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第7話 お勉強って嫌い

 タイタン離宮から帝都に帰ります。マリアちゃんは、お勉強とピアノの家庭教師がいます。

(8月25日です。)

  今日は、タイタン離宮から、帝都の『白龍城』に帰る日だ。クルス君が、朝から来ている。帰りも飛行機で帰る事にしていた。ゲートを使っての『空間転移』なら一瞬で王都だが、飛行機だと西行きで6時間、東行きだと5時間の旅だ。


  午前10時、タイタン空港に行く。来るときに同乗警護していたナミさん、マミさんが空港で待っていた。空港まで、タイタン離宮署の署長さんも一緒だった。クルス君は、空港には初めて来たらしく、キョロキョロしていた。


  ここでクルス君とはお別れだ。面と向かって、サヨナラをいう事はできないが、『念話』ならできる。



  『クルスお兄ちゃん、さようなら。来年、また来るわね。』


  クルス君、辺りをキョロキョロしている。どこから声が聞こえてくるのか分からないみたいだった。


  「マリアちゃん?マリアちゃんなの?」


  マリアは、もう黙っていた。じっと下を向いている。涙が溢れているのを、見られたくなかったからだ。


  搭乗ゲートの中に入って行く。マリアちゃんが振り向いてみると、クルス君、思いっきり手を振っていた。マリアちゃんは、顔が真っ赤になりながらも手を振ってみた。手を振りながら、涙が止まらなかった。


  セント・ゴロタ市のヒースロー空港に到着したのは、、午後7時だった。時差が4時間あるので、タイタン市の午後3時は、ここでは、この時間になってしまう。もう夕暮れ時だった。


  空港からお城までは、警備が大変なので『空間転移』した。シェル様が待っていてくれたが、タイタン離宮でお会いしたシェル母様とは、雰囲気が違う。にこやかで優しい、いつものシェル母様だった。


  夕飯は、簡単な物にしてもらう。マリアちゃんの就寝時間は、午後8時だったが、今日だけ特別に1時間遅くしてもらった。


  お部屋で、タイタン市の孤児院のみんなから貰ったプレゼントを開けてみる。しっかりしたお手紙や、何が書いてあるか分からないお手紙、綺麗な石や、カエルの干からびた物など色々だ。みんな、マリアちゃんに大切な気持ちや物をプレゼントしている。


  マリアちゃん、その日は、夜遅くまでお返事のお手紙を全員に書いていた。


  次の日、ピアノの先生が来た。音楽大学の3年生でシーズンさんと言う女性だ。冬休みの間、タイタン市に行っていたので、どれ位練習していたかの確認だ。


  マリアちゃん、バイエルは終わって、今、最終確認中だ。ハノンは、毎日1時間以上練習していたし、オルガンなら孤児院で、2時間以上弾いていたので、合格の自信はあった。


  バイエル105番を弾いた。自分では、上手く弾けたと思ったが、シーズンさんの目が笑ってない。


  次に、バイエル106番だ。上手く弾いていたつもりだったが、途中で、止められてしまった。


  「マリアちゃん、あなた、オルガンを弾いていましたね?」


    ドキッ!


  図星だ。どうやら、オルガンの変な癖が付いていたみたいだった。鍵盤を弾く力が均一になってしまっているらしい。と言うか、弱々しくなっているそうだ。それからは、当分の間、ハノンだけを練習する事になった。それも1日2時間も。


  夕方、家庭教師のボイドさんが来た。今日は、円の面積の出し方だ。円を円周に沿って小さな三角形にして並べて行く。


  長い長方形ができた。高さが半径、長さが円周だ。演習の長さは、前に習っている。直径掛ける3.14だ。でも半径の場合は、暫く考える。


  あ、分かった。半径掛ける半径掛ける3.14だ。ボイドさんが、それを式にするように言われた。マリアちゃんは不満だった。分かったんだから、もういいのに。


  でも、何も言わずに、式を書いていった。ボイドさんが、頷いている。


  次に、円を中心を頂点とした三角形に切り取り、その三角形の面積を出す問題だ。分かっているのは、三角形の半径5センチと真ん中の角度72度だけだ。


  マリアちゃん、円の全部の角度って360度だって教わっていたので、それで解けそうな気がした。頭の中で、計算してみる。小数点が面倒臭いが、難しくは無い。マリアちゃん、答えだけ書いた。


