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第97話 ラスベガスって

ラスベガスに行きます。

(3月19日の夕方です。)

  夕方、シアターのマネージャーが来て、明日の公演の前にステージ等を確認して貰いたいとの事だった。


  今日は、アメリカのロックグループの公演だそうだ。私の知らないグループだったが、アメリカでは、そこそこ売れているみたいだった。


  今日の開演は、午後8時からと言うことで、何故そんなに遅いのと思ったが、こちらではディナーを食べながら楽しむのが普通らしいのだ。


  しかし大きい劇場だ。4300人も入ったら、どうなるんだろうか。ステージの上に立って、色々見ていたら、怖そうな叔父さん達がゾロゾロと入ってきた。


  ワセリさんが、今日、公演する予定のグループだと教えてくれた。見た感じ50歳近いの叔父さん達だ。ギター担当は、日本人のような顔をしている。シノダさんと言うそうだが、私達が、ステージを降りようとしたら、『お前達は、シルバー・プリンセスか?』と聞いてきた。ワセリさんが、『そうだ。』と言うと、1曲歌ってくれないかと言う。でもピアノもないし。まさかアカペラで歌う訳にも行かないし。


  そう言ったら、『伴奏は任せろ。』と言うのだ。それでは、『アナ雪』の『レット・イット・ゴー』をアリスちゃんとデュオで歌うことにした。


  マイクの前に立つと、綺麗なイントロが聞こえてきた。エレキギターがこんなに綺麗な音を出すなんて驚きだった。


  アリスちゃんが歌い始める。途中のサビ部分から私がハモって入っていく。最後まで、綺麗な伴奏だった。この叔父さん達、恐るべしだった。


  シアターのマネージャーが、今日のコンサートにもワンポイントで出演してくれないかと言ってきた。しかし、この国では、未成年者が午後8時以降に労働するのは厳しい制限があるそうだ。それに、アメリカに招聘してくれたサニー・ミュージックのプロデューサーとの契約もあるので、無理だとワセリさんが断っていた。


  下見が終わったので、シアターを後にして、食事に行くことにした。今日は、アメリカに来て初めての日本料理店に行くそうだ。


  お店は、ホテルの中にあり、埼玉県出身の寿司職人がオーナーだそうだ。予約の取りにくい店ベスト3に入っている超有名店で、寿司以外にも色々な料理を出している。


  私は、お寿司の中では、カルフォルニア・ロールが好きだったので、そればかり注文していた。後、卵焼きも大好きだ。本当に、久しぶりのご飯だった。


(3月20日です。)

  今日は、朝からコンサートの準備だ。最初は、ステージスタッフさんに挨拶をする。こう言うところは、日本と同じだ。照明、音響それに背景やスクリーンを操作する技術さん達だ。


  色々と調整している時に、サニー・ミュージック米国支社の支社長とプロデューサーの方が来られた。今日、初めての米国公演に立ち会うそうだ。司会の方が来られた。このシアターの専属司会の方で、大きな体格の叔父さんだった。


  シナリオに目を通したところ、私達の紹介は、『シルバー・マスク・プリンセス』で行うそうだ。衣装も、プロデューサーが準備したものを着るそうだ。なんか嫌な予感がする。


  支社長もプロデューサーも、私達を遠い日本から来たポッと出の売り出しタレント程度にしか見ていないようだった。ワセリさんが、一生懸命気を使っていたが、ボスの命令には絶対服従と言う感じだった。


  プロデューサーと支社長がコソコソ話し合っていたが、私には筒抜けだった。どうやら、この公演の前に、新たに米国内のマネージメント契約を結ばせるつもりらしい。


  その契約を結べば、これから1か月間、指定した場所で公演をしなければならないし、テレビなどにも出演しなければならないらしい。しかも、マネージメント料は、報酬の7割と言う信じられない額だ。


  ステージでの音合わせが終わり、午後のリハーサル前にプロデューサーが、分厚い契約書を持ってきた。ワセリさんが、『米国公演をする上での確認書だ。』と言っていたが、目が踊っていた。


