表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/38

甜菜ってどんなお味?

 やはり前々から考えていたことだが、確信が持てなかったので有耶無耶うやむやになったがここに商人がやって来てはっきりわかった。前世でよくお金なんて重要じゃないなんてメロドラマをよく見たが⋯⋯これからはそんな戯言ざれごとは無視しよう。たまたま、多くの得物がいたから。たまたま座礁ざしょうしていたから塩一樽を手に入れることが出来たけどそれがなかったらこの村完全に外界と途絶してるじゃん。


故郷の人達、知識人たちの戯言は忘れるがいい”お金なんて重要じゃないわ”というのはまやかしだ。

⋯⋯⋯お金は、重要だ。


 などとふざけていてもこの問題に対する良い答えは浮かばない。

問題はこのシオンという商人がこの村と定期的に商売をしてくれるかどうか、だ。

湖を利用して交易をするために桟橋を造らせることにする。これで商人にとって商売自体が赤字だって事は避けれそうである。


 問題はこちらが何で支払うか? という事である。

野生の鹿や熊などの皮はそれ自体がある種の特別な価値を持っている商品である。

でも今回のようにまとまった数がいつも手に入るとは限らないし、もしかしたら減少するかもしれない。



「マオ様も休憩にしませんか?」トリルが昼飯を持ってくる。

鹿肉を軽く塩で焼いて、森で採れた野草とキノコそして食用のビートと一緒に煮込んだスープだ。

鹿肉のうまみを感じながらキノコの味をしっかり味わえる、鮮やかな赤色のほのかに甘いスープである。

付け合わせにふかしたジャガイモがついている。

 

 とはいえ、まだまだ食用のビートはそんなに取れていないのでトリルが食べているのはほぼ

ジャガイモと飼料用のビートの丸焼きである、飼料用は色がなくとにかくでかい。

前に焼いたものを食べたが、甘味を感じてすぐ口の中に土臭さが口に広がる。

まあ、ため息の出る様な味だった。


 基本的に豚だのが貪り食うための物で人間が食べるのには向かないという事か。

トリルの食べているビートはもう黒くなり始めている。冷めると食欲減退待ったなしの色になるのだ。


 しかしこのビートって野菜、日本では全く見かけなかったけどほのかに甘くておいしい。

甘いかぶって何かで聞いたことがあるような⋯⋯⋯何だっけ? 甘いあまい⋯⋯砂糖⋯⋯

思い出した!! 砂糖大根、甜菜テンサイだ。砂糖の原料でこれを煮詰めることで砂糖が作れる。

これなら安定して村の収入になる。


※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※


 一方、シオンは村の様子を一通り見て非常に悩んでいた。

ぶっちゃけるとこの村は貧しすぎるのである。今回は価値の在る取引が出来たが次はどうか分からない。

将来、発展したこの村と独占的に取引できれば利益になるかもしれないが⋯⋯⋯

はっきり言って彼女の心象はこの村との交易を捨てる方向に行っていた。


 これを非情だの無能だと非難するのは見当違いである。

熊だのに襲われ村が壊滅している。賊に襲われて壊滅している。壊滅していて、壊滅していた。

開拓村など殆どがそんな末路でしっかり発展できるのは一部だけなのだ。

そんあリスクを引き受けられるほど今の彼女は強い存在でないのである。



「う~ん、この村で作っている穀物はライ麦か⋯⋯⋯穀物での商売は利益は薄いしそれほどの量もない。その他にに船で利益が出せるのは運ぶことに意味があるのは木材⋯⋯も白樺がほとんどか~」

「シオンお嬢様、船の修理ですが損傷はそれほどではなかったみたいで2日ほどで完了します。

「ご苦労様、パーキンス。この皮はどこで売ると良さそうかね~」


 今回の取引で手に入れた皮をどの位で売れるか鼻息交じりに楽しげに算用している。

パーキンスはシオンを横目に口ごもりながらシオンに話しかける。


「恐れながらお嬢様、やはりレガリアに戻られてはどうです」

「嫌よ。わたしは自分の力だけで、どれだけやってゆけるかを知りたいの。わたしはレガリアの家の装飾品じゃない! シオン・レガリアという一人の人間なのよ!」


※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※


 甘味の強い甜菜テンサイを選別して絞り、その汁を煮詰めるだけで随分と苦労してしまった。

正直、砂糖を舐めてた。こんなもん絞って火にかけるだけだろって思っていた⋯⋯⋯


油断したらすぐに焦げるし、1株から50gぐらいしかとれないし。煮汁はほうれん草臭い。

煮詰めてると余りの甘い香りではきそうになったわ。

そして苦労の末に砂糖500gを用意できたのだ。


しかしできた砂糖は色はかなり黒い。

黒砂糖をさらにガン黒にした感じで味もかなり癖が強い。



村を見終わったシオンは、机の上に置いてあるガン黒砂糖を目ざとく見つけたようだ。 


「まさかこれは砂糖? 塩はないのに砂糖があるなんてどうして?」

「この村で採れたものなのだけど、これはどの位で売れそうかしら⋯⋯」

「少し味見してもいいかしら?」


彼女は少し摘まんで味見をする。


 雑味はかなり強い、色もほぼ黒⋯⋯3等級ぐらいか、まあ、一番買い手の多いランクではあるわね。

だいたいこれぐらいの量なら銀貨50枚くらいで売れるかしら? 

南方での卸値は銀貨5枚ぐらいだったかしら。どうにもマオさんは品質に自信がなさそうねこれならいくらかふっかけられるかしら?


「ふ~む、見た目悪し、雑味つよし。まあこの砂糖は出来損ないでそこまで高く売れそうにありませんな~銀貨3枚くらいなら買いです。」

「銀貨3枚ってどのぐらいの値段なの? 田舎にいるとどうにもそういったことに疎くなってしまって」

「う~ん、まあ平民の2日分の食費ぐらいになりますわね」


 ぬう、あれだけ苦労したのに3等級と呼ばれてしまった。

あれだけ頑張って3等級か~ クソークヤシー

しかし現代なら100円の価値もないのに2日分の食費がかかるのか⋯⋯⋯

だが、わたしはこんな事ではへこたれんぞ。必ずや目に物見せてやる。


「ふふ、シオンさん。1っ週間後、またここにいらしてください。その時に本当の砂糖をお見せしますよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