30 掘り出し物
遅くなりました。ごめんなさい。でもたぶんしばらくこんな感じです。
「人がいっぱい」
「賑やかね」
ここは市の会場だ。王都では数か月に一、二度ほど服や道具、武器なんかの市が開かれる。今日開催されると聞いて何か掘り出し物でもないかとレティとふたりで見に来てみたのだ。
さすが王都、規模が大きい。会場は大きな広場なのだが、そこのほとんどが市の会場として使われている。
わたし達みたいな冒険者も多いけど、一般人向けの物も置いてあるので、いろんな人でごった返している。
いいもの見つかるかな。
「ヒト型のシュガーと街の中を歩くの初めて」
「そういえばそうね」
今日は持続時間の把握も兼ねて、ヒト型で買い物に来ている。
前は三時間ほどだったけど、今ならもう少し長くこの姿でいられるはずだ。
ちなみに従魔証は外した。さすがにバレるとは思わないけど、念のために。あれは取り外し可能なのだ。
ふたりで並んでいるものを見て回る。
「うーん」
「いいのない?」
レティが鑑定でいろいろ見ていってくれているのだが、どうやらイマイチのようだ。
商人もいろいろ進めてくるのだけど…。
「このスカーフはダンジョンから出たレア物でね。幸運をもたらすと言われているんだよ」
「このナイフの材質はわからないんだ。でもね、ミスリルよりも切れ味がいいんだよ」
「この腕輪に付いているのは宝石でね。なかなか綺麗だろう? お嬢ちゃん一つどうだい?」
どれにもレティは首を横に振る。どうやらハズレのようだ。
まあ、そんな簡単に良いものが手に入るはずないか。
「あ」
「ん?」
レティが小太りのおっさんの店で何かを見つけたらしい。
並んでいるのは布切れやら、ツボやら、小さい木箱やら、なんだか怪しいものが多い。
レティが見てるのは布切れみたいだけど…。
「いらっしゃい。お嬢さんお目が高いね。そいつはただの布切れじゃあないんだよ」
「そうなの?」
レティが布をジッと見ているのでわたしが話を聞く。
「それには形成変化の魔法効果が付与されているんだ。魔力を籠めれば一瞬で服が着れるって代物だよ」
「!」
そ、そんなピンポイントでわたしが欲しい物があるなんて!!
「まあ質はそのままだがね」
つまりその薄っぺらい布が生地ってことなのね。でももうこの際贅沢言わないわ。欲しい。
「買うわ」
「800Gだよ」
うーん…魔法効果が付いてるから仕方ないとはいえ、服を買うだけなのにお高い。買うけどね。
「まいど」
買った布切れをアイテム袋にしまい、レティに話しかける。
「まさかこんな便利なものがあるなんて。ありがとうレティ。見つけてくれて」
「うん。後で試してみようね」
「ええ」
上手く扱えればいいな。あんまり変な服じゃないといいんだけど。
他にもダンジョン産の武器が置いてあるお店も見てみたけど、やはりお値段がよろしくて手が出なかった。
この前オーガを討伐した際にそれなりにお金も得たけど、大銀貨5枚の指輪は無理だった。魔法の威力を上げるものだから、レティにあげたかったんだけどな。貧乏って辛いね。
一通り見て回ったけど、結局手に入れたのはあの布切れだけだった。まあ、これが手に入っただけでも収穫だけど。
早速、王都の外に出て、人のいない場所で試してみることに。
「確か、魔力を籠めればいいって言ってたわね」
どれどれ…。
「おお!」
「おおー」
あの布切れが布の服になった!
ちゃんと上下揃ってます!
