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第4話 タイタン市ゼロス教孤児院

  ゴロタ帝国では、孤児院の孤児も小学校に行かなければなりません。

(7月31日です。)

  朝、タイタン離宮に見知らぬ2人が訪ねて来た。ゼロス教のシスター服を着た女性と10歳位の男の子だ。


  離宮の管理責任者である執事長が対応したが、用件は昨日のお礼だった。シスターは、タイタン市ゼロス教孤児院のシスターだった。


  男の子は、昨日のクルス君だ。歳は9歳、今、市立小学校の3年生だ。ずっと孤児院で暮らしている。生まれたばかりの時、両親が魔物に殺されてしまったのだ。


  昨日、手足が傷だらけで、ズボンに漏らしたまま帰ってきたクルス君に事情を聞いて、事件が判明したのだ。


  昨日、マリアちゃんは名乗らなかったが、ゴーレム兵を引き連れてお屋敷の方に帰っていったので、今、お屋敷に来ているマリアちゃんだと分かったのだ。


  執事長は、直ぐに母様に伝えて、応接間に案内した。マリアちゃんは、広間でピアノの練習中だったが、知らない人が入って来たので、すぐに奥の部屋に逃げていった。


  母様が、応接間に行くと、2人は立ったままだった。立派なお屋敷の中で緊張しているみたいだった。二人の話を聞いていたら、どうしてもマリアちゃんにお礼が言いたいとの事だった。


  母様がマリアちゃんを呼びに行った。マリアちゃんは、母様の後ろに隠れながら応接間に入っていった。母様は、身長175センチもあるので、マリアちゃんは、本当に小さく見える。


  クルス君は、自分を助けた子がこんなに小さい子とは思わなかった。木の上からしか見ていなかったし、ゴーレム兵士と比べていたので、もっと大きく感じていたのだ。


  でも、キチンとお礼を言うように、シスターに言われていたので、シスターの前に出て、深く頭を下げた。そのまま、お礼の言葉を言う。


  「昨日は、ありがとうございました。助かりました。」


  マリアちゃん、クルス君の大きな声に吃驚してしまった。それだけで涙が滲み出てくる。じっと下を向いている。


  『早く帰ってくれないかな。』


  そればかりを考えていた。このお兄さんを助けたのはゴーレム兵士達だったし。自分は何もしていなかったし。


  母様は、シスターと孤児院のことについて話しあうので、2人で外で遊んでいるように言った。マリアちゃんは母様の顔を見て『嫌々』の目線を送ったが、完全に無視されてしまった。


  クルス君は、孤児院で小さな子達の面倒を見て来たので、慣れたものだった。特に、孤児院に来たばかりの小さい子は、怯えて泣くか、黙りん坊ばかりだ。


  そんな時は、その子に、自分達は怖くない、仲間だというイメージを持たせればよいのだ。とにかく、遊びの場に連れ出せば良いのだ。


  クルス君、マリアちゃんに声をかけながら、手を取った。


  「マリアちゃん、外に遊びに行こう。」


  急に、手を取られたマリアちゃん、手を引っ込めようとしたが、しっかりと握られていたので離れない。そのまま、屋敷の外に連れ出されてしまう。


  「このゴーレム達、どうやったら動くの。」


  今、雑草取り以外のゴーレム達は、ピクリとも動かない。基本的に、このゴーレム達は、貯蔵した魔力で動いているので、魔力消費を最小限に抑えようとしているのだ。


  毎日、メイドさん達や執事さん達が、少ない魔力を貯蔵用の魔石に流し込んでいる。誰もいない離宮では、それがメインの仕事になっている。


  マリアちゃんは、右手に持ったワンドを、一体のゴーレム兵士に当てる。ゴーレム兵士の目が赤く光って、フルチャージ完了だ。


  10体位のゴーレム兵士にチャージしてから、ワンドを横に水平に出す。10体のゴーレム兵士が、2列横隊で整列する。


  後は、マリアちゃんのワンドの指示通りに動く。前に突き出すと、直ぐに2列縦隊に隊形を変換する。ワンドを上に上げて、前後に振る。ゴーレム兵士の渋滞が前進を始める。


  後は、マリアちゃんのワンドの動きに従って、右に左に動き回る。


  「すげー、マリアちゃん、魔法が使えるの。」


  セント・ゴロタ市の幼稚園では、魔法の使用は母様から禁止されているので、こういう風に言われたのは初めてだった。


  マリアちゃん、顔を真っ赤にしながら、ワンドを水平に振った。魔力が、他のゴーレム達に流れていった。クルス君には、マリアちゃんが何をしているか分からなかったが、ワンドが色んな色に光っているので、綺麗だなと見惚れてしまった。


