第39話 銀仮面の正体
あれあれ、銀仮面が中学生だってバレちゃいます。
(11月11日です。)
修学旅行は、楽しくもあり、怖くもありだった。あれから、警察と自衛隊の人達が大勢来て、石舞台周辺は大変な騒ぎになってしまった。私達は、全員、簡単な診察を受けて、身体に異常がないことが確認されてから解放された。
転んで怪我をした子もいたが、大袈裟な位に包帯が巻かれていた。
結局、修学旅行は、中止となってしまったが、皆、今回の経験に興奮していた。自分達の学校に銀仮面がいるということが判明したのだ。しかも女子生徒だったのだ。
今まで男性だとばかり思っていた銀仮面が、女子中学生だったということは、昨日からテレビで大きく取り上げられていた。いつもなら、視聴者提供のスマホ映像が流れるのだが、今回はすべてのスマホが故障してしまっていたということも、リポーターが話していた。
しかし、翌朝になって警察から、監視カメラ映像の一部が公開された。監視カメラの映像は、現場から250m程離れた公園管理事務所内のレコーダーに保存されていたので、あの電撃ドームの被害から免れたようだった。
映像は、銀仮面の後ろ姿だけ、しかもモザイクがかかって、男女の区別も付かない程だった。しかもメインはミノタウロスの動きになっており、銀仮面は少ししか写っていなかった。
父様は、朝早くから危機管理室のの緊急会議に招集されていた。私は父様が大丈夫か心配だった。
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内閣府地下3階の特別会議室では、総理以下危機管理メンバーが集まっていた。警視庁の新垣管理官つまり父様が監視カメラ映像の解析結果を発表していた。
「えー、この銀仮面は、着ている制服から、銀仮面は東京都杉並区立清明中学校で、クラスバッジから3年1組であることが判明しました。身長は158センチ、中肉、黒の長髪で、手にしている武器は、刃渡り70センチ程度の両刃の剣、いわゆる西洋のソードと呼ばれている剣と思われます。それと右手には黒のスポーツサポーターをしていることが、拡大映像から判明しました。」
「ここで総理に重大な事実を発表します。この子は、私の長女、新垣麻里亜15歳であることを報告します。」
会議室は、異様な雰囲気に包まれた。銀仮面の正体が判明したのだ。しかも末席とはいえ、危機対策メンバーの娘であるとは。
このことは、トップシークレットとなった。対魔物戦の切り札ではあるが、米国やロシア、中国などの軍事大国がその存在を知ったら、黙っていないだろう。
政府の対応は、一応これで終わった。しかし、報道の取材は激しかった。
あの日、あの場所に修学旅行に来ていたのは14校、見学時間が同一だったのは3校。その中に最初の魔物事件があった、杉並区の中学校があったのは直ぐに分かってしまった。
クラスの皆は、『銀仮面は、きっと新垣麻里亜だろう。」と思っていたが、確証はなかった。距離が遠かったし、逃げるのに精一杯だったからだ。
新垣麻里亜は、あれ以来、学校を休んでいる。体調を崩して入院しているとの情報が流れていた。
そのうち、報道もあまり来なくなり、いつもの平穏な中学校に戻って行った。
しかし私は、そうはいかなかった。いつ、取材に掴まってしまうのか分からないからだ。
そのため、ずっと自宅に篭りっきりだ。でも、ピアノは、練習したいので、朝、7時に音楽室の隣のトイレに『転移』する。それから音楽室で1時間半、ピアノの練習をする。その時間、音楽室の周囲は立ち入り禁止だ。危機管理室から、警備員が派遣されている。練習が終わると、職員室に行く。先生に、昨日の課題の学習結果報告と、本日の課題を貰ってから、教室に行く。ホームルームに参加するためだ。
クラスの皆も、私の正体に気がついているが、何も言わない。言ってはいけないと言われているのだ。あの銀仮面、人外の存在が、新垣麻里亜だと言うことは、トップシークレットになっていた。
ホームルームが、終わると私は、音楽室に向かう。途中、廊下の曲がり角の向こうに曲がった先には、もう誰もいなかった。
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自宅に戻った私は、今日の課題を勉強する。しっかりと全ての課題に答えを書き終わると、もうお昼になっていた。
お昼ご飯は、母様が作っておいてくれた物をチンして食べる。食べ終わると、3時までお絵かきをしたり、高校3年生の教科書で勉強する。
高校1年生から始めたのだが、もう直ぐ3年生の課程が終わってしまう。でも大丈夫。他の教科書会社の教科書が、もうワンセットあるので、暇つぶしには不自由しない。
午後3時からは、またピアノの練習だ。もうピアノの教授からの課題は、全て弾けるようになっている。後は、曲想をしっかりと表現するように言われている。
世界的に有名なピアニストのコピーもしてみる。ほぼ、完璧なコピーだ。でも、何か違和感を感じる。私だったら、こう弾くのに、いえ、こう弾きたいのに。
