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九話 失われた記憶

アルサヒネ歴 八六五年一〇月一二日

月村蒼一は異世界で洗礼を受ける⑨


 僕はふと目を覚ますと、薄暗い部屋で寝そべっていたことに気が付いた。


 起き上がり、辺りを確認すると、この部屋は例の洗礼場の入り口の隣にある待合室であった。


 また、相変わらず質素な木製の長椅子に、一人の男性が腰かけているのも確認できた。


「気が付きましたか?」


 男性は無表情で冷ややかな視線を送りつつ、僕に声をかけた。


「ここは⋯⋯待合室? あなたは?」


「私はこの洗礼の洞窟にて、精霊に仕える僧侶。あなたを入口から洗礼台へ、案内させて頂いた者でございます」


「ああ、あの時の⋯⋯。そうだったんですね、それは失礼しました」


 男性は僕を案内した時と違い、目深に被っていたフードを上げ、素顔を曝け出していた。金髪の長い髪を靡かせつつ、その合間から突き出るように伸びる尖った長い耳が印象的だった。また、非常に整った顔立ちをしており、彼を一言で表現するのであれば『金髪ロン毛のイケメン風エルフ』とすれば適当だろうか。


 しかし、なぜ彼は今になって、その素顔を曝け出しのか。


 それに、彼の着ている服も先程に比べ、痛んでいるように見える。


「あの⋯⋯さっきよりも服がボロボロになっているような気がしますけど、大丈夫ですか?」


 僕は恐る恐る、少し声を震わせるように問いかけた。


「何も、覚えていらっしゃらないようですね」


「え、何も?」


 相変わらず毅然とした面持ちの彼に答えられると、僕は漸く、大事なことに気が付いた。


 思い返せば、僕は洗礼を受けた後のことを、よく覚えていない。


 青いガラス玉を台座に収めた後の記憶が、曖昧である。


「そういえば俺⋯⋯あの後、どうなったんだろう?」


 僕は下を向き、声を漏らした。


「一応、何があったかお伝えするべきでしょうね」


 男性は無表情を貫いたまま、優しげな口調で口にした。


「お、お願いします」


 僕は一礼し、彼の話に耳を傾けた。

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