『最後から二番目の晩餐』【一画面小説】
「坊や、平和ってなんじゃ?」――おばあちゃんがぼけてしまって半年になる。僕はもう慣れっこだから、「そんなことよりお昼寝の時間だよ」と、いつもおばあちゃんがお昼寝をする時間になったのを教えてあげる。
お父さんが言うには、この世界は平和らしい。お父さんは、平和のことを「争いがない状態」だと教えてくれた。僕は、少なくとも昨日までは、平和だと信じていた。
この町では、化物たちを「パートナー」と呼び、共生している。共生を成り立たせるための幾つかのルールがあって、僕の家はパートナーの食料を作る仕事をしている。パートナーも僕達の食料を作っているから、「お互いが思いやりを持って食べ物を作り合うから、お互いの苦しみが分かるようになるんだ」と、村長さんはお父さんに説明していた。
昨日、妹が、同じクラスのペガサスに怪我をさせられた。理性を持たない種族のパートナーとトラブルになることはあるけれど、理性のあるペガサスが問題を起こすのは初耳だった。まして人に手を出すなんて――圧倒的に力の差があるのに卑怯だと、僕は思った。ペガサスの種族は、謝らなかったらしい。
僕は今、ペガサスの種族の食料、いや、餌に毒を盛ろうとしている。妹の苦しみが分からないのだから、平和のためには仕方がないと思う。
この後、あなたがお父さんなら、どうしますか?