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三話 愛と憎しみの狭間で

ここで時間軸が完全にプロローグに追いつきます。

ここまでお読みいただいた方、お疲れ様でした。

そして、大変御礼申し上げます。

是非とも、続きをお楽しみ頂ければ幸いです。

アルサヒネ歴 八六六年四月八日

月村蒼一は異世界で再会を果たす⑥


 隣国フィレスのクエスターであるクレアに、また、僕のクラスメートでもある一ノ瀬 紅彩に襲撃を受け、三日が経った。


 僕の体は、何とか日常生活を送れるまで回復していたが、僕は寝間着のまま、引きこもりのようにヌヴォレの館内にいた。外を出回ることに何の問題はなかったが、気分は全く乗らなかった。


--はあ⋯⋯。俺、何してんだろう。こんなことしてる場合じゃないのに。早く、外へ出て、仕事しなくちゃ。それで、闘技会の準備を⋯⋯。


 闘技会という言葉を頭に浮かべると、一人の女の子の顔が、僕の脳内に姿を現した。


『待っててね、月村くん。次会う時は、きっちり死なせてあげる』


「ゔっ⋯⋯!」


 僕はトイレの洗面所へと駆け出し、折角取った朝食の栄養を戻した。


 一ノ瀬さんに大怪我を負わされたが、彼女は僕の精神的なところにも損害を被らせていた。あの鋭い目付き、不気味な笑顔を思い出すと今でも悪寒が走る。僕は少しでも彼女のことを思い出すと、自慢の脚を洗面所へ駆け込むことに使わざるを得なかった。


「はあっ⋯⋯はあっ⋯⋯何でこんなことに。くそっ⋯⋯! もう時間がないってのに!」


「おい、大丈夫か?」


 僕は野太い声がした方を振り向くと、そこには、不安気な表情を見せるジャスタさんがいた。


「また、アイツのことを思い出したんか?」


「いえ⋯⋯大丈夫です」


 僕は気丈に振る舞い、その場を立ち去ろうとした。


「顔色わりーぞ。部屋でゆっくりしてた方が⋯⋯」


「ほっといて下さいっ! これは、俺の問題なんですっ!」


 ジャスタさんが僕の肩を触ると、僕はその手を振り払い、彼と目を合わせることなく、そのまま駆け出した。


「おい! ソーイチ!」


 ジャスタさんが大声で僕の名前を呼ぶのが聞こえたが、僕は立ち止まることなく、館内の廊下を疾走した。



 僕は図書館にいた。


 朝早い時間に図書館に訪れる人はおらず、僕は静かな空間で書物を読み漁っていた。


--今の俺に足りないもの⋯⋯、一ノ瀬さんにあって俺にないもの。足りないもの、足りないもの、足りないもの、足りないもの、足りない⋯⋯⋯⋯。


 僕は貪るように活字を目に焼き付けていったが、虚しさに襲われる瞬間が絶えなかった。


--ダメだ⋯⋯やる気が起きない。どうやっても俺には、一ノ瀬さんと闘う理由が見つからない。あるとすれば、やっぱり『一番強いことを証明』することなんだろうけど⋯⋯。


 分厚い本を退け、僕はテーブルの上に俯いた。


--そういえば、俺が何の為に一番を目指してるかって、この世界を滅亡の危機から救うことじゃなかったか? まだそんな気配は全然ないけど。よく考えたら、人間同士で争ってる場合じゃないんじゃないか?