  15.7平方センチだ。


  ボイドさんが、式を書くように言ったので、面倒くさいが書いてあげる。


  円の面積は、5×5×3.14=78.5

  面積の割合は、360÷72=5


  この円の切れ端の面積は、78.5÷5=15.7


  本当、式を書くって面倒。分かり切ったことを延々と文章にするんだもん。


  ボイド先生、もう今日教える事は終わったので、100マス計算を出してきた。今日は、10枚、上に10個、左に10個の2桁の数字が並んでいる。上の数字と左の数字を足して行くのだ。


  ちょっと時間が掛かったが、ちゃんとできた。今日の授業は、これで終わりだった。後は、お絵かきだ。百マス計算用紙の裏が、真っ白なので自由にお絵描きができる。今日はクリス君の似顔絵を描いてみる。


  ボイドさん、じっと、それを見ている。終わってから自分の似顔絵も描いてくれないかと言ってきたので、ゆっくり描いてあげた。ボイドさんは、顔のシワも多く、顎髭を生やしているので、陰影が難しい。カテリーナおば様みたいには書けないが、自分なりにはきちんと描いたつもりだ。最後に、指で鉛筆の線をぼかして出来上がりだった。


  ボイドさんが、描いた絵をくれないかと言ったので、別に、大事でもなんでも無いのであげる事にした。こんな物を欲しがるなんて、かなり変わっていると思ったが、黙っていた。


  結局、ピアノの練習と算数のお勉強では、『こんにちは。』と『ありがとうございました。』しか言わなかったが、いつものことなので、先生達も何も言わなかった。


  今日は、朝、遅かったのでワンドの練習が出来なかった。夕食までの間、練習場に行く事にした。夕方は、練習場には誰もいなかった。ヤブ蚊が酷かったので、半径5m以内のヤブ蚊を焼いて殲滅した。


  魔法測定人形を、所定場所に置いた。誰もいなかったので『念動』で移動させたのだ。


  『クレイスのワンド』を頭上に掲げる。炎をイメージする。キャンプファイヤの炎だ。薪をドンドン足して行く。天空まで炎が燃え上がって行く。もう、近くに立っていられない位に熱い炎だ。


  そうイメージしていたら、ワンドが真っ赤に光っている。先っちょから、我慢出来ない炎が噴き出ている。もう、いいだろう。


    「ファイア。」


  詠唱はしない。と言うか、習ってないのだ。父様に、イメージするだけしか教わっていない。


   バシュン!


  この前、早朝稽古の時よりも『力』のある炎が、測定人形目掛けて放たれた。


  ズドーン!


  大きな轟音と共に、測定人形がピンク色に染まった。シルフさんとノエルさんが、お城から飛び出してきた。マリアちゃん、ポカンとしてる。


  ワンドには、ちゃんと魔石?は嵌めてるし、おでこには、あのリボンがちゃんと付いている。何か間違えたのかしら。そういえば、額の魔石がとても熱いんだけど。


  ノエルさんが、測定人形の色を確認している。測定レベルは13段階中の9だった。この前のお試しの時は、測定レベル1だったのに、冬休みの間に制御できなくなっている。もうマリアちゃんに、高価な測定人形を使わせるわけにはいかない。


  シルフさんが、単なる鉄の鋳物の人形を鍛錬場に置いてくれた。これなら、幾つ壊しても良いそうだ。


  マリアちゃんは、魔法レベル3強、つまり超大級のファイアを放ったらしい。レベル4で極大級だ。このレベルの魔法を、魔石のブーストを使わずに使えるのは、ノエルさん達一部の人だけで、王国魔道士協会にもいないそうだ。


