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45 報告と今後

 わたしたちが王都に来てから数か月。ようやく冬が終わりに近づいてきた。

 雪が少なくなり、寒さが和らいできた昨今。少しづつ王都から移動する人、新たに王都にやってくる人が増えてきている。

 もう、今年の冬も問題なく越せたと思っていい頃だろう。


 ブーメランを使いこなす特訓も、強くなるための特訓も行ってきた。これならば多少のトラブルにも自分達の力で上手くやり過ごしていける……はず。


 世間知らずという点においては正直、どうしようもない気がしないでもないけれど。


 とりあえず、王都でできることはもうやり切ったと言っていいだろう。


 あとは、エルフの村へと向かってくれていたヴィックさん達の話を聞くだけだ。







「いい情報……とは言い難いですが、有力な情報は見つかりましたよ」


 人気のない王都の外れで、わたしとレティは、エルフの村から戻ってきたセレーナさん達から話を聞いている。


「さすがですね」


 素直に称賛の言葉で返し、その有力な情報を聞かせてもらう。なんだか聞く前から嫌な予感がするけれど、聞かないわけにはいかない。だって四人の表情があまりにもよろしくない。なんだか怖いもの。


「まず、例の代償に関してです」


 村の中でいろいろ探し回った結果、村長の家に厳重に保管されていた書物に、願いを叶えるための儀式の詳細と、そのために捧げるものが書かれていたそうだ。そんな重要な書物どうやって閲覧したのか気になるところだけど、それは関係ないので置いておこう。

 ごちゃごちゃ書かれていたそうだけど、要約するとこういうことらしい。



 一.雲も星もない深い闇の夜

 一.望みの媒体となるもの

 一.1000人の純なる血と魂を奪ったナイフ

 一.無色透明な魔石に大量の魔力を込めたもの



 これらが全て揃っていないと成功しないという。どうやら嫌な予感は当たったようだ。



「媒体……そういえばお母さんの体はお父さんが持ってったみたい」

「そのようですね……。一応確認しましたが、どこにもありませんでしたから」


 愛が深いって言葉で済ませていいレベルじゃないくらいには、狂気的なお父さんよね。言わないけど。



「三番目のやつ、凄い大事件になるんじゃないですか?」

「一気にやれば大事件だけど、こっそりやられたら不審死が相次いでいるってくらいにしかならない可能性もあるわ」


 ああ、それもそうか。むしろその方が確実よね。


「一応、もっと詳しく調べてみたんです。どうやら、この魔石の入手はかなり難しいみたいですね。ナイフも普通のナイフではないそうです」

「無色透明の魔石なんてあるの?」


 ナイフはともかく、無色透明の魔石って見たことないわね。

 通常、魔石は魔物から出てきて、黒い色をしているものしかない。それに魔力を込めて、魔道具などに使用するのが魔石の使い方だ。

 無色透明のものは今まで見たことが無いわね。


「ナイフは『純銀のナイフに月の光を当てながら、使用者の魔力を三日三晩籠め続けたもの』でなければならないそうです」

「純銀のナイフは作ろうと思えば鍛冶屋でも作ってくれるけどね。魔除けになるって貴族間ではお守りとして持たれてるらしいし」


 三日三晩魔力を籠め続けるって大変そうだけど、不可能ってほどじゃないわよね。

 鍛冶屋で作ると高そうだけど。お守りになるってことは、やっぱり聖なる力が宿ってるとかそういう感じ? 銀製の物ってそんなイメージがあるのよね。


「無色透明の魔石は、数は少ないが今まで何度か発見されている。そしてそれを持っている魔物が特別個体であるということもわかっているそうだ」

「特別個体?」


 そう言いながらヴィックさんはわたしを見ながら続ける。

 ん?


