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少し晴希と話して、沈黙が起きる。
そんな時、何気なく気になったことを聞いてみた。
「晴希ってさ、将来の夢とかあるの?」
「突然だね、どうした?JK」
私の急な質問に晴希は少し驚きながら私の方を向いた。
そんな晴希に私は少し笑いながら答える。
「その呼び方やめて。何となく気になっただけなんだけどね。」
そういうと晴希は私から目線を外して前を向いた。
また、沈黙が生まれて、聞いちゃいけないことだったのかと少し焦った私は、前を向く晴希の服の袖を引きながら聞く。
「ごめん、聞いちゃいけなかったかな?」
私がそういうと、晴希は笑いながら私の手を袖から遠ざける。
「そんなことないよ、ごめんね。ちょっと考えた。」
「考えたの?晴希って大学生なんでしょ?」
「あぁ、そうだよ?」
「どうして、悩むの?夢があるから大学に行くんでしょ?」
私がそういうと、また寂しそうな顔をした晴希が言う。
「そうだよ、でも俺の場合は違うかなー。」
「え?」
「今やってる仕事も行っている大学も俺のやりたいことじゃないからね。」
そういうと晴希は私に優しく笑いかけて、私の頭をなでながら
「永遠は、自分の好きなことをやるといいよ。」
「私の、好きなこと?」
「うん、何かあるでしょ?好きなこと。」
そういわれると私は素直に晴希の方を見れなくなってしまった。
私は小さいころから輝いている親を見ることが大好きだったから、自分もいつか親みたいになるんだろうと思っていた。
でも、音楽が禁止された今、私の好きなことって、好きなものって何なんだろう。
私が下を向いて、う~ん。と悩んでいると隣で晴希がクスッと笑う。
「なにー?」
「いや、そんな悩む?と思って。」
「私好きなことって改めて考えると無いなーって思って。」
「スポーツとかは?」
現役JKなんだから、体動かしたくてたまらないでしょ!と笑っている晴希に、チョップをかまし
「運動嫌いだもん。」
といって、少し拗ねてみた。
そしたら、そっか。といって晴希はじゃあ、と私に問いかける。
「音楽は?」
「え?」
「音楽は、好きじゃないの?」
音楽。
本当は大好き。
でも、今はその音楽は禁止されている。
それを好きって言ってもいいのかな。
「音楽は、わからない。」
私がうつむきながらそういうと、晴希が悲しそうにいう。
「なんで?俺が歌ってた時、いかにも好きそうだったのに。」
「うーん、どうだろう。歌は好きだけど、音楽は、わからないよ。」
そういうと晴希は突然立ち上がる。
突然立ち上がるもんだから、傘も地面に落ちて私たち二人はそのまま雨に打たれる。
「ちょ、ちょっと。急に何?」
「なんでもない、永遠。」
私は戸惑いながら、地面に落ちた傘をとろうとしたとき、さっきまでとは違う最初の頃の晴希みたいな冷たい声で名前を呼ばれた。
「俺、もうここには来ないわ。」
「....え?」
そういうと、晴希は自分の傘をさしてこの場所を離れた。
突然の出来事が多すぎて頭の回らない私は、足元に転がる自分の傘をとるのも、少しづつ離れていく晴希のその背中を追いかけることもできずに、その場に立ちすくんでいた。




