第四話 子供に大人の事情は分からない
僕はお侍さんに尋ねてみた
「いったい何の話ですか?」
「君が何も知らないという話だ。」
「僕が何を知らないっていうんですか?」
「何もかもだ。」
「そこまで言うなら教えてください。僕だって新米でも兵士です。」
「だから知らんのだ。」
「兵士の何がいけないんですか?」
「何もいけなくなどない。」
「そうですよ。国のために戦ったんですから。」
「そうだな、国のために戦った。」
「そうです!」
「だがな。」
「だが?」
「戦など本当は無い方がよいのだ?わかるな?」
「そのくらいわかります。」
「ではなぜ、戦がある?兵士がいる?わかるか?」
「敵が攻めてくるから戦が起きるんです。だから兵士がいるんです。」
「そうだな。だから戦があり、兵士が必要になる。」
「そうですよ。他に何があるんですか?」
「ではいつからだ?」
「は?」
「戦はいつ始まった?」
「二か月前です。」
「そう、二か月前からだ。」
「それがどうしたんですか?」
「では、この二か月間の間にあった違いがわかるか?」
「違いですか?」
「そう、戦があるときと無いときの違いだ。」
「かなりあると思いますけど…」
「例えば?」
「まず・・・」
「まず?」
「敵襲に備えますね。」
「どうやって?」
「常時待機の部隊が増えます。」
「それから?」
「警備の数も増えます。」
「それから?」
「哨戒の部隊も増えてます。」
「それから?」
「哨戒の回数も増やしてます。」
「まるで君が増やしたような物言いだが、他には?」
「別に僕が増やしたりしなくても当然兵士は忙しくなります。」
「そうだな、それから?」
「そんなんなんで当然兵士の数も増えました。」
「そう、それだ。」
「何がそれなんです。」
「まだ分からないのか?」
「兵士の数が増えたことなら分かってます。」
「その続きだ。」
「兵士の増えた続きですか?」
「そうだ。」
「国防に力を入れている。」
「それで?」
「軍備拡張をした。」
「それで?」
「軍事力が上がった。」
「それで?」
「それで終わりじゃないんですか?」
「だから君は何もわかってないのだ。」
「あなたは何をわかってるんですか?」
「君の見えていないことだ。」
「それ、僕に必要なことですか?」
「必要らしい」
「本当に必要ですか?」
「ギルバート殿の話によるとな。」
「いったい何が必要なんですか?」
「続きだ。」
「なんの続きですか?」
「君の知っていることの続きだ。」
「もったいぶらずに教えて頂けますか?」
「君は軍に所属している。」
「はい。」
「軍が軍備増強をしていることはわかるわけだな?」
「はい。」
「ではその先を少し想像してみるんだ。」
「その先ですか…」
「軍備増強には何が必要だ?」
「増強には、兵士の数と…」
「兵士を増やすためには何が必要だ?」
「宿舎や装備…」
「宿舎や装備や増やすためには何が必要だ?」
「軍の決定と…予算!」
「そうだ。予算、つまり?」
「お金だ!」
「そう。軍備にはお金がかかる。それも多大な。」
「そうですよね。考えたことありませんでした。」
「そうみたいだな。」
「当たり前のことですよね。」
「そうだ。では当たり前ついでにもう少し考えるか。」
「まだあるんですか?」
「こっからが本番だ。」
「もう大分来たと思うんですけど。」
「その当たり前の予算はどこから出てる?」
「それは当然国からですね。」
「では国はどこから資金を得ている?」
「それは…国ですから…」
「それは?」
「税金ですよね…」
「だいたい当たりだ。」
「違うんですか?」
「戦時下でなければ当たりだ。」
「戦時下だと違うんですか?」
「国の対応によるがこの国は少し違うな。」
「税金じゃなかったら他に何があるんですか?」
「もちろん税金も使われる。」
「増税されるってことですか?」