  シルフさんが、新しい魔石をくれた。今までの魔石は、壊れてしまったらしい。マリアちゃんには、どこが壊れてしまったのか、全く分からなかった。シルフさんが『転送速度が遅かった。』とか、『過負荷時間のベクトルが、』とか言っていたが、勿論分かる訳無かった。


  次の日、朝5時半に鍛錬場に行ったら、エーデルおば様とブリ様が朝稽古中だった。動きがとても綺麗。踊っているようだ。


  エーデルおば様のレイピアの型を真似してみる。ワンドを右手に持って、前に軽く突き出し、膝を軽く曲げて右足が前の半身になる。まず、足捌きだ。踵を上げ、重心をやや前にして背骨を真っ直ぐに。


  右足を前に、すぐ左足を引き付ける。前に、前に、後ろに右に。うん、出来てきた。


  右足を大きく前に出すときに、ワンドを前に突き出す。ワンドから赤い光が飛び出してお城の壁に当たって消えた。


  あれ、魔法なんかイメージしてなかったんだけど。エーデルおば様が、声をかけてきた。


  「マリアちゃん、そのレイピアの型、誰に習ったの。」


  マリアちゃん、何かまずい事をして、叱られるのかと思い、下を向いたまま首を横に振った。ブリ様が、しゃがみ込んで、優しく聞いてくれた。


  「ねえ、マリアちゃん、今のはエーデル様のレイピアの型に似ていたのだけれど、誰に習ったの?」


  「今、見ていたの。」


  「へ?今?」


  この日から、小さな子供用の木刀で、型の練習が始まった。練習といっても、エーデルおば様やブリ様が見せてくれる型を、真似するだけだったが。


  ワンドで、思いっきり魔法を撃つのは禁止されてしまった。でも、この木刀だって、色々な色の光が飛び出てくるので、それはそれで楽しかった。


  足捌きの練習をしているときだった。次のポイントへ素早く移動する練習だ。3歩前に移動して、3歩下がる。何回かやっているうちに、前に出るのは、足を送らなくても移動出来た。あ、これは楽だわ。


  前に、移動して、後ろに3歩下がる。前に移動して、後ろに3歩下がる。この繰り返しだ。前に移動するのは、ジャンプでは無い。前に『移動』しているのだ。一瞬、周囲の風景が揺らぐと、もう移動していた。それから、3歩下がる。木刀は、両手で持って、お臍の前だ。


  エーデルおば様から、今度は5歩、移動するように言われた。前にすり足で5歩、後ろに5歩、何回かやっていると、やはり前に移動する時は、足を動かさなくても移動できるようになった。うん、これは面白い。


  稽古が終わった時、エーデルおば様とブリ様が、呆れた顔をしていた。マリアちゃん、今回は何もしていない筈だったので、理由が分からなかった。


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  8月29日の土曜日、タイタン市からシズおば様が迎えにきた。これから、グレーテル王国の王都にある『明鏡止水流』の道場に行くそうだ。


  勿論、母様も一緒だ。道場に行ったら、白い木綿の稽古着に着替えて、道場の端で、エーデルおば様から習った型をやって見せた。見ているのは、シズおば様と、初めて見る男の人だった。


  最初、お臍の前に木刀を構えて、3歩前に出る。その後、大きく振り被って面を打つ。打ち終わったら、木刀を元の位置に戻して4歩下がる。それだけのことなんだけど、綺麗に打つのってコツがいるみたいだった。何回かやっているうちに、木刀が光って、打ち込みの軌跡が光って見える。魔法じゃあ無い。これって木刀の力かも知れない。


  マリアちゃん、段々楽しくなってきた。男の人が、大きな声で止めるように言っていた。『道場が壊れる。』とか、なんとか言っていた。マリアちゃん、残念だが、止める事にした。

魔法やスキルだけでなく、学力も劍術もチートです。

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