 僕は自分自身がやっていることに、大きな疑問を感じた。


--そもそも、それ、俺がやらなくてもいいんじゃないか? 一ノ瀬さんがあんなに強いなら、彼女に任せた方が⋯⋯。


 僕がそんな自己解決で全てを収めようとしたその時、背後から女性の声が聞こえてくる。


「だから、それはダメだって。最低限、私の言うことは聞いてくれないと」


 久しぶりにこの声を聞いた。


 およそ、半年ぶりだろうか。


 この声の主は、こうやって一人きりでいると唐突に現れ、声をかけたり、抱きついてきたりする。


「だったら、教えてくれないですか?」


 僕は、声の主の方へ振り向かないまま言った。


「ん? 何を?」


「何をって⋯⋯決まってるじゃないですか」


 僕は後ろを振り向いた。


 案の定、そこにはキャリダットの精霊であり、僕をこの世界に連れてきた張本人がいた。


 半年ぶりに見たサフィーさんは、相変わらずの美しさだった。しかし、今の僕に、そんな彼女の美麗な立ち姿に見惚れているほどの余裕は無かった。


「サフィーさん⋯⋯俺の心、読めるんでしょう? 俺の何もかも⋯⋯全部わかってるんでしょ?」


「わかったわかった。色々と話したげるから⋯⋯ってか、ソーちゃん、顔色悪っ⋯⋯」


「そら、こんな顔にもなりますよ⋯⋯」


 僕は力無く、枯れた声を発した。


「どうやら、事は一刻を争うようね。いい、ソーちゃん? よく聞くのよ?」


 サフィーさんの眼差しは、いつになく真剣だった。


「ソーちゃん、あなたには、アルサヒネで一番強いことを証明してと言ったけど、それは取り消すわ」


 サフィーさんの発した台詞を聞いて、僕は目を見張った。


「は⋯⋯? 取り消す⋯⋯? じゃあ、俺は一ノ瀬さんと闘わなくても⋯⋯?」


「はい、話は最後まで聞くこと!」


「!?」


 僕は言葉を遮られ、息を飲んだ。


「でね、代わりやって欲しいことがある。それは、クレアちゃんを救ってあげること」


⋯⋯⋯⋯⋯⋯


⋯⋯⋯⋯


 僕の思考は一瞬止まった。


「あの⋯⋯今なんて?」


「そういうベタなのはいいから。聞こえてたんでしょ?」


「いや、救うって⋯⋯意味がわからないんですけど⋯⋯」


 僕が恐る恐る疑問を投げ掛けると、サフィーさんは少し間を置いた。


「ソーちゃん、クレアちゃんと闘ってる時、図体のデカい男に会わなかった?」


「図体のデカい⋯⋯ああ、あの人かな? アルディンっていう。たしか、この世界に来る直前に⋯⋯」


「そうそう、あのバカね。クレアちゃん、あのバカに洗脳されてるのよ」


「洗脳⋯⋯ですか?」


「精霊が自分の目的の為に、一人の人間を道具のように使うなんて許されない。ったくあのバカときたら⋯⋯」


 サフィーさんは何か大事なことを言っているようだが、いまいち話が見えてこない。


「あの⋯⋯よくわからないんですけど、そのアルディンさんの目的って何なんですか?」


「まあ、ぶっちゃけて言うとね、私とアルディンはあることで争ってるの。来たるべき戦いに向けて、どちらの方が優れた戦士を連れてこられるかっていうね」


「ははーん⋯⋯なるほど」


 僕は何となくだが、話が見えてきた気がした。


「そういうことですか⋯⋯アルサヒネで一番強くなれというのは。となると、僕が一ノ瀬さんに負けると、サフィーさんはどうなるんです?」


「精霊をクビにされるわ」


 何となくわかっていた答えが返ってきた。僕はコクコクと頷いた。


「いや、私の進退はどうでもいいんだけどさ。ゴメン、正直言うと、高を括ってたの。ソーちゃんはクレアちゃんよりも断然に優れてるって。『アルサヒネで一番強くなって』って言っておけば、それで済む話かと思ってた」


「一ノ瀬さんは、予想以上に凄かったってことですか?」


「いや、予想外だったのは、アルディンが掟破りの行動に出たこと。あのバカ、私との勝負に執着するあまり、クレアちゃんにベッタリ干渉しては、マナの使い方を直接指導していたらしいの。私たち精霊は人間と直接交流を取るのは、基本禁止にされている。あなたとはこうやって話してるけど、それも事前に許可をもらってやってるわけ」


「そうだったんですね。それで、そんな掟破りのことをしたアルディンさんは、咎められないんですか?」


「そこなのよ、腹立つのは! 今回は特例で許すんですって! わけわかんないわ。いくらアイツがバカで、私の方が要領が良いっていっても、ハンデがありすぎよっ! フェアもくそも無いっ!」


