第70話 アリスちゃんをどうしよう?
アリスちゃんは、身体は小さいけど15歳の女の子です。
(11月27日です。)
今日は、日曜日、未央ちゃんとお買い物だ。アリスちゃんのお洋服を買いに行く。それとアリスちゃんの食器類だ。
あと、お勉強道具も買わなくっちゃ。手帳サイズのノートと手帳用のミニペンシルを買う。ミニペンシルを削るためのナイフは、適当な大きさの物がないので、私が削ってあげる事にした。
未央ちゃんが、人形用のお洋服の型紙を幾つも買っていた。これで色々と作ることが出来るらしい。
玩具屋さんで売っているお洋服は、生地もテロテロだし、縫製も雑で、直ぐに破れてしまうみたい。何でも、外国で作っているので、雑な作り方らしいの。
お家に帰ってから、ある事に気がついた。アリスちゃん、歯を磨いてない。歯ブラシがないんだ。慌てて赤ちゃん用の小さな歯ブラシを買ってきたんだけど、全然大きい。お口に入らない。どうしよう。
ハッと気がついた。以前、元の世界の父様が、素材さえあれば、錬成と復元で、どんな物でも作れるって言っていたっけ。
私は、両手で小さな歯ブラシを包んで念じた。
『小さくなれ、小さくなれ。アリスちゃんの口の中に入れる位、小さくなれ。』
手の平が暖かくなった。そっと手を広げると、小さな歯ブラシが3本、手の中にあった。何で3本何だろう。考えるのはやめて、マリアちゃんの歯磨きだ。
洗面所から、旅行用ミニ歯磨き粉を持ってくる。マリアちゃんには大きいけど、何とかキャップを回して中身を出してブラシにつけた。アリスちゃん、恐る恐る口の中に入れる。初歯磨きだ。驚きの顔のアリスちゃん。うん、何でも初めての経験って驚きね。
未央ちゃんが、重大発言をしてきた。
「お姉ちゃん、それができるんだったら、お洋服もできるんじゃない?」
へ?そうかな。でも、大人用のお洋服は、手で包めないから、難しい気がするんですけど。結局、それは無理ということが分かった。力がうまく分散できずに、お洋服の一部に、小さな襟やボタンが出来ただけだった。きっと小さなものから練習を重ねていかなければならないのだろう。
でも小さな端切れとボタンを準備して、糸と一緒に丸めたものを、手のひらに包んだの。それで可愛らしいワンピをイメージしていたら、手の中が暖かくなって、イメージ通りのお洋服が出来ちゃった。これは『縮小』じゃあ無くって『錬成』という力のようだった。
早速、マリアちゃんに着せてあげたら、胸が苦しいと言っていた。あ、そうか。自分のお洋服をイメージしちゃったからね。でもなんか悔しい。
胸の部分を直してあげたら、ブルーのチェック柄のワンピ、とっても良く似合っていた。
後、お靴も作ってあげる事にした。古くて捨てようと思っている革靴を鋏でジョキジョキ小さい破片にし、手で丸めてパンプスをイメージする。
可愛らしいパンプスができた。アリスちゃんに履かせたら、少し大きいみたいだったので、手の平にくるんでサイズ調整をした。
今日は、シズちゃんとノエルちゃんが家に遊びにくる。なんか久しぶりの気がした。約束の午後3時に、二人は来たが、新しい家が立派な事に驚いていた。でも、シズちゃんの家は、本当のお屋敷なので、広さは比べものにならないけど、家の外観とか内装が、素敵だと褒めてくれた。
シズちゃん達は、一昨日のコンクールの結果について、既に知っていて、優勝のお祝いに大きな熊さんのぬいぐるみをプレゼントしてくれた。
シズちゃんは、片岡くんとはうまく行っているみたいで、ラブラブのようだった。ノエルちゃんは、今、モデルのバイトをしているそうだ。中学の時、写真集のために撮影に来たカメラマンの紹介で、芸能プロダクションに在籍してファッション雑誌のモデルをしているそうだ。
シズちゃんも誘われたらしいのだが、学校では芸能活動は禁止らしく、テレビや雑誌に出たら退学だそうだ。
ノエルちゃんは、事務所から、異性交際は厳禁と言われ、彼氏はいないそうだ。今はモデルの仕事の他に、演劇と歌のレッスンに行っていて、もしかすると、学校を転校するかもしれないと言っていた。
それから、この前のワイバーンの話になった。あのワイバーン、銀仮面が保護しているってテレビで言っていたけど、どこにいるのかと聞かれた。
仕方がないので、ワイちゃんを呼んだら、タンスの上からパタパタと降りてきた。
「キャーッ、可愛い。」
ノエルちゃんが、そう言って、抱きしめてきた。ノエルちゃん、小さい時から爬虫類が、大好きで、自宅でも小さなトカゲを飼っているらしい。でもワイちゃんは、爬虫類のようで、竜種だし、ノエルちゃんに抱かれて、少し怖がっている。『念話』が聞こえてきた。
『怖い 食べられる』
ノエルちゃんに、食べられそうで、怖いと言っていると言うと、『え?話せるの?』と目を輝かせている。
ノエルちゃん達に『念話』のことを教えてあげると、自分達も使いたいと言ってきた。でも、『念話』の使い方を教えたこともないし、どうやったら使えるようになるのか知らないので、『無理』と言ってあげた。
ナギさんを、ベッドの下から出してあげる。ナギさんは、ベッドの下がお気に入りだ。真っ白な蛇が出てきたので、シズちゃんがドンと引いていたが、ノエルちゃんは大興奮だった。
ナギさんが、今は道路の下になっている井草川の神様、龍神様であることを教えると、『もう、何でもありね。』と完全に呆れられていた。