  私は、小さな文字で埋まっている契約文書の中で、米国での公演活動の支配権及び報酬の割合、そして全活動の服従義務についての記載箇所に線を引いて、この箇所の条項には納得できない。それで公演ができないのであれば、日本の本社との契約を白紙にすると申し入れた。


  プロデューサーは、顔を真っ赤にして怒鳴り出したが、私が『威嚇』で睨みつけたら、黙ってしまった。米良さんに、アメリカ公演での契約はどうなっているのか確認したら、タブレットに契約書のPDFを表示してくれた。そこには、私達の米国公演は、サニー・ミュージックと私達の間に結ばれている基本契約以外の義務は一切生じないと言う文言が書かれており、支社長とプロデューサーのサインもしっかりと記載されていた。


  私は、これからの活動は、私達がやりたいようにやるので、黙って見ているように優しくお願いした。勿論、『威嚇』は掛けっぱなしだったが。


  午後のリハーサルは、衣装以外は順調だった。衣装は、白色と黒色の2着だったが、スカートの丈が異様に短いのだ。これでは、パンツが見えてしまいそうだ。


  ワセリさんが、この国の『シルバー・プリンセス』HPを見せてくれたが、ミニスカートが極端に短くなっている。イラストに至っては、パンツが少し見えているのだ。ああ、この国って。


  でもサヤちゃんが、この衣装でも構わないし、どっちみち、こっちの公演なんか、日本じゃあ誰も気が付かないだろうから、大丈夫と言って承諾してしまった。


  少し恥ずかしかったが、新衣装でリハーサルを通しでやってみた。うん、皆の英語も、キチンと英語になっている。これなら大丈夫だろう。


  開演直前になって、銀色のマスクが渡された。1曲目は、これを付けたまま歌ってくれと言う。クリスマスか仮装パーティーで目だけを隠す紙製の安いマスクだった。プロデューサーのセンスを疑うが、あのプロデューサーじゃあ仕方がないと諦めて付けることにした。


  コンサートが始まった。シアター内は、満員だった。驚いたことに、後ろの4分の1位は、日系の若い男の子達だった。私達のニューアルバムCDを買うと、コンサート・チケットの応募QRコードが入手できるそうだ。一体、何枚売ったのだろう。


  QRコードもいい値段で売買されていたそうだ。なんでも商品になる国だった。


  暗いステージにスポット照明が当たる。司会の叔父さんの前振りが始まった。一人一人を紹介している。聞いていると、恥ずかしくなってしまうような内容だった。


  紹介が終わったので、演奏が始まる。先ずはみんなで前奏が始まる。オリジナル曲の『ひと夏の思い出』だ。アリスちゃん、後ろでタンバリンを振っている。途中のソロパートから入っていく。会場では、初めて見るアリスちゃんに、驚いていたが、その歌声に、さらに驚いていた。


  1曲目終了時、マスクを外した。アリスちゃんが、トークを始めた。


  「皆さん、始めまして。私達『シルバー・プリンセス』の初アメリカ公演にようこそ。」


  綺麗なクイーンズ・イングリッシュだ。続いて、ホルストの組曲『惑星』の第4曲。日本語訳では『木星』。イギリスのコラールである


  『I vow to thee,my country』


  をアリスちゃんが歌う。サヤちゃん達の素晴らしい前奏に続いて、アリスちゃんの透き通った歌声が、会場内に響き渡る。後方では色とりどりのキンブレが揺れている。何台ものテレビカメラが、そのシーンを撮影している。歌い終わったら地鳴りのような物凄い拍手だった。前に座っているセレブ風の女性が涙を流していた。


  続いて、ピアノのイントロが始まる。皆が知っている『アナ雪』の主題歌だ。


  今回は、私から歌い始める。アリスちゃんより少しトーンが低いが、映画の主題歌を歌っていた人も、これ位だったような気がする。


  例のサビの部分から、アリスちゃんが高音パートで入って来る。もう会場内は、大興奮だった。


  それから、『シルバー・プリンセス』のオリジナル曲3曲をサヤちゃん達が歌う。ヴァイオリンやヴィオラを置いて、踊りながら歌うので、ピアノの伴奏だけの筈が、ギターとベースそれにドラムまでまで聞こえてきた。


