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鉄! すなわち国家なり!! 

 この村が躍進やくしんするのに何が足りないか?

まあ、足りてるものを数える方が早いぐらいだが⋯⋯⋯⋯この村を拡張するのに足りないものそれは!


 鉄だ! アイアン! Feが全くない! 石を少し尖らせただけの斧で森を切り開けるか?

⋯⋯まあスケルトンを使えばできなくもないのが作業効率が悪すぎる。

鉄の道具があればもっと楽に開拓が出来るわけだが手に入れる方法がない。

仕方ないので自前で作るしかあるまい。




 製鉄だが現代的手法では鉄鉱石をに石炭コークスを大量に使ってバンバン製鉄できるが、この村ではそんな贅沢は存在しない。

 

 なにせ鉄鉱石も石炭も見つかっていないからな!! 異世界なんだからドワーフだのなんだの鉱物に詳しい種族でも来てくれんかね。


 仕方ないから現状でも行える製鉄事業を展開する。

湖のあしを切り開くと行くと不自然に草の生えていない赤茶色の土でできたところがある。

これは湖沼鉄、リモナイト、褐鉄鉱などと呼ばれる鉱物でバクテリアの作用により蓄積される。

要は生物由来の鉄だ。もちろん鉄鉱石と比べると鉄の量は少ないし不純物も多いので効率は悪い。

簡単に見つかるし、むしろ不純物のおかげで鉄の融点が下がり簡単な炉でも製造できるのだ。


 なんという我々のためにあるような製鉄法だ。すばらしい!

 まずは炉作りだ。昔の人は動物の胃袋でふいごを作ったと言うが残念ながらそれほど数がない。

そこで木片を組み合わせて風車を作る。紐を絡めてねじりの要素で簡単に風車を回転させれるようにする。

出来たら泥で固定して送風機を作る。


 次に炉だ。ドラム缶サイズの炉を泥で作り中にある程度のサイズの湖沼鉄をひと固めにして入れる。

後は炉の下で火をくべ上から木炭を入れながらひたすら送風機を動かすだけだ。


ね、簡単でしょ。ちなみに一回、炉を動かすことでピーナッツ大くらいの鉄が手に入る⋯⋯⋯⋯


 ま、まあ、後はそれをひたすら叩いて不純物を叩き出し鉄として運用するわけだ。

出来た鉄は柔らかく使い物にならないので炭素を含ませ固くする。

こうして人々の手に渡る訳だ。とんでもない重労働だがスケルトンにやらせばそこまで問題はない。


⋯⋯⋯しかしこのやり方はかなり燃料を無駄にする。

それにゴブリンたちの中から優れた鍛冶師がいれば器具の修理をさせれるので安定して開拓できる。

だが将来的にはもっと高度な方法を実施しなければならんな。まあ、かくしてそれなりの品質の鉄が自給できるようになった。


 取りあえず重要な資源を自給自足できるのはかなりの強みになる。



 道具の性能が上がった事でより効率的に開拓を進めることが出来る。

湖から用水路を引く事によりより楽に水を撒くことが出来る。

より太い木もより簡単に切り倒すことが出来るようになった。

より沢山の薪を用意できそうだ




 これにより掘っ立て小屋同然だった家々をそれなりの家にアップデートできる。

わたしはゴブリン大工のトンと新しく立て直す家について話し合う事にした。


「トンさん、防寒対策でそれぞれの家に暖炉を付けるほかこんなふうに煙が床下を通るようにして床全体を温めるようにすることは出来そう? あっ暖炉も全体的に大きくして上に寝るところを用意しましょう」

「むむ⋯⋯中々工程が増えますが人員には余裕があります。やってみましょう」



 数週間後⋯⋯⋯

 何という事でしょう。

 小高い丘の上に立つ古ぼけた砦の周りに、へばりつくように立っていた掘っ立て小屋は解体され

中は広々として一家族だけでなくとも収容できそうな家に立て替わりました。


 依然はスカスカで、風も虫も拒むことなく受け入れていた壁も、今ではすっかりいっぱしの壁になって仕事をしています。

 戸口に立てかけられているだけで全くプライバシーを確保できていなかった玄関はしっかりと閉じることが出来るドアが付けられ周りの目だけでなく風もしっかり防いでくれます。


 皆が団欒だんらんの時を過ごす居間を見ると、ひと際大きな暖炉がありそのうえで寝ることが出来るようにしてあり家族が寄り添って眠れるようになっています。これで冬の寒い日も家族が凍えることなく過ごすことが出来るでしょう。



 その他に、鍛冶場や製糖工房に大工小屋を塀の中に作る。

ついでに壊れていて適当にしか直してなかった防御施設もこの際しっかり直しておくことにした。

村の周りを新たに塀で囲みなおし、防御塔を築き周囲に掘りを張ることで侵入経路を限定した。

木造ではあるがこれで小規模な攻撃なら耐えれるだろう。

まだ改善する場所はあるがやっとそれなりの村っぽくなってきた感じだ。



「ねえトリル、この村なのだけどそろそろちゃんとした名前を付けた方がいいんじゃないかな?」

「マオ様の村なのですからマオの村でいいのではないですか?」


 う~ん、なんかそんな風にみんなが知るような物の名前に、自分の名前が付くと言うのはなんか恥ずかしい物があるな~


 その時、曇り空から雪がちらつき始めた。

木でできた家々に白い雪が降りそそぐのをみて何か村がお菓子の家に見えて来た。


「うん、シュガーローフ(砂糖菓子)村にしよう。そうしよう」


マオがこの地に来て初めて体験する冬が到来しようとしていた。

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