第一話
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私は刀で切られて、臓物を溢れ返そうとしていた。そして自身の死を覚悟した。どうしてこうなったか、は昨日までさかのぼる。
私の名前は 了。人里離れた場所にあるあばら小屋に住んでいるただの何でも屋だ。私は夢幻界と呼ばれる剣と魔法の世界で暮らしいる。そんな世界では困りごとが多く、私に多くの面倒な依頼が舞い込んでくる。
それは今日だって変わりなかった。青い月が上る深夜、扉がドンドンとけたたましく響く。
「なんだ!なんだ!」
私は布団も使わず寝ているところ起こされ、扉を急いで開けた。そこには血を流す猫耳を生やす獣人の少女が息を切らしながら立っていた。
「人がいてよかった……」
「いったいどうしたんだ!?」
「誰かに刀で切られて……」
少女はそれをいって気絶し私に寄り掛かった。彼女の背中には大きな切り傷ができていて血はそこから流れていた。急な来訪者に驚きながらも、彼女の手当てをすべく棚から薬剤と包帯を取り出した。
彼女の治療は朝方まで続いた。
―ーー
日はのぼり朝が来たことを知らせる。それと同時に獣人の少女は目を覚ました。
「ここは……どこ」
私は彼女が目を覚ましたことに安どして、彼女の言葉にこたえる。
「ここは 私が経営する何でも屋だ。そして私の名前は了。」
「そうなの、私の名前はムク」」
彼女はそう言って自分の包帯がまかれてた体を見た。そして自分が助けられたことを理解した。ムクは私に頭を下げて感謝の言葉を述べた。
「助けてくれてありがとう」
「気にするな困ったときは助け合いさ。それより君昨日どうしたんだ」
その言葉にムクは神妙な顔になって昨日の夜のことを話し始めた。
「私は普段人里で働いているんだ。仕事が終わり呉服屋の店員の友人と会ったりして、その後、家に帰ろうと暗闇の森に通じる道を歩いていたんだ。すると急に鋭い痛みが背中に走ってふりむいたら……」
昨日の事を思い出しムクは恐怖で体が震えた。私は無理しなくてもいいと言うが、彼女は話を続ける。
「狐の仮面で顔を隠し刀を持った奴がいたんだ。魔物の力は感じられなかった。たぶん人だと思う」
話を了は黙って聞き、犯人の正体を考える。
「何とか反撃しようとしたけど……ソイツ強くてさ。また斬られて、痛みで気絶したんだ」
その後、夜に目覚め意識が朦朧としながら助けを求め、了の家についた。話を聞いた了はムクに、襲われた心当たりはあるか尋ねる。
「大変だったなそれは、しかし人に斬り付けられるなんて、もしかして人を傷つけたり、襲ったりしたか?」
「そんなことしてない!」
しかしムクは私の言葉を強く否定した。
「人の街で働いている時や、買い物するときは脅かさない様帽子で頭を隠している。あんただって知っているだろ、人の街で働けたり住めたりできる魔物は善良な奴だけだって……」
ムクの言葉を聞いた私は、それもそうだと肯定する。ムクが語ったことは誰もが知っていることだった。
「そりゃ私も魔物だし人を驚かしたりするけど、傷つけたり、ましてや殺めたりしないよ」
自分が襲われたことに彼女は疑問の念で大きくうなだれた。
「……そうか、ところで体の調子はどうだ。魔物だろう、傷もう治ったんじゃないか」
私に言われ、ムクは傷に手をあてる。すると彼女の体に鋭い痛みが走った。そして声を上げて困惑した。
「あれなんで! 魔物なのに!?」
魔物は人と違い回復力の差が違う。人にとって重症でも魔物であれば2日もあれば全快する。だが傷はそれ以前に血がにじみ出ていた。それを知った私は少し考え口を開く。
「犯人の目星がついたかも知れない……」
「なんだって!」