すごく地味…シンプルなデザインだけど、まあそれは仕方ない。
「これは便利だわ」
「すごい」
この世界にはまだまだ知らない物がたくさんあるのね。
その後、実際に変化とこの布切れを同時使用してみた。
なかなかタイミングが難しかったけど何度も繰り返した結果、問題なくヒト型への変化と同時に服を着るのに成功した。途中失敗して全裸のわたしの横に服が落ちてるというのを何度か繰り返したけど、なんとか扱えるようになったと思う。
これがあればいつでもヒト型になれるわね。もちろん人前でなんてやらないけど。
従魔証に括り付けておきましょう。
日付は変わり、今日も特訓だ。
でもその前に。
「お昼は何がいい?」
「おいしいの」
「漠然としてるわね」
お昼ご飯の材料を買っていく。
今日は何にしようかな。
この世界って結構食材の種類は豊富なのよね。だから作ろうと思えばいろいろ作れる。
何にしようか迷うわね。
いつもの場所で特訓をしているわけだけども。
「なんというか、マンネリというか、代り映えしないというか」
「うーん」
やっぱり、何かを狩ったりする方が経験値みたいなものは手に入る気がするのよね。さすがにゲームみたいな経験値とかの概念はないけど。
こう、強い敵と戦えば成長するっていうのは、やっぱりあると思うの。
「そろそろ実戦に行きたいわねー」
「そうだね」
「何かいい依頼でもあれば行きましょうか」
「うん。またオーガが出てももう平気」
「そうね。もうオーガに苦戦なんてしないわ」
まあ、オーガなんてあれ以来出てきてないみたいだけど。オーガ並みに強い魔物とかいないかしらね。
少し遠くても、わたしの足なら問題ないし。
明日にでもギルドに行ってみましょう。
そしてお待ちかね! お昼ご飯の時間です!
今日はシチューだ。まずは具材を切る。そして炒める。バターと小麦粉を入れてさらに炒める。水を入れたら煮込む。そして牛乳、塩、胡椒を入れて混ぜながら煮込む! で、終わり。
あとはパンを焼かないとね。
「シュガー、また誰か来たよ」
「誰っていうか、ヴィックさんよね」
遠くに見えるのは、ヴィックさんだ。そしてその後ろから三人来ている。
あの人達そんなに忙しくないのかしら。
「うまそうな匂いがする!!!」
「構わないんですけども、事前に言ってくれる方が助かります」
「でしょうね。ごめんなさい」
一応たくさん作ったから大丈夫だけど。パンとか足りるかな。
それにしても、わたし達がここで食事してるってよくわかるなあ。毎日ここに来ているわけじゃないのに。なんでだろう。
「うまいな!!」
「おいしい」
「美味しいです。これは牛乳で作っているんですか?」
「美味しいわね」
「おいしーい!」
またも好評のようだ。パンはヴィックさん達が提供してくれた。柔らかくて美味しいパンだ。
「あとでレシピ教えますよ」
「ありがとう!!」
「毎回すみません」
セレーナさんに教えた。カレーもそうだけど、セレーナさんが料理担当なのかな?
「またもご馳走になってしまったな!」
「ヴィックお昼前からここに来る気満々だったよね?」
クレアさんの冷静なツッコミが入った。ヴィックさんって食事に目がないのね。
他の三人もそれに振り回されてるけど、嫌じゃないんだろうな。いいパーティだね。
「まあいいじゃないか! そこでだ! お礼に僕らと模擬戦でもどうだい!?」
「え」
模擬戦…!?
いいの? Aランク冒険者パーティとの模擬戦なんて願ったり叶ったりだけど。強い相手と戦いたいって思ってたところだし。
「いいんですか?」
「うむ! 構わんぞ!」
「勝手に決めちゃって…」
ルースさんが呆れたようにつぶやく。でも、嫌がっている様子はない。むしろ三人とも乗り気に見える。やっぱり高ランク冒険者って好戦的だったりするのかしら。
わたしはレティを見る。レティはわたしを見ながら力強く頷いた。
こんな機会今後あるかわからないものね。
「是非お願いします」
「お願いします」
今のわたし達の力がどれくらいこの人達に通じるのか、是非試してみたい。
誤字報告ありがとうございました。便利ですねあれ。




