第89話 第2回目訓練です。
魔防隊も実力を付けてきました。
(2月19日です。)
今日は、魔防隊の第2回目の訓練日だ。朝9時に、新西湖前進拠点に『空間転移』したところ、美玲さんをはじめ、全員が揃っていた。連隊長が、新装備のタングステン弾の威力を試したいと言ってきた。私は、シールドを張って、脇によけた。前回は20発以上の弾丸でなければ破ることのできなかったシールドだ。
MP5を構えた隊員が、前に出てきた。ボルトを引き、発射準備完了だ。きちんと肩付けをして、狙いを外さないようにしている。3点射をしてきた。シールドは、3発目で割れてしまった。凄い威力だ。以前の鉛の玉だと、鉛がつぶれるエネルギーの分だけ、シールドに影響を与えないし、鉛では柔らかいので、容易に貫通できなかったようだ。でも、硬いタングステンの弾頭は、エネルギーを全て弾頭に注ぎ込まれるので、貫通力が半端ないのだ。でも、タングステンって、結構高いので、この部隊専用に特別注文したみたい。
ダンジョンの方に向かって驚いた。ダンジョンの入口に階段が付いている。深さ20mまで続く階段の先は、コンクリートで固められた四角い箱のような空間になっており、分厚い鋼鉄製の扉が付けられていた。扉の先は、15m四方の広さで、奥にダンジョンの入口が、やはり鋼鉄製の扉でとじられていた。一見、大きな金庫室の扉のような感じだった。
今日は、訓練の他にダンジョン内に監視カメラを設置する計画もあり、工兵班が同行するそうだ。
金庫のような丸い扉を開けると、ダンジョン入口をふさいでいる岩盤が見えた。その岩盤を土魔法で、いとも簡単に穴を開けてしまう。これで、扉さえ開ければ、自由にダンジョンに出入りできるはずだ。
最初は、当初の計画通り、散弾銃部隊だ。もう、何も見えなくても関係なく連射していく。これで入口付近のゴブリンどもは、死に絶えた筈だ。
今日は、死んだゴブリンから、小さな魔石を取り出す訓練も実施した。私の元の世界では、ゴブリンの魔石なんてクズ同然だったが、こちらの世界では、非常に価値のある物らしいのだ。
あと、ダンジョンの壁を調べる別動隊も用意した。もしかするとミスリル鉱山が見つかるかも知れない。見つかったら、国家財政も大分楽になるものと思う。
私の元の世界では、ミスリル銀と金の価値は同等だったと思う。記憶がはっきりしないが、確か、そうだった。ミスリル銀は、鉄よりも硬く、しかも錆びないので武器の素材としては最適なのだ。
今回のダンジョン攻略は前回に比較すると各段に容易だった。この調子なら、次の階、第4階層まで行けるかも知れない。
階層ボスの前のオークは、通常個体ではなくオークメイジだった。身体能力が高い上に、シールドを張って遠距離魔法を撃ってくる。魔法レベル1ではあるが戦闘能力を奪うには十分だ。
しかし今回は、チタン製の盾を5枚準備している。小さな魔石のかけらが嵌められ、シールドの魔法陣が描かれている。私が、このダンジョンに入る前に造作しておいた物だ。
魔法防御のみに特化しているが、レベル1程度の魔法は完璧に防ぐことができる。それにアオちゃんが聖なるシールドを張っている。昨日、コツを教えてあげたのだ。
相手の魔法攻撃を防ぐことができれば、後は楽だ。一斉射撃でシールドを破り、オークの魔石を撃ち抜く。次々と殲滅して行く。
最後の階層ボスであるサイクロプスも、前回と異なり短時間で殲滅することができた。ドロップ品は、またミスリルの右小手だった。
奥には、階下に続く階段があった。盾部隊と散弾銃部隊を先頭にして降りて行く。
第4階層は、岩山エリアだった。空には、翼を羽ばたかせている大猿がいた。フライングエイプだ。こいつは確か?