 珍しく、サフィーさんが怒りに任せて叫んでいた。


「はあ⋯⋯何か事情がありそうですね。ただ、精霊様たちにおける次元の違う話かと思いますので、詳しくは聞かないでおきますけど⋯⋯」


「ああ⋯⋯ごめん。こっちのことで熱くなっちゃって。そうね、そうしてもらえると助かるわ」


 サフィーさんは息をフウっと吐き、平静を取り戻そうとしていた。


「それでね、話を戻すと、アルディンはクレアちゃんに、私が世界征服を企む悪の精霊だの、妙な事を吹き込んだらしくてね。それで、私の側近であるあなたは、いの一番に倒すべき存在だって、彼女に植え付けたの」


「それが一ノ瀬さんの受けた洗脳⋯⋯というわけか⋯⋯」


「素直で正義感の強いクレアちゃんは、アルディンの言う事を真に受けて、それが真実だと思い込んでる」


「なかなか、厄介な話ですね⋯⋯」


「そうね。クレアちゃんは、私とソーちゃんに対する敵対心を爆発させて、それを力に変えた。マナの根源は、何かを成し遂げたいと思う心にある。彼女の力を引き出すという意味では、アルディンの洗脳は実に効果的な手法とも言えるわね」


「何かを成し遂げたいと思う心⋯⋯。そうか、たしか俺も⋯⋯」


 僕は、友達であるバリーの顔を思い浮かべていた。


 そういえば僕も、彼の故郷を悪の手から救いたいという思いを爆発させ、飛躍的に強くなった。


「憎しみを爆発させることで恐るべき力を手に入れ、あなたの命を付け狙うことしか頭にない修羅⋯⋯それが今のクレアちゃんってわけ」


「そういうことですか⋯⋯。何とも、恐ろしい人に⋯⋯」


 僕は力無く言うと、サフィーさんは腕を組み、間を置いた。


「⋯⋯だからといって、クレアちゃんがあなたに勝って、来たるべく戦いの戦士に選ばれたとしても、きっと使い物にならないでしょうね」


 それを聞いて、僕は息を飲んだ。


「あんなに強いのに!? どれだけレベルの高い戦いが待ってるっていうんですか!?」


「そういう問題じゃないの。単純な強さで言えば、ソーちゃんでも十分に足りてる。問題はクレアちゃんの精神的なところ」


「精神的な⋯⋯?」


「戦士どころか、まともに人間として生きていけるかも、不安なところね」


 なかなか先の見えない話に、僕は眉をひそめた。


「どういうことですか⋯⋯? まともに人間としてって⋯⋯」


「クレアちゃんはこの世界に来て以来、アルディンに焚きつけられて、あなたを殺すことだけを生き甲斐にしてきた。そんな大願成就を果たした後、新たな戦いが待ってるなんてクレアちゃんが知ったら、彼女は果たして気持ちを切り替えられるかしら?」


「どうなんでしょうね⋯⋯? アルディンさんも精霊というくらいなら、その後のことも考えて動いてると思うけど」


「あのバカがねえ⋯⋯まあ、奇跡を信じて仮にそういうことにしましょ」


「奇跡って⋯⋯どんだけ信用ないんですか? アルディンさんって⋯⋯」


「しょうがないじゃない、バカなんだから。それじゃあ、仮にアルディンが、私との勝負だけじゃなく、先々のことも見据えて、クレアちゃんを教育してたとしましょう。それでも私、クレアちゃんは、あなたがいなくなってしまったことに耐えられず、まともな精神状態でいられないと思うのよね」