  見ると、後ろで昨日の叔父さん達が、バックバンドをしている。ポスターやパンフレットにも書かれていないので、急遽決まったのだろう。しかし、叔父さん達、皆、とても上手だった。


  一旦、10分間休憩に入った。今度は、黒の制服に着替える。やはりスカートが極端に短かった。着替え終わったら、さっきの叔父さん達の1人、シノダさんが、打ち合わせに来ていた。アリスちゃんとサラちゃんで応対していたが、聞いたらニューヨーク公演まで契約しているそうだ。休憩終了後、叔父さん達の持ち歌を1曲歌ってから、私達の楽曲になるそうだ。


  休憩が終わった。最初は、叔父さん達だ。アメリカでは結構知られているようだったが、私の知らない曲だった。でも、お上手。このロックバンド、『何とか公園』と言うグループ名だそうだが、初めて聞く名前だ。司会の人が、大興奮して紹介していた。


  次は、私達の番だ。最初は楽器演奏だ。私が、ショパンエチュード作品25ー11『木枯らし』を演奏する。会場が静まり返ったが、演奏を終了した途端、会場内が爆発したかのような拍手だった。


  次に、サヤちゃん達が、ドヴォルザーク作の

弦楽三重奏曲


  ハ長調 作品74


  を演奏する。通常、弦楽三重奏は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの3台で演奏するが、この曲は、ヴァイオリン2台ヴィオラ1台で演奏する。私は、低音美を主とした伴奏だけだ。


  あれ、後ろの叔父さんグループのベーシストさんが、低音部を弾き始めた。とても綺麗な音だ。軽くドラムもリズムを取り始めた。


  サヤちゃん達の演奏が引き立っている。


  演奏が終わった。また、物凄い拍手だった。


  それから、アリスちゃんがカーペンターズのナンバーを歌う。サヤちゃん達がバックコーラスと伴奏だ。私は、時々デュオで歌う。



  最初は、


  『遥かなる影 Close To You』


  だ。カーペンターズが初のビルボード・チャート1位を記録した曲だ。


  次も、有名な曲だ。


  『イエスタデイ・ワンス・モア Yesterday Once More』


  この曲は、中学校の音楽の教科書にも掲載されている曲だ。会場の中から、誰かが外に飛び出して行った。とあるテレビ局のプロデューサーが、特別番組を組むための連絡をするためだったらしい。その次の曲は、


  『青春の輝き I Need To Be In Love』


  カレン・カーペンターさんが、最も気に入っていたのが、この「青春の輝き」だったそうだ。続いて、

  『トップ・オブ・ザ・ワールド Top Of The World』


  日本でもおなじみの曲だ。カントリー調の弾むようなメロディだ。最後は、


  『シング Sing』


  この曲は、テレビ番組『セサミストリート』の挿入歌としてリリースされた作品だそうだ。


  カレンさんの声よりは若々しい声だが、歌の雰囲気は、カレンさんの再来と言われてもおかしくない。


  最後に、『シルバー・プリンセス』のオリジナル曲だ。


  『アーモンドチョコの想い出』


  の、コーラスバージョンだ。間奏で、サヤちゃん達一人一人の独奏が入る。後ろの叔父さん達、邪魔にならないように、伴奏している。全然練習していないのに、本当にお上手です。


  19時40分、全ての曲が終わった。アンコールは、


  『ムーブ・オーバー Move Over』


  と言う、『ジャニス・ジョップリン』さんが歌っていた曲だった。私が、メインボーカルで、アリスが高音部にハモってくる。バックバンドのシノダさんのギターが絶妙だった。


  公演は、大盛況だったが、シアターから出るのが至難の技だった。出待ちの人達が1000人位いるそうだ。もう、お腹も空いているし、本当に困ってしまう。


ラスベガス公演は、大成功です。

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