表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者に憧れて  作者: まーく
1/3

1話 冒険者になる

王都ベルファート。

大陸中の交通網が集中するこの地には様々な物が集まる。

豊富な食料に珍しい物品等から多種多様な人。

王都に勤めに来る者から悪事を働き逃亡する者。

世に絶望した者もいれば希望を胸に抱く者。



「ここが王都………」

少年が馬車から降り周りの様子に唖然としていた。

赤みがかった髪に利発そうな顔立ち、細身だが筋肉質の身体。腰には古びた剣を帯びている。

名をレインと言う。

大陸の端にあるラジラ村から二ヶ月かけてこの王都へやって来た。

目的は冒険者になること。

冒険者とはギルドから様々な依頼を請け、金や名誉を得ることの出来る仕事だ。

ただそれだけ命の危険があり実際亡くなる者は後をたたない。

しかしそれでも少年少女は憧れる。

巨万の富を得た者。英雄に上り詰めた者。

吟遊詩人によって語られる物語。


レインも冒険者に憧れる一人だった。

冒険者になる第一歩はギルドに登録する事。


レインはギルドを目指し歩きだす。

混雑する道を掻き分け進むと次第に巨大な建物が視界に映る。

扉は無くひっきりなしに人が出入りする様子にレインは戸惑いながらも中庭入る。

室内はレインの家が何軒も入る程広く何処に行けば解らず辺りを見渡す、すると天井から板が吊るされておりそれには案内が書かれていた。

それに従い進み列に並ぶ。


「ようこそ冒険者ギルドへ。受付のミエルと申します、ご用件はなんでしょうか?」

レインの順番になると声をかけてくる。

茶色いのロングヘアーにギルドの制服なのだろう紺色の服に身を包んだ見た目20代前半の女性。


「あの……登録を御願いします」


「では此方の用紙に必要事項をお書き下さい」

一枚の紙を渡され備え付けの羽ペンで記入する。

名前、年齢、出身地、職業(ジョブ)


(村長に読み書きを習っておいて良かった)

つまること無く書き終わり女性に渡すとさっと用紙に目を通す。


「結構です。では冒険者について説明いたします。宜しいですか?」


「はい」


「冒険者ギルドに登録すると例外無く一番下の赤色級から始まり、順に橙→黄→緑→青→藍→紫となり、各級に上がるには依頼の達成数プラス、ギルド側の評価で決まります」


「ギルドの評価?依頼の達成数とは違うのですか?」


「はい。はっきり申し上げますといくら依頼を達成しても素行の悪い方は上の級へは上がれません」


「な、成る程」


「ではこれをお受け取り下さい」

ミエルが差し出したのは赤色の金属板。手に収まる位の大きさで数字が刻み込まれている。


「それはギルドカードでご用事の際にご提出してください、金銭関係や依頼の管理をそこに記してある数字で行っています。尚紛失しますと1000ルビー支払われるまでギルド登録は破棄されます」

