13 宿屋
「本当に奢りでいいの?」
結構食べたからなんか心配になってきた。お金は一応持ってるけど。
「ああ。構わない」
「なんでここまでしてくれるの?」
レティが気になって聞く。わたしも気になる。何を要求されるのやら。
「いや、その従魔と話がしてみたかったんだ。魔物と話す機会なんてないからな」
変わった人だ。何か本当は目的でもあったのかもしれないけど。わたしにはわからないな。
「あとまあ純粋に、あんたらが気になったからな。おのぼりさんって感じがするし」
それは否定しないけど。まあ、悪い人達じゃなさそうだし、このまま借りにしておこう。
「ありがと」
「気にしなくていいさ」
「ええ、気にしなくて大丈夫ですよ。同じ冒険者ですから」
「ウチらもこうして先輩にご馳走になった時があったもんね」
そう言われると、純粋な善意って感じがするから不思議よね。わたし達にもいつかそんなことが言える日が来るかしら。
約束通り奢ってもらい、店を出る。
「従魔も泊まれる宿はすぐそこだ」
どうやら近くにあるらしい。このお店はその宿の客をターゲットにしてたりするのかもね。
「困ったことがあったら聞きに来るといい。冒険者としてアドバイスしてやるぞ」
「無理はしないでコツコツやるのがランクを上げる秘訣ですよ」
「冒険者ギルドの二階は活用した方がいいよ。あそこ便利だから」
と、三者三様のお言葉をもらったので、お礼を言って別れる。
「いい人達だったわね」
「うん」
まあ、わたしの時ほどレティは心を開かなかったみたいだけど。やっぱりヒトは苦手なのかな。
教えてもらった宿に着いた。
宿が大きい…というより、宿の半分くらいは納屋になっている。たぶん、従魔はそっちなんだろうな。納屋も綺麗だし、そこで寝るのは全然かまわないけど、レティを一人にするのが心配だ。夜中にこっそり行こうかな。
中に入ると、宿の従業員が話しかけてくる。
「いらっしゃいませ。えっと、お泊りですか?」
「うん。この子も」
従業員がわたしを見る。レストランと一緒ね。
「あなたとその従魔だけ?」
「うん。泊まれないの?」
「いえ、大丈夫です。素泊まり一泊350Gになります」
この世界の通貨はGといい、銅貨1枚10Gになる。10Gで大体100円くらいかね。銅貨一枚でパンが一つ買えるくらいだ。
銅貨の上が大銅貨なので、今回は大銅貨3枚、銅貨5枚だ。
ちなみに街への通行料は銀貨2枚なので2万円かかった。ギルドカードがあればそれがタダになるんだからすごいわ。
「従魔は隣の納屋になりますがよろしいでしょうか」
「むぅ。しかたない」
このサイズじゃ部屋には入れないんだろうなあ。
「ではご案内します。従魔はこちらです」
わたしとレティは大人しくついて行く。
納屋の中には藁がたくさん引いてあった。従魔同士が会わないように簡単に仕切りもしてある。ゲームで見た牛小屋みたいね。居心地はよさそう。
早速乗ってみる。おお、いいね。地面に直接寝るよりこっちの方が柔らかくていい。
「気に入ったようですね」
「うん」
「では、お部屋にご案内します。大丈夫でしょうか?」
「うん。平気」
レティは従業員に案内されて行った。うーん。大丈夫だろうか。
耳をすませておいたけど、特に変な物音はしない。
しばらくするとレティが戻って来た。
「シュガー」
「どうかした?」
レティは藁に寝そべってるわたしのところに来て、抱きつく。
「レティもここで寝る」
「部屋気に入らなかったの?」
「ううん。シュガーと一緒がいい」
それじゃお金払った意味がないでしょ。
「後で隙をみてわたしがそっちに行くわ」
「ホント?」
「騒がれないように気をつけないとね。部屋どこにある?」
