ウルルに登るということ
オーストラリア、ノーザンテリトリーにあるウルルを観光してきました。
ウルル? という方はエアーズロックという名前だとピンとくると思います。
さて、このウルル。地球のおへそ。予約した後に調べて知りましたがオーストラリア先住民の方の聖地でした。神聖な場所で、大切なところなので、最近は登山は非推奨。危険なので、怪我をして欲しくないという願いもあるそうです。亡くなる方もいるそうなので、とても納得が行く話です。
登山するか悩みましたが、せっかく行くので、というとっても自分本位な気持ちで登山することに決めました。登山の条件は厳しく、一日中登山禁止ということも珍しくないそうなので、登山出来るとなっていたらそれを「どうぞ」の合図にしようかと。何とも自分本位な考え方です。でも、宗教観とかあまりピンとこない。日本で例えられても、思いつくものが、しっかりくるものがない。
そもそも、自然って誰かのものなのかな? という気持ちが根底にあります。確かに大切な場所や物をグチャグチャにされれば腹が立つ。大規模になると戦争ですね。しかし、色々な歴史的背景、文化的背景があっても、観光収入として登山許可を出している。なら登ろう。きちんとマナーは守る。そのくらいの軽い気持ちでした。登山出来る可能性は三十%以下だそうで、登頂禁止になっている確率の方が高いというのもあり、深く考えるのを放棄しました。
さて当日、登山が含まれるツアーに参加しました。
三回、登山可能か確認するツアーだったのですが一回目、風が強いので、登山は禁止されていました。
壁画や泉を観に行き、神話を一つ聞きました。次話に書こうと思います。
ウルルの聖地の解説や、アナング族の文化をガイドさんが説明してくれます。そして登山に関する話も聞かされます。前夜、今更オーストラリア先住民やオーストラリアの歴史をネットサーフィンしていた私。登山はしたいけど、やはりしない方が良いのかなと、悩み出します。
二回目。やはり同じで登山禁止。
オーストラリア先住民、ウルル周囲で暮らすアナング族にまつわる文化センターへ行きました。写真禁止ゾーンです。
アナング族さんは、現在、昔と同じように暮らしてはいないそうです。服を着て、電気、水道、ガスを使い、洞窟ではなく普通にお家に住んでいるそう。でも、先祖代々暮らしてきた土地を愛していて、ウルルの側にいる。文化を伝えていきたい。と、ガイドさんが言っていました。今回、アナング族の方とは触れ合っていないので実際はどうなんでしょう。
ウルルがある、ウルル=カタ・ジュタ国立公園は現在アナング族の所有地です。オーストラリア政府と賃貸契約を結んでいるそう。
賃貸契約!
衝撃的でした。
旅行をすると、歴史とか色々調べようと思いますね。帰国してから、あれこれ調べて、考えて、色々と悶々としています。
この日の私も、ガイドさんの話などでどんどんモヤモヤしていきました。
さて、三回目。まあ、登山出来ないだろう。聖地に敬意を示しなさいってことだなあ、と思っていたら登山口が開いてました。風が弱くなったようです。
ここのところ雨は降っていない。風が弱い。暑くない。色々と条件が揃って開いたようです。
さて、どうしよう。
同行者の友人は、かねてより登山希望が強かったので迷いはなさそう。別の友人は私と似たような雰囲気。
色々話を聞かされたので迷いましたが、結局せっかく来たしという気持ちが強くて登山結構しました。ツアーの残り時間的に登山時間は短く、とても頂上までは行けません。行けるところまで、なんて思ったのですが……。
止めておけばよかった!
鎖がある所まで、傾斜四十七度。登山ではなくて、岩登りです。滑らない靴を履いてきましたが、怖い。何で下まで鎖が無いの⁈ と思いましたがここは度胸試しらしいです。それに聖地ですから、やはり傷は少なくということでしょう。
這いつくばって鎖のところまで行きましたが、これを下るんだ、と思ったら上まで登る気力が無くなりました。景色を見るのに、周りや下を見るので、どうしても足が竦んでしまいました。
私もそうでしたが宗教観念から訴えられても、日本人はピンとこないのか、近年登山する観光客の大半は日本人だそうです。この日は他の国の方も結構いましたが、統計的にはそうらしいです。
日本人には、危険、怖いの方を全面的に押し出した方が登山しないと思いました。まあ、ツアー会社の戦略や大事な観光収入を減らしたくないオーストラリア政府やアナング族さん達の思惑とか、色々しがらみがありますからね。でも、ウルル登山者がウルル観光客の二十%以下になったので、もう観光の目玉にしなくても良いとなり、来年には登山禁止です。私があれこれ考えなくても、訴えなくても、ウルルには登れなくなります。
この日、鎖まで行くのが精一杯な人は多かったです。そして、そこから見える景色は美しいけれど、まあ正直なところ上まで登ってないのでそんなに……なところ。お金を払ってヘリコプター遊覧の方が、余程ダイナミックで素晴らしかったでしょう。もしくは周囲の観光をした方が良かったなあ、と。朝、散策した泉や壁画が興味深くて楽しかったからです。登山希望者が減っているのは、宗教観だけでは無いと感じます。
聖地に中途半端な気持ちで登ったせいで、モヤモヤしました。
やらないで後悔したくない性格ですが、これは珍しくやって後悔の分類です。しかし、大切な事を学びました。止まる時は、止まれ。周りに流されるな、です。
来年には登山禁止となるウルル。登りたいと考えている方は、登る確固たる理由を持ち、危険さを十分に理解して登ることをお勧めします。同行者の友人達は個人プレーOKな性格なため、それぞれ、各々の思うところまで登山しました。登る直前にも、本当に登るか各自が決めました。無理がないところまでしか登らない。別行動。記念写真は、麓の方でしました。周りを見渡すと、やはり個人もしくは限界が低い方に合わせています。
しかし、そうでない人もいました。
新婚さんもいて、折角来たんだからもっと上に行こう。連れに向かって頑張れ、早く行こう。時間が無いからと急かしている人もいました。それで、相手が怪我をしたらやはりシャレになりません。驚いたのは、赤ちゃんを抱っこしている人がいたこと。
何かあっても、後悔しないのか⁈
自己責任、の言葉の重さを久々に感じました。
この辺り、話しにくくても、同行者と話し合うべきだと思います。そういう関係を築けている方と行くべきです。
これは、ウルルだけの話では無いでしょう。危険が伴う観光全てに言えると思います。
登山口は開いていないことが多いので、絶対に登りたいという方はツアーではなく個人的に行くことをお勧めします。ツアーだと登頂時間が取れない可能性が圧倒的に高いです。一週間登山出来ない時もあれば、毎日登山可能な時もあるそうです。
ツアーガイドの説明が悪く言えばツアー会社の責任逃れ。説明したのに、説得したのに、それでも登ったんでしょう? そういう空気。パンフレットとかでは登山を推奨して現地では気持ちを折る。
むむむ。
しかし、情報社会。ちょっと調べれば分かる事でした。強く登山希望の方はあれこれ調べますかね? そしたらツアーは選ばないのか? とりあえず、モヤモヤしたくない方はツアーではない方が良いと思います。
私が登ったとこからの光景は、こんな感じでした。ここら辺で挫折している方は結構いました。
登った後悔はありますが、登った満足感もあります。考えた結果ですしね。
自己責任。
重たい言葉です。