「もちろん増税もされる。」
「そのほかがあるってことですか?」
「この国では戦時国債が発行される。」
「税金とは別にですか?」
「別にだ。」
「そんなこと全然知らないです。」
「そうだな、知らない人も多いな。」
「どうしてですか?」
「戦時国債の購入対象者は限られてるからな。」
「誰なんですか?」
「君は知らなくていい事なのだろう?」
「いえ。僕が間違ってました。」
「ほう。素直だな。」
「僕は、支給品は支給されて当然と思ってました。」
「多くの兵士はそうだろう。」
「だけどそれじゃダメなんです。」
「なぜかね?」
「当たり前ですけど支給品は降ってわいてくるわけじゃありません。」
「そうだな。」
「すべて軍が購入しているんです。」
「そうだな。」
「当然税金で。」
「少し分かってきたな。」
「戦の準備にはお金が必要なんです。」
「そのとおりだ。」
「きっと僕が思うより多くの資金が必要なんです。」
「そのための戦時国債だ。」
「購入って言いましたよね?」
「ああ。」
「誰が購入するんですか?」
「軍に属さない一般人さ。」
「でも戦時下で増税もされるのに買いますか?」
「本人の意思は関係ないからな。」
「強制なんですか?」
「表向きは自由意志になっている。」
「じゃ実際は?」
「君の言った通り強制だ。」
「そんな…だって・・・」
「みんながみんなお金持ちってわけじゃない。」
「それじゃ…」
「当然、買いたくない人、買えない人もいるだろう。」
「買えない人はどうなるんですか?」
「大半は借金だ。稀に逃げたりする人もいるみたいだがな。」
「戦時国債の購入は一回だけなんですか?」
「戦が長引けば一回とは限らん。」
「でも、貧しい人々に何度も購入させたら。」
「当然、生活は立ち行かなくなる。」
「そんな…。」
「だが国を守るのに必要なのだろう?」
「国民を守るためです。国民が苦しんでしまったら意味がない。」
「ならどうする?」
「どうするって・・・」
「少ない予算と少ない兵で戦うか?」
「そうなことしたら戦に勝てません。」
「そうだ。ならどうする?君に何ができる?」
「分かりません。僕にできることなんて・・・」
「難しく考えることはない。事実、君はやって見せたぞ。アレン。」
「?ぼくがですか・・・?」
「君は答えを知っている。」
「分かりません。僕は何をしたんですか?」
僕は頭が混乱してきたこのお侍さんは(レイ)は何を言っているんだ。
僕は単なる一兵卒で‥‥勇者?
そうだ、この話の始まりは、町の人が僕を勇者だって、
町の人はすごい喜んでて、
何で喜んでるんだ?
戦に勝ったからだ。
勝つとどうなる?
戦が終わるんだ。
戦が終わるとどうなる?
「戦が終わった。僕たちは戦を終わらせたんです。」
「気が付いたようだな。」
「戦時下じゃなくなる!」
「戦時下じゃなくなると?」
「戦時国債は発行されない!」
「その通りだ。やっと分かったか。」
「じゃあ増税も?」
「できなくなるだろうな。」
「僕のやったことってゆうのは?」
「ああ、あってる。戦を終わらせた。が正解だ。」
「それで町の人は喜んでたんですね?」
「そうだ。実際、戦時国債が発行される寸前だった。」
「そうだったんですか?」
「ああ、我々が時間稼ぎをしていたからな。」
「そんな事してたんですか?」
「ああ、ギルバート殿の元でな。」
「ギルバートさん?」
「そうだ。もちろん協力者は他にもいる。」
「でも、なぜ戦時国債を発行させないように時間稼ぎなんかしたんですか?」
「そこから先は私が説明します。」
「えっと・・」
「アイリです。巫女のアイリです。」
「アイリさん。よろしく。」
「それでは外に行きましょう。実際分かりやすいので。」
「え。あ、はい。」
「アイリ君。拙者が行ってもいいが?」
そういうとお侍さんが名乗り出てきた。
呼んだわけではないが。