シズちゃんが、ベッドの脇にあるアリスちゃんの家に目を止めてしまった。普通の犬小屋ではない。と言うか、部屋の中に置く小屋ではないし、クロとコンちゃんの家でも無さそうだったので、シズちゃんが、小屋の中を覗き込んだ。
「何か、いる。」
アリスちゃんと、目と目が合っちゃったみたい。アリスちゃんが出てきて、挨拶をした。生きているリカちゃん人形を見つけた2人は大興奮だった。私が二人に説明してあげる。去年のGWで北海道に行ったときに、仲良くなったコロボックルさん達の娘さんで、名前をアリスちゃんと言うと言ったら、アリスちゃんが、きちんとお辞儀をしてきたので、シズちゃん達も慌ててお辞儀をしていた。
それからは、アリスちゃんを交えてのお茶会になってしまった。アリスちゃん、お友達とこんな風に楽しく話したことはなかったので、ずっとニコニコしていた。シズちゃんが、『アリスちゃんを普通のサイズにできないの?』と聞いてきたが、できるかも知れないし、出来ないかも知れない。黙っていたら、ナギさんが重大な事を教えてくれた。
『この子は、身体が小さいので、魔力の貯蔵量が小さいが、魔力を貯蔵できる依り代があれば、大きくできるかも知れんぞ。」
『依り代って?』
『魔力を、そこから供給してもらうための物じゃ。例えば。魔道具とか魔石とかじゃ。』
魔石なら、知っている。前のリッチなんかから回収したことがある。でも、あれは父様や国の機関に預けてしまったし。元の世界の父様から貰ったショートソードを出してみる。柄に1個、無属性の魔石がはめ込まれていた。外してはいけないと言われている魔石だった。その魔石、なんに使うのか分からないので放っておいたのだが、それを外してみる。大きさは、ゴルフボールを少し平べったくしたようなものだ。
シズちゃん達は、私が異次元空間からショートソードを取り出したのを見て吃驚していたが、銀仮面ならそれ位できるだろうと言う事になってしまったようだ。
私は、魔石を握り締め、そっと魔力を流し込んでいく。しっかりと流し込まれていくのが感じられた。魔石が温かくなってきた。もうそろそろ、いいか。手のひらを開けると、魔石が赤く光っている。魔力があふれてきているのだ。
その魔石を床において、アリスちゃんに左手で魔石に触れさせる。コロボックルは、その存在自体が魔的なものである。通常の人間には、魔力などまったくないのが普通だが、コロボックルのような存在は、量は小さいが、その身体相応の魔力を有しているのだ。ただ、他の魔法が使えるほどではない。その小ささを維持することに特化しているのだ。
ワイバーンが、空を飛ぶための魔力を有しているのと同じ原理だ。そこに、それ以上の魔力を維持する物があれば、他の方面に魔力を使用することができるはずだ。私は、アリスちゃんの右手を握って、『錬成』の力を使う。
『大きくなれ、大きくなれ。』
魔石が赤から白の光に変化した。その光が、アリスちゃんの方に流れていく。アリスちゃんが、白い光に包まれる。少し大きくなった。お洋服が破けてしまう。ベッドの上の毛布を掛けてあげる。もう少し大きくなった。身長60センチ位だ。全身が白く光り輝いている。そのまま、大きくなっていく。身長1m位から、大きくなる速度が遅くなる。魔石も、光を失ってきた。
いったん、中断する。アリスちゃんの身体が大きくなったと同時に、体内の魔力貯蔵量も増え、そこに魔石から、魔力が流し込まれていったので、魔石の魔力が少なくなってきたのだろう。この魔石、貯蔵量は大した事ないみたいだった。
でもアリスちゃんは、魔石から手を放しても、その身長を維持できている。でも身長1mでは、15歳の女の子にしては小さすぎるし、7歳の女の子にしては、体形が不自然だ。ここは、あと少し大きくしよう。
私は、また魔石に魔力を流し込む。この大きさの魔石に流し込む魔力位、私にとっては、何もしなかったと同様だった。また、魔石が赤く光っている。今度は、『錬成』の力の他に魔力も流しながら、大きくなるようにイメージしていく。
本当にゆっくりだが、大きくなっていった。
1時間後、部屋には身長150センチ位の金髪の女の子がいた。私の下着を貸してあげたが、胸がきついと言っていた。ものすごく、ムカッと来たが、仕方がないので、未央ちゃんの下着を借りて来て、着せてあげたらちょうど良いサイズだった。
80のBカップだ。シズちゃんが呆れていた。ええ、そうです。私には、70のAカップでも、少し余ってしまいますよ。
私は、アリスちゃんの胸に手を当てた。ジッとしていると、胸の奥の魔力の息吹が感じられる。もう、大丈夫とは思うが、魔石に魔力をフルチャージして持たせることにした。これで大丈夫だろう。もっと良い魔石は、今度、樹海の地下ダンジョンにでも取りに行くことにしよう。
未央ちゃんが、妹ができたと喜んでいた。えっと、きっと、未央ちゃんの方が年下だと思うけど、放っておくことにした。シズちゃん達が、今日は面白い経験ができたと大満足で帰って行った。一緒に下に降りて行って、アリスちゃんが大きくなったことを母様に教えてあげた。
母様は、最初、吃驚していたが、そのうち『学校はどうしようか。』と悩んでいた。まあ、しょうがない。父様が帰ってきてから相談することにした。
アリスちゃん、大きくなってしまいました。でも、いろいろ問題があります。