「所謂、ユニーク個体と呼ばれる魔物に宿っている魔石が、無色透明の魔石らしい」

「えっ」


 そういえばわたし魔物だったわ……。もしかして、お腹掻っ捌いたら無色透明の魔石が出てくるのかしら。体内にそんな硬いものがあるなんて信じられないわね。

 大量に魔力を込めるとなると、それなりの大きさが必要になるんでしょうね。わたしのでもいけちゃう感じ?


「まあでも、シュガーの魔石じゃそんなに大きくないんじゃない?」


 ルースさんのそれはディスってます?

 まあ、純然たる事実なんでしょうけど。


「わたしよりも大きなユニーク個体の魔物……まあ、探せばいるでしょうけど」

「シュガーちゃんよりおっきい魔物は見たことあるけど、どれも黒い魔石だったよね」

「無色透明の魔石って見たこと無いんじゃない?」


 四人が同意するように頷いていることから、無色透明の魔石……ユニーク個体の魔物って本当にレアなんだとわかる。何せAランク冒険者でも見たことが無いって言ってるんだから。


「とりあえず、僕たちが得てきた情報はこれくらいだね」

「とっても有益な情報です。大まかにですけど、ルーファスさんの行き先を絞れそうですね」


 本当に、この人達のおかげで助かった。何度お礼をしても足りないくらいだ。

 わたしたちが得た情報……といってもルーファスさんらしき人物が船で出て行ったことくらいだけれど、そういった情報交換も行い、今後についての話し合いを始めた。






「この『雲も星もない深い闇の夜』っていうのはなんですか?」

「数年に一度だけ、そういう夜が来るのよ。『死者の時間』って言われてるわ」


 こわっ。

 前世の現代だったら明かりがたくさんあるから怖くないだろうけど、この世界には街から出たら明かりなんてないからなあ。


「本当に暗闇だから、普通は外に出ないのよ」

「子供の頃はよく脅かされたものです」

「悪い子は『死者の時間』に家から締め出されるぞ! って言われたね!」

「昔本当に締め出された子供が帰って来なくなったとかなんとか……」


 なまはげみたいな戒め的な扱いをされてるのね。


「次はいつ?」

「前回は三年前で、次はあと一年もないらしいな!」

「じゃあそれまでに探さないといけないってことね……」


 今、この間も誰かが銀製のナイフで殺されていたりするのかしら……。想像したくないわね。




「ひとまず、マルセール国には行くべきね。従魔コンテストにユニーク個体が出てくる可能性もあるし」


 やはり当初の予定通り従魔コンテストに行くことは決定ね。

 それに、従魔コンテストが開催されれば、他国からもたくさん人が来るだろうし、情報収集もできるだろう。


「むしろシュガーに釣られてくる可能性もある」

「確かに…鑑定をされると『ユニーク』って見えちゃうのよね」

「そうなんですか?」

「うん」


 確か、ルーファスさんって鑑定スキル持ちなのよね。旅をしたことがあるっていうなら、レベルもそれなりにあるでしょうし、たぶんバレるでしょうね。


「一般の人達にもユニークってバレちゃうと面倒かしら……そういえばどうしようって話をした記憶があるような」

「鑑定を遮断できるような魔道具がないか探すんだったんだっけ。忘れちゃってたね」

「のんきね~」


 ルースさんが呆れたように言い、他の三人も困った子供を見るような表情をしている。

 忘れていたものは仕方がない。


「見つからなかったから強くなるための特訓をしてたんだっけか」

「スキルでどうにかできないの?」

「ヒト型になったら余計に表示がおかしくなってた」

「どうしようもないわね」


 そうなのよね〜。ヒト型になると鑑定の結果がバグってたのよね。


「無い物ねだりしても仕方ないし、バレても何とかなる。むしろルーファスさんが釣れるかもしれない。なら隠さずに行くわ」

「そうだね」


 次の目的地は変わりなく、従魔コンテストだ。参加してルーファスさんを釣る!

 別の面倒な人達が釣れないことを祈るばかりだけれど。従魔攫いとかいるのかな。いそうだわ。わたしの身もレティの身も守らないとね。



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