  ゴーレム兵士50体が整列した。雑草抜きをしていたゴーレム兵士達も、作業を中断して整列した。初めて、マリアちゃんが口を開いた。


  「丸く輪になって!」


  ゴーレム兵士は、大きな円陣を組む。


  「密集隊形!」


  ゴーレム兵士が、縁の中心に走って集まり、『M16』を、外に向けて構える。一番外側が伏射姿勢、真ん中の列が立膝姿勢、最内側が立射姿勢だ。


  「やめ!」


  15人で横列を作り、3列の隊形を作る。各列最右翼に小隊長が整列する。横隊の前に、中隊長と副官が立つ。これで3列横隊の完成だ。


  「戦闘隊形!」


  先ほどのように、前列から後列まで、前面に向かって、射撃態勢を取る。中隊長は、応対の右側に移動する。後は命令を待つだけだ。


  「やめ!」


  通常の応対に戻った。


  クルス君。もう『目が点』状態だ。何か良く分からないが、昨日、このゴーレム兵の威力は良く分かっている。それが50体だ。魔物には、絶対に負けないだろう。


  拍手をしながら、クルス君が、マリアちゃんに頼んでみた。


  「なあ、今度、森に行くときに、一緒に行ってくれないか。このゴーレム達がいたら安心だから。」


  今まで、クルス君の存在を忘れていたマリアちゃんは、ハッと我に返った。クルス君の存在に気がついたのだ。


  顔を真っ赤にして、首を横に振る。森に行ってはいけないと、母様に言われているのを思い出したのだ。


   マリアちゃんは、ワンドを上に向けて左右に振る。『別れ!』の合図だ。


  屋敷に戻ることにした。屋敷の中では、母様とシスターが思いがけない話をしていた。マリアちゃんが、こちらにいる間、孤児院で小さい子達の面倒を見ることになったのだ。


  え?マリアちゃんは吃驚した。孤児院?小さい子?


  絶対に無理。あの幼稚園だって何も出来ないのに、見たことも行ったこともないのに出来るわけないのだ。だが、シスターとクルス君がいる前で言える訳がないマリアちゃんだった。


  二人が帰ってから、マリアちゃんは母様に文句を言った。何故、そんなことをしなければならないの?行きたくない。お屋敷にずっといると、駄々をこねたが、母様はニコニコ笑っているだけだ。駄目だ。このニコニコモードに入ると、何を言っても聞いてくれない。諦めて、ピアノの練習を始めたマリアちゃんだった。


  次の日の朝、クルス君が迎えに来た。マリアちゃんは、背中のカバンにお弁当を入れ、右手にワンドを持って屋敷を出た。


  マリアちゃんの後には、10体のゴーレム兵が続いている。この前、マリアちゃんと一緒に森に向かった10体だった。シルフが、リモートリンクで、マリアちゃんの専従警護員に指定しておいたのだ。


  クルス君は、マリアちゃんと手を繋ごうとした。小さい子と一緒に歩くときは、いつもそうしているのだ。しかし、マリアちゃんは、男の子と手を繋いで歩くと言う経験がないので、顔が真っ赤になってしまった。


  でも、クルス君とはぐれたら、どこに行ったら良いのか分からなくなるので、仕方なくそのまま歩いていた。


  ゆっくり歩いて、約1時間、孤児院に着いた。孤児院は、2階建煉瓦造りで、真ん中の広場を囲んで、コの字に建てられていた。正面から入って右側が、女子寮、左側が男子寮で、真ん中が共有スペースと教室になっている。


  今は、夏休みで子供達は皆いるが、高学年の子は、森に採集に行っている。この国の法律では、12歳未満の子を労働者として雇ってはいけないので、飲食店の手伝いなどはできないのだ。


  ただ、自発的な採集等は禁止していないので、高学年になると、お小遣い稼ぎのため薬草などを採集しに行くのだ。


  低学年の子は、まだ薬草の見分けが出来ないので、仕方なくお勉強をするか、小さい子の面倒を見るのだった。


  マリアちゃんが、門の中に入っていくと、中庭で遊んでいた子供達が集まって来た。上はクルス君よりも年長の者から下は、まだおむつも取れていないような子達だ。


  この孤児院の子達の半分は、クルス君のように両親が死んだものだった。残りの3分の1は、捨てられたか、母親に死なれ、困った父親が預けているような子だった。


  後、数年前、奴隷として売られたり変態貴族の慰みものとして拐われた子供達もいた。父様達が救い出した子達だったが、そんな事は知らないマリアちゃんだった。


  子供達は、マリアちゃんよりも、後ろのゴーレム兵達に興味を示した。自分達と同じ位の身長だが、顔や手はミスリル銀で光っている。お面を被っているのかなと、思った子も多かったようだ。とにかく初めて見るゴーレム兵に触ったり、話しかけたり、中には怖くて泣き出す子もいた。


  マリアちゃんは、下を向きっぱなしだったが、クルスくんから、ゴーレム兵達を動かしてと言われたので、顔を上げワンドを上に差し上げた。


  その時、マリアちゃんが気がついた。皆、自分を見ている。期待で目をキラキラ輝かせながら、次に何が始まるのかと。


  マリアちゃんは、恥ずかしさと誇らしさの入り混じった気持ちで、ゴーレム兵達を動かし始めた。子供達の歓声と拍手、マリアちゃんには初めての経験だった。


  その後、マリアちゃんは、4歳以下の子供達にお絵描きを教えることになった。何も喋らなくても、手振りで思ったことが伝わる。と言うか、まだ言葉をはっきりと話せない子供達には、難しい言葉は不要だった。


  子供達は、一編でマリアちゃんのお友達になってしまった。当然、ヒエラルキーの頂点はマリアちゃんだった。

  マリアちゃん、思いがけず孤児院に通うことになりました。

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