ムクは誰なんだとまくし立てる。そんなムクに私は犯人は『封魔』の者だと告げた。それを聞き、彼女は恐怖で青ざめた。
【封魔】とは五年前に起きた人間と魔物の戦争で活躍した人間のことである。
彼らは魔物と人間の争いにおいて人間を守るために設立された組織で、霊力と呼ばれる力を持ちいて戦う。
霊力は人外や妖怪にとって弱点で、霊力を帯びた武器で攻撃されると人以上に傷つく。
そんな封魔は夢幻界に『大災害』が起きて人間と妖怪の争いが終結。人間と妖怪が和解したため解散となった。
ムクは怯えながら私に話す。
「…… そんな、私は何もしていない。第一に封魔は解散したはずだろう」
「ムクの治らない傷。妖怪に対してそんな風にできるのは、霊力を操る封魔の者だ。犯人が人だと考慮してだした考えだ。しかしなぜ封魔はお前を襲ったんだ? 封魔は良い妖怪を退治しないと聞いているが」
私が考え込んでいる中、ムクはある考えを口に出した。
「決めた。襲った人と会って話をする。なんでそんなことをしたのかを聞く」
「何言ってんだ!? 命が狙われたんだぞ!」
私はその言葉を聞き困惑した。背中に大きな切り傷があった。もし私が助けなければ死んでいただろう。
しかしムクは覚悟の言葉を語る。
「それでも、何もしてないのに襲われたんだ。私のほかに無関係な魔物が今後狙われるかも知れない。だから襲った人とあって話がしたい。そして私を襲った理由が知りたい」
「死ぬかも知れないぞ……」
「それでも、私以外が犠牲になるのを防げるだろ」
他者のために命の危険を冒そうとするムクに私は手を組み考えて口を開いた。
「そうかなら、私にも手伝わせてくれ」
「私を助けても何もならないよ。それに命を助けてもらった了に危険な目に合わせるのは……」
「ムクをほおっておけないよ。それに傷も治っていないだろ、だから手伝わせてくれ こんな時の何でも屋だ。それに私はエルカードを持っている」
「エルカードだって!?」
ムクは怪我した体を無視して大きく驚いた。エルカードとは使用者に強力な力を与えるカードのことである。またエルカードは売れば大きな金額になることで有名で、珍しいものであった。それを人里離れたあばら小屋に住む私が所有していることに彼女は驚いたのであろう。またエルカードを持つものは実力者であるということは夢幻界の通説であった。
「でも……」
ムクは私の姿を見る。私が着ているものは白のジャケットでどこにでもいる少女だった。それがムクを悩ましたが
「頼むよ」
私の言葉に少し考え込み、ムクはこちらこそ頼むと承諾した。その言葉に私は感謝した。話を終えてムクはあることに気がつき、ハッとしてしまう。
「そう言えば襲った人にどうやって会えばいいんだ?」
「それについていい考えがある。任せておけ」
作戦内容を話す。それを聞いたムクは不安になった。
「いけるかなぁ?」
「大丈夫でしょ、作戦は明日行う。薬でも塗って明日に備えるぞ」
「わかった」
「私は寝る」
私はムクに塗り薬を渡し、夜通し看病した疲れから横になって寝た。
次の日、ムクは人の街にいた。街の建物は中世ヨーロッパの趣であり、大通りには多くの人が行き渡っていた。その中には魔物も存在した。平和はそのものだった。彼女は朝から昼までロウソク屋で働き、昼ごろには呉服屋にいた。そこで働く友人と話をしたりして、平和な日常を送っていた。
そんなムクの様子を少し離れた所で私は隠れて見守っていた。ムクは襲われた日と同じ行動をしていたのだ。
私が立てた作戦はムクが無事であることをアピールして、襲った者をおびき出すものだ。
「今のところ何もないな」
私は少し安心したが周囲の警戒を怠らなかった。
夕方、ムクが街を出て暗闇の森に続く道をうつむきながら歩いていた。すると