思い出す前に、糞を手掴みで投げつけて来た。女性隊員達がキャーキャー騒いでいる。私も、ついでにキャーキャー騒ぐことにした。
散弾銃が炸裂した。バタバタ落ちて来た。ロングナイフを持った隊員が、トドメを刺しに行った。心臓付近にナイフを深く刺し、あ魔石を取り出している。
岩山によく生息してサソリを探してみる。いた。岩石の色に擬態しているが、50センチ以上もある。尻尾の毒針から紫色の毒液がタラタラと垂れ流している。エグい。
散弾銃で破砕しようとしたが、硬い甲羅で跳ね返してしまう。
20式5.56mm小銃3丁で一斉射撃をする。照準は左右の目の間だ。流石にタングステン弾だ。大きな穴を開けて、頭部が粉砕された。
その様子は、撮影班のカメラで中継されており、前進拠点の160インチ超大型モニターで放映されている。見ていた他の隊員達も、『オー!』と感嘆の声を上げていた。私には黙っていたけど、この映像は米英など魔防隊編成国、全てに同時中継されていた。
そんなことは知らずに、さらに奥に進んでいく。大きな岩山の向こうに、魔物の気配がする。でも、皆には内緒にしていた。
アオちゃんが、上空に飛び上がった。岩山の向こう側を確認している。私には、ある程度、予想がついていた。
小山の上から、頭の大きさ位ある石が落ちて来た。皆が退避している時、そいつは姿を現した。身長が10m以上あるストーンゴーレムだ。異様に頭が大きく、5等身位だ。目は、単なる穴が開いているのだが、目の底が見えない。でも、そいつには、ちゃんと見えているようだった。
一斉射撃が始まった。石の破片が飛び散っているが、ダメージは与えられない。グレネードランチャーで、膝関節を狙う。片側2発で膝が吹き飛んだ。
地面に転がったゴーレムは、手で這いずりながら、こちらに向かってくる。顔面に向けて一斉攻撃だ。20式5.56mm弾とMP5の9mm弾が顔面に吸い込まれて行く。最後にグレネードランチャーが、頭を吹き飛ばして戦闘が終わった。
大きな魔石がドロップした。流石に、この巨体から魔石を探すのは、人力では無理がある。親切なゴーレムだ。
この奥が、階層ボスエリアだ。気温が高くなる。小さな岩山の向こうに火柱が見える。あの火柱が、火山から噴き出ている物なら良いんだけど。
期待は、いつも悪い方に裏切られる。姿を現したのは、体長10m近いの蜥蜴だった。赤と黒のまだらの模様。毒蜥蜴ではない。それは、口からチロチロ噴き出ている炎が物語っている。サラマンダーだ。
サラマンダーを、通常の小火器で撃退するのはかなり困難だ。それに火炎放射器のような炎は、通常では絶対に防げない。
私だったら、シールドで完全に防御できるが、彼らの装備では、3秒と持たないだろう。でも、シールド機能を持った盾がある。5枚の盾で横一列に並び、その後ろに皆が退避する。
サラマンダーの吐く炎は、時間にすれば1〜2秒程度で、次の炎まで間が空く。その間隙を縫って一斉射撃をする。狙いはチロチロと火が漏れている口だ。口さえ潰せば、後は大蜥蜴だ。2回目の掃射で、大きく口が吹き飛んでしまった。
後は、逃げようとするサラマンダーに、次々と銃弾が撃ち込まれる。途中、何発かのグレネードランチャーが撃ち込まれた。
サラマンダーが、動かなくなった。1人の隊員が近づいて行って、サラマンダーの大きく開いた口の中に、手榴弾を放り込んで、急いで戻ってきた。2秒後、サラマンダーの頭が吹き飛んでしまった。
真っ赤な大きな魔石を取り出す。ドロップ品は、ミスリルハンマーだった。今日は、ここまでにして帰ることにした。まだ、時間があったので、徒歩で帰ることにする。地下第4階層には魔物はいなかったが、地下第3階層には、レベルの低い魔物が復活していた。この辺は、散弾銃でまとめて餌食にしてしまう。回収班が小さな魔石を集めていたし、所々の壁をハンマーで割って、試料を採集している。ミスリル銀ばかりでなく希少鉱物が採集できることがあるのだ。
この日は、後、2個班訓練したが、映像を見ていたのか、攻略速度がドンドン速くなって行った。
最終的に大量の魔石とミスリル系のドロップ品を何点か回収できた。ダンジョンで出入り口の扉を閉めて、ロックして今日の訓練は終了だった。
私は、女性隊員の魔法適性を調査することにした。何故、女性隊員かと言うと、男性隊員の手を握りたくなかったからだ。
手を握り、魔力を流し込む。魔力が流れ込んで来たのが分かった隊員が6名、その内、聖魔法適任者は、1人だった。後は、火魔法や風魔法だったが、特に聖魔法適任者が重要だ。盾に嵌められている魔石に、聖魔法の魔力を流し込む必要があるからだ。要領を教え込む。魔力そのものは、この富士樹海に十分に漂っている。それを取り込み、魔石に流し込む。
私と手を握り、何回か繰り返しているうちに、要領が掴めたようだ。後は、実践あるのみだ。
あ、そう言えば、美玲さんはどうなんだろう。美玲さんの手を握って、目を瞑ってもらう。聖魔法の魔力を流し込む。
美玲さんの身体が、青白く光り始めた。手を離しても、光り続けていた。そのまま、魔石に手を触れさせる。美玲さんの体内から魔石に魔力が流れ込んでいくのが分かった。
美玲さん、初めての体験で、2月だと言うのに汗をかいている。後は、アオちゃんに任せて、何回か繰り返して貰う。美玲さんは、要領を掴んだらしく、思いっきり深呼吸をしている。髪の毛が逆立ち、周囲から聖なる魔力を吸い込んでいる。まだ、1回の深呼吸で取り込まれる魔力は微々たるものだが、慣れてくれば、そんなに時間を掛けずに、満タンに出来る様になるだろう。
訓練が終了したので、美玲さんと一緒に市ヶ谷駐屯地まで帰ることにしたが、連隊長をはじめ幹部の皆さんも一緒にゲートを潜って、市ヶ谷に帰ってきた。
今日、確認された魔法適任者の女性隊員さん達は、明日から特別訓練を始めるそうだ。勿論、美玲さんもメンバーに入っている。美玲さん、ご苦労様。
魔法適性がある人達が増えてきました。