田舎であれば1000ルビーで半年は暮らせる。

レインは大事に上着のポケットにしまう。


「最後にギルドからそして私から、時として依頼を失敗する事もあるでしょうでも決して死なないで下さい。恥をかいても泥を被っても生きていればやり直せますから」


「はい!」

真剣なミエルの言葉にレインは身を引き締める。憧れの冒険者になって少し浮かれていたようだ。


「それでこれから如何されますか?」


「取り敢えず何か依頼を請けようかと」


「なら是非パーティーを組んでみては如何でしょうか」


「パーティーですか……」


「はい。報酬は人数分に割られ少なくなりますがソロより断然生存率が上がります」


「確かにそうですね………」

ハッキリ言ってレインは強くない。

村で訓練し戦いの経験はあるが住んでいた周辺では弱い魔物しか居なかった。

だがこれからは手強い敵が当然出てくる、一人より仲間がいた方が良いに決まっている。


「もしお仲間を探すのでしたら奥のフロアに行かれるとよいですよ。あそこには貴方と同じ新人が集まっていますから」


「ありがとうございます。早速行ってみます」

礼を言って言われたフロアを目指す。

そこは多数のテーブルと椅子が置かれ簡単な飲食を出す厨房があった。

レインと同じ位の少年少女が何人も居て非常に賑やかだ。


「来てはみたものの………」

その場の熱量に二の足を踏みただその光景を眺めるだけのレイン。


「よお話いいかな?」

そんなレインに声を掛けてきた少年。短髪の赤毛に角ばった顔立ち、全身鎧(フルプレート)で全身を包んでいる。


「俺はカール。君は?」


「レインだよ」

若干動揺しながらもそれを表に出さず返事をする。


「パーティーに入ってくれる人を探しててね、良かったら話しないか?」


「う、うん俺で良かったら」


「じゃああっちに他の仲間が居るから行こう」

断る理由も無くカールの後に付いて行く。


「ここだよまあ座って話そう」

そこのテーブルにはカールの他に二人の少女が居た。


「まずは改めて自己紹介するよ。俺はカール、職業は重戦士(タンク)だよ」

この世界の住人には職業というものがある。

4、5歳位でどの村や町にある職業神を奉る教会でお告げを授かる。

その種類は様々で戦いや商人或いは農民等に向いた職業が存在し、それに向いた訓練をすれば効率良く能力を伸ばす事が出来るのだ。

重戦士(タンク)は頑丈な身体と豊富な体力が特長で敵の攻撃を受け仲間を守る。


「次は私ねミリーシャよ。盗賊(シーフ)をやってるわ」

紫の三つ編みで猫を思わせる少女。

俊敏性と器用さに突出している盗賊(シーフ)

その素早さで敵を撹乱したり罠や扉の解除出来る盗賊(シーフ)は冒険には欠かせない。


(わたくし)はスウレカと申します。職業は僧侶(ビショップ)です」

きらびやかな金色の髪を腰まで伸ばし幼いが美しい少女。

冒険者の他にも教会の神官にも多い僧侶(ビショップ)は慈愛の神ククローアを信仰する事で魔法と言う能力が行使出来る。魔法は信仰する神によって変わり僧侶(ビショップ)は仲間を回復したり身体能力を上昇する。


「俺はレイン。戦士(ソルジャー)だ」

武器を持ち戦う職業。

ソコソコ高い俊敏性と筋力で戦う職業で最もオーソドックス。

魔法は使えないがそれ以外なら何でも出来る。しかし逆にこれといった特長もなく個人の能力でかなりばらつきがある職業と言える。


「おお!やっぱり戦士か!俺達だけだと攻撃の手段が少なくてな丁度いいよ。なあ彼に仲間になって貰おうぜ」


「待ってよカール。戦士なんて沢山居るんだから慌てて選ぶ必要ないわよ」

ミリーシャは頬杖をつきながら反論する。


「でもレインはいい奴そうだぞ?仲間にするなら大事だろ?」


「あんた会ったばかりなんでしょう?彼の何が解るのよ」


「勘だ!」


「あんたねぇ」

堂々といい放つカールに呆れ米神を抑える。


「スウレカあなたからも言ってやってよ」


「………………………」


「えっと……」

言われたスウレカはジッとレインを見つめる。

レインはスウレカの視線に耐えられず顔を逸らす。スウレカ程の美しい少女は村には居なかったので照れるのだ。


(わたくし)はいいと思います」


「ほらスウレカがこう言ってんだぞ」


「スウレカ本気?」


「レインさんは善人ですし何か不思議な雰囲気がある方です。仲間に迎えるに賛成です」


「え〜でも〜……」


「あのさいいかな?」


「悪いなぁレイン。ミリーシャも悪い奴じゃないんだけど慎重でな」


「いや彼女は悪くないし心配なのも理解出来る。でも俺としては皆とパーティーを組みたい」

少ない時間だが彼らの会話を聞いていて彼らと冒険をしてみたいと思った。


「ならお試しでパーティーを組んで何か依頼を請けてみたらどうかな?」


「………そうねそれなら私もいいわ」


(わたくし)も異論はありません」


「よっしゃ!じゃあ早速依頼を請けてこよう!!」


こうしてレイン達の冒険者生活が始まりを告げた。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