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本当に大切なもの  作者: 雪雨
3/15

幼稚園の時も、小学生の時も、お母さんは仕事で迎えにはこれなくて、おじさんが代わりに迎えに来てくれていた。


幼かった自分は、寂しさはあったけど、テレビや雑誌でキラキラしているお母さんとお父さんが大好きだったから、我儘は言わず全部我慢していた。


そんな私をおじさんもおばさんも、親戚の人も親みたいに隣にいてくれてたくさん笑わせてくれた。


そして、わたしが中学生の頃、お母さんとお父さんは仕事で3年海外に行くことになった。

私は学校があるから海外にはついていかないほうを選んだ。


出発の時間になって私は、お母さんとお父さんにいつも通りいってらっしゃいと見送ると

お母さんが急に抱きしめてきた。


「永遠、いつも我慢させて、寂しい思いさせてごめんなさい。そばにいてあげられなくて、ごめんね」


お母さんにそんなこと言われたのは初めてだったから、びっくりした。

でも、それと同時に小さいころから我慢していた思いがこみ上げてきて、つい涙を流してしまった。


そんな姿を見たお父さんも抱きしめてきて「ごめんな。」って優しく謝ってくれた。


「...っ、もう、大丈夫だから、行って。」


「永遠...。」


名残惜しそうにするお母さんを前で私は、乱暴に涙をふくとまんべんなく笑って見せた。


「また輝いてきてよ!私、お父さんとお母さんが、テレビや雑誌でキラキラしてるのが、昔から大好きだった。だから寂しいのも我慢できたんだよ。」


涙を流しながらお母さんは私の顔を見る。

その時のお母さんはとてもきれいで、でも初めて見た涙にちょっと笑ってしまった。


「ふふっ、もう!これでお別れじゃないんだから、しゃっきっとしてよね!」


私がそういうと、隣にいたお父さんが笑いながら


「確かに、そうだな。俺たちの見ない間に、永遠は大きくなったなぁ。お父さん感激だよ!」


「永遠、ありがとう。お母さんたち頑張ってくるからね!いってきます!」


いつも聞くいってきますに私も、胸を張って いってらっしゃい。って言えた気がする。




お母さんたちを見送った夜、病院から電話があった。


「立花永遠さんのお電話でお間違いないでしょうか。」


「はい、そうですけど...。」


「こちら、国際空港国立病院です。落ち着いて聞いてください.....」


「え。」



私が見送った後、お母さんたちの乗る飛行機が故障し、そのまま落下したらしい。

飛行機に乗っていたのは合計で67人。

今回の事故で亡くなった人数、67名。


お母さんとお父さんは、あの日以来帰らぬ人となった。



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