ずかしい。
とてつもなく恥ずかしい。
二人っきりで女性の前でカッコつけて、コレ。
コレはない。
やっちまった。
ついにやっちまった。
どうする?どうする?
‥‥冷静になれ。
動揺するな。
今まで通りにすればいい。
大したことはない。
何事もなかったように振る舞うんだ。
よし!
「いやいやいや、今の開くところでしょう?」
「そんな不用心なわけないでしょう。大事なものしまってるのに。」
「どうやって開けるんですか?カギ、あるんですよね?」
「そもそも、その扉は鍵で閉まってるわけじゃありません。」
「え?どういうことですか?」
「鍵で開けるわけじゃないんです。」
「でもカギ持ってるんですよね?」
「持ってますよ。」
「カギで開けるんじゃないんですか?」
「違います。」
「じゃなんでカギ持ってるんですか?」
「この扉の鍵ではないからです。この扉に鍵穴無いですから。」
「それじゃどうやって開けるんですか?まさか魔法とか?」
「そんなわけありません。何ですか魔法って、子供じゃあるまいし。」
「…じゃどうするんですか?いい加減教えてください。」
「あちら側に回ります。」
そういうとアイリさんはちょっと離れたところを指さした。
「ええ?じゃなんで?この扉、指さしたじゃないですか?」
「指さしただけです。入口だなんて言ってません。」
「なんで指さしたんですか?紛らわしいですよ?」
「あなたの覚悟を聞くためです。」
「!僕を試したんですか?」
「確認です。人聞きの悪い事言わないでください。」
「同じですよ。…はぁ、確認の結果はいいですか?」
「はい。では行きましょう。」
「それで、この扉、一体何の扉だったんですか?」
「分かりませんか?」
「まさか、扉が置いてあるだけで、何もないとか?」
「本当に分からないんですか?」
「分からないから聞いてます。」
「…出口です。」
「?え?なんの出口ですか?」
「これから入る隠し倉庫の出口です。」
「出口…こっから入れないんですか?」
「‥開かないの、確認しましたよね?」
「…しました。」
「行きますよ。」
「はい。」
そういうと僕はアイリさんと少し離れた場所に回った。