完全なコピーで弾いてから、自分のイメージで弾いてみる。大草原の風を受けている少女だったり、激しい嵐の中で震えている子犬だったり。イメージは、どんどん広がっている。
玄関のチャイムが鳴った。クロが五月蝿く吠えまくる。家の中は、絶対安全領域なのだろう。物凄く強気だった。
インターフォンカメラを見ると、宅急便だった。大きな段ボールだ。玄関に行ってみるが、クロは今で吠え続けている。絶対に玄関までは出てこない。情けない犬だ。
受け取りのハンコを押して、居間に戻った。私宛の荷物だった。差出人は、『安芸信三』と言う知らない人だった。住所は、永田町2丁目1番と書いてある。
探知してみたが不審なものは無いようだ。中を開けてみると、洋服が入っている。それとブーツ。後は、銀仮面とカツラだ。
銀仮面は、今までのマグマ大使のような顔では無く、均整の取れた女性の仮面だ。被ってみると、顔にピッタリと嵌る。金髪のカツラも、今までのような、いかにも人工毛ですと言うような安物ではなく本物の髪の毛のようだった。長さも、肩よりも長く、私の長い髪をスッポリと隠してくれる。
洋服も素晴らしい物だった。素材は分からないが、防炎と書かれたラベルが付いた白のミニワンピースだ。立ち襟と袖、それにスカートの裾にピンクのラインが2本入っている。腰に巻くピンクのベルトがアクセントになっている。
ブーツも白だが、膝の上まで隠れる位長いブーツだった。後、肘まである手袋に、真っ白なストッキング。そしてミニスカで戦闘しても大丈夫な白のスパッツ。
この趣味は、絶対、少女アニメを真似している。極め付けはステッキだった。金属製のようだが異様に軽い。塗装されているので分からないが、きっとチタン製だろう。
それよりもステッキの先には、大きなハートの中に、クリスタル製の星が組み込まれている。同梱の単三電池を取手に入れて、スイッチを押すと、クリスタルの星が7色に光るのだ。
玩具屋で1000円位で売っているプラスチック製のものを、思いっ切り素材をアップグレードしました感が強かった。
取り敢えず、着てみると結構可愛い。つい、ニタアと笑ってしまった。ステッキのスイッチを押しながら振り回してみる。勿論、聖なる光を纏わせていた。
「綺麗!」
つい、言葉にしてしまった。ステッキで遊んでいると、未央ちゃんが帰って来た。私の姿を見て呆れていたが、段ボールに書かれている差出人を見て、変な声を上げた。
「お、お姉ちゃん!これ、総理大臣からだよ。」
え?総理大臣。何故?
キョトンとしていたら、父様からライン電話が入った。今日、総理大臣からプレゼントが届くだろうから、受け取っておくようにとのことだった。
大事に異次元クロークにしまってから、夕飯の準備を始めた。最近、夕飯は私が作っている。今日は、ビーフストロガノフだ。
玉ねぎの皮を剥いてスライスする。顔面にシールドを貼っているので、目が痛くなんかならない。左手を猫の手にして、トントントンとスライスしていく。
生のマッシュルームも、スライスしておく。特選ブランド和牛の切り落としを、適当な大きさに切って、塩・胡椒をしてから、小麦粉を軽くまぶしておく。
深めのフライパンにバターを入れ、玉ねぎを狐色になるまで炒める。そこに牛肉を入れ、火が通ったらマッシュルームを入れて軽く炒める。
小麦粉を少し足して、よく絡ませて炒める。分量は超適当だが、不思議に、いつも適量だ。
ブイヨンで作ったスープを入れて、弱火でかき混ぜながら煮詰めていく。この時、よくかき混ぜないと焦げてしまう。塩・胡椒で味を整え、最後にサワークリームを入れて完成だ。
ちょうどご飯も炊き上がった。後は、母様の帰りを待つだけだ。その間、茹で卵を作っておく。レタスを大きな皿に盛り付け、粉チーズとクルトンをかけておく。
母様が帰ってきた。3人で楽しく食事をしていると、父様から、またライン電話がかかってきた。今日送られたコスチュームで官邸まで来てもらいたいとの事だった。
食事が終わってから、着替えをして北町公園のトイレに転移する。何か、いつもトイレに転移していると『トイレの花子さん』みたいだ。
公園の広場に出ると、直ぐに飛翔した。上空500mまで上昇し水平飛行に移る。風除けと寒さ除けのシールドが白く光って纏わりついている。
あっという間に官邸上空に到着する。ゆっくり降下していく。官邸警備の隊員と、機動隊員たちが私の方を見ている。
官邸前庭に着地した。官邸から父様と職員の人達が出てきた。私は、父様の背広の裾をギュッと握りしめている。
官邸の中は、大きな広間になっている。でも元の世界の『白龍城』の玄関広間の方が、10倍以上大きかった。
奥の大きな応接室に案内された。怖そうなおじさん達が一杯座っている。
総理大臣は、一番奥の真ん中に座っている人だろう。テレビのニュースで見たことがある。
長テーブルの総理と反対側に向き合って座る。父様が、隣に座ってくれた。
いよいよ総理との会談が始まった。
総理大臣は、銀仮面に少女向けアニメの主人公が好きなようです。




