16 次の行き先は?
依頼をこなすのに慣れてきた頃、冒険者ギルドの二階にある資料室を覗きに来た。
せっかく使えるんだからね。
行ったことないけど狭いイメージだったのでサイズは小さくしている。
資料室と書かれた部屋に入ると、本特有の匂いがした。
本はたくさんあるのに、人は少ない。まあ、あんまり冒険者が利用するイメージないもんね。
入口から入ったすぐ横にカウンターのようなものがあり、そこに年配のおじさんがいた。
「おや、資料室をご利用かい。若いのに偉いね。ギルドカードを見せてくれるかい」
レティはギルドカードを見せる。
「はい、確かに。本の持ち出しはできないから気を付けてね。写すのは大丈夫だから。紙と書くものを売ってますからご自由にどうぞ」
カウンターに紙とペンが置かれていたので一式買っておいた。別にさほど高価ってわけでもないのね。
調べたいものはいろいろあるのよね。一応、旅の目的は父親探しだけど、急いでいるわけじゃない。それに、ルテラの森に一番近いこの街に情報があるとは思えない。しかも、もう2年も経ってるし。
ひとまず、次にどこに向かうかを決めようと思って、周辺の街の情報を得に来たのだ。
わたしとしてはこの街にはあんまり長居したくないのだ。ルテラの森が近いからね。
レティが本と大きな紙を持ってきた。
ここは静かだからいつもより小声で話しかけてくる。
「地図と、街の情報が書いてある本があったよ」
「ありがとう」
レティが地図と本を広げてくれる。キツネの姿では本をめくるのは難しいけど、キツネにも肉球はある。できないわけではない!
でも破いたら困るので、めくるのはレティがしている。むぅ。
現在位置がチェルテラ王国の、セラ。ここは割と北の方に位置する国のようで、一年を通してあまり暑くはならないようだ。その中でもセラは過ごしやすい気候の街みたい。北に行けば行くほど寒くなっていくそうだ。セラから南東に王都があり、さらに南に行けば海がある。海を渡ればマルセールという国があると。うーん。覚えるの面倒。
「シュガーシュガー」
「んー?」
「ここ行きたい」
そう言ってレティは読んでいる本を指さした。そこにはマルセール国について書かれている。
「従魔コンテスト?」
「シュガーなら絶対優勝できる」
従魔を連れている人をテイマーと呼ぶのだが、マルセール王国の首都はテイマーの都って呼ばれているらしい。そんなのあるんだ。
年に一回、世界中からテイマーが集まり開催されるのが、この従魔コンテストだ。
美しさ部門、賢さ部門、強さ部門、そして総合部門があり、どれか一つに参加できる。優勝すれば豪華賞品がもらえるそうだ。すごいね。
豪華賞品か。何がもらえるのか気になるね。行ってみたいかも。
「そうねえ。特に行く当ては決まってないし、いいかもね」
「うん。行こう」
「賢さ部門とかならいけるかもね。人並の頭脳でいいなら」
「総合部門に出るんじゃないの?」
「ええ…?」
強気過ぎません?
「わたしの強さはスキルありきだからなあ…」
人前でスキルって使っても大丈夫かな。ていうか、わたし自分の種族の生態すら知らないんだけど、大丈夫かな。
レティがやる気満々だから出ることになりそうだけど、その前に調べないといけないことがいっぱいありそう。
「開催時期は?」
「冬が明けて暖かくなってからだって」
「まだ時間あるわね」
これから冬が来る。寒冷期をどこで乗り越えるかも考えておかないと。他にも移動ルートとかお金とかいろいろ…。
「忙しくなりそう」
「いっしょにがんばろ」
そんな可愛い顔で言われたらやらないわけにもいかないわね!
頑張ろう!
「魔法とスキルと魔物の生態に関する本が見たいわ」
「…うん。探してくる」
一緒に頑張るんでしょ?
「王都に行ったことがあるかって? ああ、何度かあるぞ。護衛依頼とかでな」
そう答えるのはレオーネだ。他の街の情報は、実際に行ったことのある人にも聞いておくべきだと思って聞いてみたのだ。
ちなみに、ここはこの前奢ってもらった従魔レストランだ。美味しいし、広いしで、ここで話をすることにした。
「どんなとこ?」
「当然だが、この街よりデカイぞ。その分人が多い。だから揉め事も多い」
「治安悪いの?」
「表向きはそんなでもない。ただまあ、必要悪みたいなのはいるって聞いたことがある」
荒事を荒事で片付けるような犯罪集団とかがいるわけね。
「でも、会うことなんて滅多にないから、普通に過ごすには賑やかでいいところだ。依頼も多いから金稼ぎにもいい」
「寒冷期は?」
「この街より南寄りだからな、過ごしやすい方だ。ただ雪は降るし、魔物も減る。この国じゃ、どこもそんなに変わりはないよ」
この国では保存食の研究が進められているみたいで、冬の間の食料はほとんどが保存食だ。
おそらく王都も変わりはないだろうな。人が多い分、行き渡っていない可能性もあるかも。
でも、冬が明けたらマルセール国に渡りたい。できれば少し南下したいけど。
「どうしようかな」
「行きたいところがあるのか?」
「マルセール国にね」
「もしかして従魔コンテストか」
「うん。出る」
「昔見に行ったことがある。シュガーならいい成績を収めるかもしれんな」
それを聞いてレティが嬉しそうに頷いている。ハードルを上げられている。
「ただ、行くなら注意しとくといい。従魔コンテストが開催される時期はいろんなやつがいる。純粋なテイマーだけじゃなく、金で従魔を買った貴族とかもな。中には従魔を盗もうとするやつもいる。シュガーは目立つからそういうやつに目を付けられるかもしれない」
どこにでもそういうのっているのねえ。テイマーが子供エルフじゃ狙われやすいかもしれない。気を付けないと危ないかも。
「気を付けるわ。ありがとう」
「気にするな。マルセール国に渡るなら冬前には南下したいな」
「王都で過ごすか迷っているのよ」
「別に平気だと思うぞ? ここで保存食を買っていっても冬は越せるだろ」
「それもそうね」
もう少ししたら、この街を出ることになりそうね。
「情報ありがとう。お礼に奢るわ」
「そうか、じゃあありがたく受け取っておこう」
相変わらず豪快な食べっぷりだわ。
今日もお金稼ぎのために依頼を受ける。
お金が貯まったら保存食を購入して、王都に移動することにしたのだ。
この街の依頼には大きな稼ぎになるようなものが少ない。というより、ルテラの森に行く依頼が多くて、わたしたちが受けられるものが少ない。
そういう意味でも、早く移動したいものだ。
森の中で薬草採取兼狩りをしていたら、音が聞こえた。
「誰か戦ってるみたいね」
「うーん? 音がするようなしないような」
「まあ、それほど近いわけでもないけどね。こっちまでは来ないでしょう」
数が多いみたいね。ここからじゃさすがに全部聞き分けるのは無理かな。
「どうするの?」
「え? 別にどうもしないけど。どうにかしたい?」
「うーん…あ、でも、人が戦ってる姿を見てみたいかも」
「ああ。それはいいわね。わたしも見たいわ」
他人が戦ってる姿をまだ見たことがない。見られればいい勉強になるかも。
「ちょっと行ってみましょうか」
「うん」
「見つからないようにしましょう」
「わかった」
総合評価が100を超えていました。
見てくださる方がいるというのが嬉しいです。
ありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。