レティに部屋の場所を聞いておく。ちゃんと窓がある部屋のようなのでそこから入ろう。
「今回は従魔証の為に元のサイズでいたけど、もう必要ないし、次からは小さくなったり人型になったりして側にいるわ」
「その方が一緒にいられるなら、そっちの方がいいな」
「そうね」
それで戦闘でスキルが使えなくなったら本末転倒だけど。
もう少しスキルレベルが上がれば持続時間も延びるかな。
すっかり夜になり、誰かがここに来る気配もない。
なので、身体を小さくしてレティの部屋に向かう。
言われた部屋を探し出す。窓から覗くとレティがベッドに座って待ってた。
わたしに気がつくと開けてくれる。
「シュガー」
「お待たせ」
レティは嬉しそうにしてくれる。わたしも嬉しい。
もう、少し姿が見えないだけで心配で心配で。過保護になっちゃったなあ。
それを嫌とは思わないけど。
「明日から冒険者として仕事するんだから、早く寝ないとね」
「うん。楽しみ」
レティがわたしを抱きながらベッドに潜り込む。今日はいろいろあって疲れたからか、2人ともすぐに眠ってしまった。
「さて、朝ね」
「んん…」
「可愛い」
寝てるこの子も可愛いけど、起こさないとね。
わたしもそろそろ納屋に戻らないと。騒がれても困る。
「レティ起きて」
「むぅ…おはよ」
「おはよう。準備ちゃんとするのよ? わたしは一旦納屋に戻るから」
「うん。わかった」
ちゃんと目が覚めたみたいね。よく眠れたようだし、ひとまず安心かしら。
まだ子供だもの。夢見でも悪かったらと心配だったのよね。
窓から出て納屋に向かう。特に異変も起きずに納屋へ戻り、藁の上で元に戻る。
特に騒ぎも起きていないようなので、抜け出したことに気づかれなかったようだ。
そんなに待たずにレティが迎えに来る。
「シュガー。いこ」
「ええ」
さて、冒険者ギルドで仕事を貰いに行きましょう。
冒険者ギルドに到着。
なんとまあ、人の多いことよ。
レティが潰されないか心配だわ。
レティを先行させると怪我をしそうなのでわたしが前を歩き、人混みをかき分ける。
昨日みたいな酔っ払いはいないようで、デカイ魔物に喧嘩を売ろうとする人はいない。
えーっと、Gランクの依頼は…あの端っこのボードね。
ボードの前まで来てレティを前に立たせる。Gランクボードの前には人はいない。
正しくはわたしのせいでみんな近寄れていないんだけど。
「えっと、これ」
レティが取ったのは薬草採取の依頼だ。
レティの鑑定があれば薬草を見分けることは簡単だからね。
それを持ってレティは受付の列に並ぶ。そんなレティを気にしながら常設依頼のボードを見る。正直、ギルド内すごく混雑してるから、わたしはどこにいても邪魔である。列に並ぶのはさすがに無理だった。
常設依頼はゴブリンの討伐と、ウルフの討伐のようだ。この辺多いのかな。
討伐証明として魔石か。売り物になる部位とか書いてないかな。
そんなのを探していたら、レティが戻って来た。どうやら無事に依頼受注できたようだ。
二階の資料室も気になるけど、今日はやめとこう。ふたりで冒険者ギルドを出た。
薬草は街の近くの森の中にあるらしいので、そこに向かう。昨日街に入ってきた門とは別の門から出れば近いようだ。
そちらに向かう前に屋台で朝食を購入。匂いに釣られた形である。
お肉の挟まったサンドイッチみたいだ。後で狩りをする予定なのでわたしの分は買っていない。
あんまりヒトの食事に慣れると、狩りで取った獲物に飽きてしまうのではないかと不安なのである。
ヒト型になって料理とかすればいいんだけどね。持てる荷物量もお金も制限があるから、そううまくいかないけど。
お金に関していろいろ設定を考えました。
日の目を見るときが来るだろうか。