「これはッ……」
道の端に血の跡がある事に気がついた。そして辺りを見渡し、自分が襲われた場所だと気づいた。 彼女は血の跡を見て襲われたときの事を思い出し血の気が引いた。そんな時、
「やあ」
ふと誰かに声をかけられた。彼女は驚き顔を上げ周囲を見渡す。
道の横に並ぶ木々に背負を預けている人が居た。背丈は小さく髪はポニーテール。鮮やかな青の袴を着て顔を隠すように狐の仮面をつけていた。ムクは眼を見開いた。
相手は刀を持ち、なおかつ襲ってきた者と同じ狐の仮面をしていたのだ。それがわかり恐怖で体震え、動揺した。そんな様子を見て仮面の人間は笑う。
「どうしたんだ。恐ろしい者を見たって感じだけど」
「あ、あんたが昨日私を襲った奴か」
ムクの問いかけに相手は平然と答えた。
「そうだ。顔を隠してたせいかうまく切れなかったか。しかしあの傷では生きていまい、なぜ生きてるのかな?」
「そんなことよりなぜ襲った! 誰かと勘違いしてないか!?」
ムクは震え声で相手に無実を訴える。
「私は何もしていない……」
しかし、相手は訴えを聞いて、大声で笑った。それにムクは不快感を示した。
「何がおかしい……」
「魔物なんているだけで害。存在しているだけで罪だ。襲った理由はそれだけだ」
相手はそう言いきった。余りにも酷い理由にムクは言葉を失った。
「今日は仮面をとるよ、確実に仕留めるためにね」
そう言って仮面を取り外した。現れたのは若く花の様な愛らさを持つ少女であった。その顔にムクは見覚えがあり、名を呼ぶ。
「葉月……」
「そうさ、呉服屋で働いているあんたの友人のね」
「……嘘だそんなの」
相手の正体が友人であることに、彼女は信じられず、頭が真っ白になった。
「ムクのこと人間だと思ってたんだがある日、気付いたんだ。かすかな魔力で魔物だって事にね。気付いた時は人に紛れて何かしないかと冷や冷やしたよ」
そんな葉月の言葉に思わず、ムクは涙し言葉を口にしようとする。
「私は魔物だ。だけど人間と仲良く……」
しかし辛くて、これ以上の言葉はでなかった。
「……それが最後の言葉でいいな」
葉月は刀を構えムクを見据える。ムクは精神的ショックで動けなかった。葉月の殺意がムクに向けられたそんな中、私が言葉を発した。
「言い分けないだろ」
「!!」
「!!」
二人は第三者の声に驚き、私に顔を向ける。私は葉月に向かい話しかける。「話を聞いていたが、ムクはアンタのこと友人だと思っていたんだぜ。その上、妖怪はいるだけで罪だとかいってさ。あんた刀を向ける相手が違うぜ」
それを聞いた葉月は殺気がこもった声で言い返す。
「なんだお前。そこの化け物をかばうつもりか?」
「その通り、それに彼女は化け物じゃないムクだ」
「ならばお前から斬ってやる。化け物をかばう奴なんてロクなやつじゃないからな!!」
そう告げ了に刀と敵意を向けた。了もカードを取り出し戦闘態勢に入る。辺りは緊迫した空気に包まれた。
「死ね!!」
相手は了に対し、素早い動きで上段斬りを仕掛けた。それと同時に私は懐からマジックアイテムである【エルカード】を発動。
<アイアン>
その瞬間私の体は鉄と化した。私が使用したものは『エルカード』と呼ばれるマジックアイテムで、使えば特殊能力を授けてくれる。このカードで私は体を『鉄』にした。
自分の体を鉄の様にし、刀を片腕で受け止め様とする。刀は鉄を斬れないそう考えてた。しかしそうではなかった。腕は切断とはいかなかったものの、深く斬られてしまう。
「何ッ!?」
「なにを驚いているッ!!」
驚く私に構わず、葉月は追撃を仕掛ける。その攻撃を紙一重で避けて距離を取った。斬撃を避けれたものの、私の心中は穏やかではない。