 再び、僕の頭に疑問符が回り出した。


「え⋯⋯? どういうことですか? 彼女は俺を殺すことが何よりの目的なんじゃないんですか? なのに、俺がいなくなって耐えられないって⋯⋯」


「あら、ソーちゃん、気付いてないの? もう、罪な男ねえ」


「な、何がですか? わけわかんねっす⋯⋯」


「もう! じゃあ、あの時クレアちゃんがあなたに言ったこと、思い出してみなさいっ! この鈍感野郎っ!」


「えぇ〜⋯⋯」


 サフィーさんの罵声を聞いて、僕は思い出したくないが、一ノ瀬さんとの闘いの最中に聞いた彼女の言葉を辿っていった。



 三日前の一ノ瀬さんとの闘い⋯⋯。


 荒れ狂い、妖艶で不気味な彼女の顔が強く印象に残る。


 その時、彼女が発した台詞は、確か⋯⋯。


⋯⋯⋯⋯⋯⋯


⋯⋯⋯⋯


『私⋯⋯ずっと君のこと見てたのに⋯⋯憧れてたのに』


『月村くん、カッコ悪い。そんな地べたを這う君の姿は見たくないわ。君を綺麗な思い出のまま心にしまっておきたいから、サラッと死んでもらえない?』


『私の⋯⋯私だけのカッコいい月村くん⋯⋯! どこいっちゃったのよぉおおおあ!』


『じゃあ、本当にそろそろ死のうか。ねえ⋯⋯私だけの月村くん』


⋯⋯⋯⋯


⋯⋯⋯⋯⋯⋯



--いや、まあ⋯⋯『そういうこと』なんだろうけど⋯⋯。でも、一ノ瀬さんは俺のこと、死んで欲しくて⋯⋯。ああ⋯⋯わけわかんなくなってきた。


 僕の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。


 僕は端無く、天井を見上げた。


「心底にあるあなたを想う気持ちと、植え付けられたあなたを憎む気持ち、彼女はずっとその葛藤で苦しんでる。複雑な思いで悩まされてる。そんな中で、クレアちゃんがあなたを殺めたとしたら」


 サフィーさんはそこで言葉を止めた。僕は黙っていることしかできなかった。


「私がクレアちゃんだったら、狂っちゃうだろうな」


 サフィーさんは、ニヤニヤと笑っていた。


 気持ちはわからないでもないが、緊迫したこの状況で、色恋沙汰の外野を楽しまないでほしい。


「まあ、ソーちゃんがクレアちゃんの気持ちに応えるかどうかは、任せますけど。ただ、少なくとも、私は精霊としてあなたに命ずるわけです。悪しき精霊に心を奪われ、異世界からやってきた少女を救いなさいと。この星の希望でもある彼女を救えるのは、同じく異世界からやってきた勇者であるあなただけですよと」


 僕はまだ何も言葉を発せず、顔を上げたままでいた。


「どう? 少しはやる気でた?」


 僕はサフィーさんのその言葉に、ピクリと反応した。


「もう⋯⋯だからサフィーさんは嫌いですよ。そうやって俺の心を掴んでは弄んで⋯⋯」


「弄んでとは心外ね。誰の為に言ってあげてると思ってるのかしら? で、どうなの? 勇者様の気持ちは変わりましたかしら?」


 相変わらず、僕は天井を見上げたまま、考え込んだ。


「助けてやりたい⋯⋯そりゃ助けたいですよ。同じ世界に住んでた顔見知り⋯⋯交流はさっぱりなかったけど、仮にもクラスメートだし⋯⋯。それに⋯⋯⋯⋯俺のことを想ってくれた人。その気持ちには、ちゃんと答えなきゃと思うし⋯⋯」


「うんうん、いいね〜。青春真っ盛りって感じ。うらやましい〜、聞いてるだけで鼻血でそう」


「いや⋯⋯そこはおちょくらないで下さいって。こっちは真剣なんですから⋯⋯」


 僕はサフィーさんの方を見て、少し不機嫌な顔をして言った。


「はは、ごめんごめん」


「でも、具体的にはどうすればいいんでしょう? どうすれば、一ノ瀬さんを苦しみから解放してあげられるのか⋯⋯」


 それを聞いたサフィーさんは、真剣な顔つきに変え、僕の方をじっと見つめてきた。


「クレアちゃんが抱いてる、あなたへの気持ちの全て。それを、あなた自身が受け止めてあげる必要があるわね」


「一ノ瀬さんの気持ちの全て⋯⋯」


「今はあなたの事、憎くて、殺したくて仕方ないだろうから、あなたに対しては暴力という表現で、気持ちを表すしかないでしょうね。ソーちゃんは、それを耐えて受け止めるだけの力を身に付ける必要がある」


「やはり⋯⋯それが前提ですか」


「そうね。そんな嵐のようなクレアちゃんの攻撃を耐えつつ、あなたへの憎しみが植え付けられた勘違いだと、言葉でわからせてあげて」


「ずいぶん、器用な事が求められますね⋯⋯」


「そりゃあ、簡単なことじゃないわよ。倒すべきはクレアちゃんじゃない。彼女の心を縛り付ける精霊の呪いなんだから」


「ですよね⋯⋯」


 改めて感じる高いハードルに、僕は不安を覚え、下を向いた。


「でも、考えようによっては、やり易くなったんじゃないかしら?」


 穏やかな笑みを浮かべながら発せられたサフィーさんの言葉に、僕は目を丸くした。


「どういうことです?」


「クレアちゃんを身体的に倒すとなると、攻撃も防御も考えなくちゃいけないし、微妙な駆け引きも求められるけど、彼女の攻撃に耐えて、説得するということなら、あなたは時が来るまで、ひたすら防御のスキルだけ磨いていればいい」


「⋯⋯なるほど。色々と面倒なことを考えず、準備ができるわけか」


「それに、クレアちゃんを助けるという目的意識もはっきりしたし、マナを高めるきっかけにもなったんじゃない?」


「たしかに⋯⋯」


 僕は僅かに射し込んだ光明に、若干の安堵を覚えた。


「いい? 私の進退なんて一切考えないで。クレアちゃんとの武力闘争に勝とうなんて気持ちは捨てて、彼女を助けるという思いに集中して」


 精悍に語るサフィーさんの目力は、徐々に迫力を増していた。


「でも、サフィーさんは本当にそれでいいんですか⋯⋯?」


 僕は心配そうな口調で、サフィーさんに問い掛けた。


「大事なのは、一人の女の子が理不尽な圧力に苦しめられてるってこと。それを救ってあげるのを第一に考えるのが、この地を治める者の筋ってものでしょ?」


 サフィーさんは変わらず力強く語り、さらに続ける。


「それに『来たるべく戦い』に選ばれるのが、結果的にクレアちゃんになっても、私は一向に構わない。心の傷が取り除かれて、戦力として活躍できるクレアちゃんが選ばれるんだったら、世界の未来を考えれば、合理的なことだと思うし。ソーちゃんを失った放心状態のクレアちゃんが選ばれて、全く戦力と意味をなさなくなるのが、今後を見通す上で最悪のシナリオでしょ?」


 僕は改めて、サフィーさんの器の大きさに深く感銘を受け、顔を緩ませた。


「サフィーさん、かっこよすぎますよ。そんなの言われたら、誰だってついて行きたくなるじゃないですか」


「ふふ、そう? ついて来るのはあなたの勝手だけど、キッチリ結果は残してよね」


「わかってます」


 僕は歯切れよく言い放ったが、どうにも引っかかる言葉があり、それを解消したくて仕方がなかった。


「あの⋯⋯サフィーさん。たぶん今は答えてくれないと思いますけど『来たるべく戦い』っていうのは⋯⋯? 前に言ってた世界の滅亡に関係があるんですか?」


「あなたのことだから、聞いてくると思ったわ。ごめん、今は詳しいことは話せない。でも、この星に関わるすごく重要なこと。今はそれだけ覚えておいて」


「この『星』ですか⋯⋯スケール感が半端ないですね⋯⋯。とりあえずわかりました」


 僕は何か、異様に大きな運命に巻き込まれているような予感がした。この一ノ瀬さんとの一悶着も、壮大なる運命の序章に過ぎないのでは、と感じるものがあった。


「じゃあ、私そろそろ行くから。闘技会までの一ヶ月、やるべきことはちゃんとやってね」


「はい!」


 僕は威勢良く返事をすると、サフィーさんは一瞬光った青白い光と共に、その姿を消した。


 僕は足取り軽く、図書館を後にした。

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